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出口に向かう途中には大きなゲームセンターがある。ここは昔よく家族に連れて来てもらったし、今でも友達と遊びに来る。ここのゲームセンターの入り口にはたくさんのモニターがあって海を泳いでいる熱帯魚を映している。たくさんのモニターで一つの海を映しているのでまるで大きな水槽のようだ。私はこのモニターの中を泳ぐ魚を見るのがとても好きなのでいつも立ち止まってしまう。
人工的な青い海を魚が泳いでいくのをぼんやりと眺めている。よく見ると解像度が荒いので本来こんなにゆっくり眺めるものではないのだろうが、家庭用や水族館の水槽とは違う本物の海を泳ぐ魚を間近で見るのはとてもいいものだ。
受験勉強のせいか大きな海を泳いでいる魚を見ていると開放的な気持ちになる。
ダイバーが撮影している画像のようで時々別のダイバーが魚に餌をやると小さな魚が集まってくるのでそれも含めてずっと見ていても飽きない。
本当に魚になったような気がしてわたしはかなりの時間をモニターの前で過ごしていた。
そろそろ行こうかな。とも思うが大海を泳いでいる魚を見てしまうと、受験勉強とか学校とかそういう狭い枠組みに囚われているのがバカらしくなってきていた。
もっと自由にしてもいいんじゃないか。というような気分になってくる。でも自由になんて何をしていいのかわからない。ゲームセンターでゲームのプロモーション映像を眺めたりしていると、クレーンゲームが目に入ってきた。
大きなぬいぐるみやフィギュアを取るのは苦手だが、小さなお菓子なんかををシャベルですくって落とすタイプのゲームは小さい時から好きだった。
ここにあるものはもう何回やったかわからないくらいやっている。
何台かあるが私がプレイする台はいつも決まっていて一番奥にあるものと決めている。
時期によって入っているものは多少変わるが、大抵小さいキャンディやチョコレートとか、アクリルでできた模造宝石や小さいキーホルダーなんかが入っている。私は一番出やすそうな場所を探し台をじっくり観察する。
経験上、いまにも落ちそうにわざとらしく積み上げられているものより、さっきまで誰かが遊んでいたようなあまり多くもなく少なくもないところの方が落ちやすいと思う。
その法則に照らし合わせながら慎重に場所を決め、硬貨を投入する。
この台はもう何度もやっているので掬いやすいものの大きさやクレーンのバネの強さ、ボタンを押してから動くまでのタイミング、席ごとのクレーンの癖なども把握している。さきほど当たりをつけておいた大きい山をめがけて1のボタンを押す。
思ったよりたくさん掬えた。
そして慎重に2のボタンを押す。
何度もやっているがこの瞬間は特に緊張感がある。動く台のタイミングを見計らい、席ごとのクレーンの反応の癖などを考慮しつつなるべく多くの景品を落とすために全精力を傾ける。
別にキャンディや模造宝石が欲しいわけではなく、達成感が重要なのだ。
私は神が降りてきたようなタイミングを感じ2のボタンを押した。
私は結果を見る前から不思議とわかっていた。初めての経験だ。
景品受取り口にはこれまで見たことのないほどのキャンディや模造宝石が溢れそうなくらい出てきていた。
私は達成感の余韻をしばらく味わっていたが、沢山の景品をさっきの書店の袋になんとか無理やり詰め込み、スマートフォンの時計を見た。
6時だった。さっき書店に入る前に時間を確認した時も6時だった。
モニターの前でどれくらいぼんやりしていたのかはわからないが6時であるはずはない。
時計が壊れたのかと思い、ゲームセンター内の時計を探すが見つからない。
いつもスマートフォンで時間を確認していたので時計の位置なんて把握していないし、そもそもイオンモールに時計があったのかどうかもよく覚えていない。
ゲームセンターにほとんど人がいないのは平日のせいかもしれないがもしかしたら閉店時間が近いのかもしれない。
イオンモールはほとんど外の光が入らないようになっているため時間の感覚がわかりにくいが、今は本当にわからなかった。
とりあえず早く帰らなければ、もしかしたら8時とかになっているのかもしれない。
そう思ってゲームセンターを見渡すとなぜか私は巨大な迷路に迷い込んでしまったような今まで一度も感じたことのない奇妙な感覚に襲われた。




