Σの戦い方
しぐま 最早、考えている暇など無い。悠長に考え込んでいてはグリムに先手を取られてしまい、全
滅に至る事など容易に想像が付いてしまうからだ。
「この身、猛り高まりて進化と成す!エヴォリューション・フォース・シグマ!!」
セイムの瞳に「Σ」の紋様が浮かぶ。そして、シュピラーレ、シュピラーレ、フォルムバー
ルと強化を三つ重ねた。
「シグマ・・・セイム、あなたにぴったりの形ね。さあ、見せて頂戴、その力を!」
「みんな、ごめん。少し・・・試させて」
「・・・分かったねえ。でも、危ないと思ったら横槍入れさせて貰うからねえ?」
セイムは静かに頷くと、グリムへ向かって駆けて行く。そして、勢いそのままに拳を振るう。
「重・螺旋剛拳!」
帯をぐるぐる巻きにした渾身の一撃。逸れに対し、グリムもまた錨の付いた拳で向かい打ち、
互いの拳が衝突する。
打ち合った感触は良い。負けていない。巻き付けた帯を爆発させて一度離れ、続けて接近戦
を仕掛けて行く。
強化の重ね掛けによって威力、速度共に飛躍的に上昇しているセイムの体術にグリムは、回
避ではなく防ぐ事で対処している。一見、攻め込んでいるように見えるが、グリムの表情には
危機感を認めることは出来ない。
「足りないわよ。そんなもんじゃないでしょ?その力は!」
逆にグリムが振るった拳を受け止める。重い。何とか踏み止まるので精一杯だ。こんなのを
何度も受けてはいられない。
一旦、大きく距離を取り、セイムは新たに強化を施す。
「宿るは荒々しい突風。全てを吹き飛ばす傍若無人なる風よ、この身を依代に猛威を振るえ!
『フォルムバール・トリーブヴェルク!』」
その姿にこれと言った変化は見られない。
(フォルムバール?それにフェアシュテルカ系統ではないということは・・・単純な威力強化では
なく、別の強化魔法?)
グリムにとっても初めて見る魔法。その様子をつぶさに観察する。
セイムは右腕を大きく引き、拳を構える。グリムとセイムとの間には大分距離がある。
(遠距離攻撃?・・・ん?)
ふと、グリムはセイムの背中の辺りに光の粒が舞っている事に気が付く。
その瞬間だった。セイムの拳は眼前まで迫って来ていた。
「速い!?」
「迅・螺旋剛拳!」
それでもグリムの防御は間に合った。しかし、思いの外威力が高く、後方へと吹き飛ばされ
てしまう。そしてまたも、未だ後方へ吹き飛んでいる最中だというのに、セイムは眼前に迫り、
振るう。
「迅・螺旋剛脚!」
槍のように鋭い蹴りがグリムの鳩尾を捉え、地面を長距離に亘って転がした。
「く・・・ふっ!魔力による推進力強化・・・そんな魔法まで会得していたなんてね・・・でもそれ、長
持ちしなさそうだけど、平気かしら?」
「・・・分かってるよ」
この魔法は魔力を様々な方向への推進力へ変えることが出来る。それによって高速での移動
やそれに伴う威力の上昇も期待できる強力な強化魔法だ。だがその代わり、推進力を生み出す
ための魔力消費は大きく、グリムの言う通り長期戦には向かない。
「それでも・・・だからこそ、出来る事がある!」
セイムは自身の喉元に手を掛ける。そして、首輪を外した。セイムが元々持っている膨大過
ぎて身体に悪影響を及ぼしてしまうほどの魔力を抑制するための首輪を外したのだ。
「成程。それなら思う存分使える訳ね」
グリムはそう言い、不敵な笑みを浮かべた。
「そこまでしてくれるんだもの、こっちも応えなきゃね」
「・・・!」
グリムの纏う空気が変わる。肌を突き刺すような空気。鳥肌が立ってしまうほどの恐怖を皆
が感じていた。
「あれは・・・くるねえ・・・」
「はい・・・グリム様の進化魔法が・・・!」
「進化!?嘘だろ・・・」
「当然と言えば当然ですが」
「こ、こわいよぉ・・・・・・」
グリムから放たれる魔力がどんどんと大きく、高まって行く。




