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黒翼のカナエル  作者: 氷花
勇者と魔王編
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娘グリムとの出会い

 どうしてタリムは私を倒そうとしたのか、何一つ理由の分からないまま再び、光のない生活

に戻った。勿論、空間自体が閉ざされてしまっているため、報告に来る者など居ない。どれ程

時間が経とうとも名にも変化しない空間。それが当たり前だと思っていた頃は何とも思わなか

ったが、自分以外の生物と出会い、会話し、時間と言う概念を知ってしまった今の私には堪え

難い日々だった。

 起きている間は星を作って灯りにし、眠れる時は出来るだけ眠り、ただただ時間を潰すだけ

の日々だった。

 そのまま長い年月が経っていたらしい。それを知らせたのは・・・・・・


 ある時、何かの気配を感じた。久し振りの感覚に私は、同時に希望も感じていた。気配が次

第に近付いて来る。どうしよう!どうしたらいいの!?対応の仕方が分からず、そわそわする

ばかりだった。


「魔王オルト!!」


 突如耳に入ってきた声。自分に向けられている事は間違いないが、どうも怒っている様で、

どう反応を返せばいいのか分からない。気配から察するに、「何か」はもう目の前まで来てい

る。しかし、暗闇によりその姿を確認する事はできない。今まで怒りの感情を向けられた事な

ど無く、見つかってしまったら確実に自分の身に危害が及ぶと恐怖し、息を殺して潜み続けた。

 隠れる場所など無いし、そもそも身体が大きすぎから何かに紛れる事も出来ない。光を当て

られればどうにもならない。

 案の定、何者かは光源を創り出し、空間を照らされてしまったので、とうとう対面する事に

なってしまった。

 目に入ってきたのは、美しい銀の毛並みをした可愛らしい狐の女性だった。見覚えのある姿

に思わず声が出た。

「タリム!?」

 いや、違う。よく似てはいるが、纏っている空気が全く異なっていた。

「誰なの?」

 そう問い掛けると、その女性はゆっくりと口を開いた。

「・・・グリム。貴方が殺した、タリムの娘よ!!」

「!?」

 娘?タリムが死んだ?私が殺した?驚くべき事が多すぎて頭の整理が追い付かない。

「魔王オルト!お前を倒す!!」

 その者の顔は冷静さを保っていた。だが、その纏う空気には明らかな殺気が漂っていた。今

直ぐにでも攻撃を仕掛けてきそう。一度始まってしまえば止める事が出来なくなってしまう!

「ま、待って!」

 私は戦いたくなかった。殺気を向けられているとは言え、私には戦う理由が無かった。

「魔王ともあろう者が、今更言い訳でも並べる気?それともそうやって油断させる作戦?」

「き、聞いて!私は確かにアポロネアからタリムを討伐するという話を聞いてた。でもそれは、

そもそもタリムが私を倒そうという動きがあったからであって、私の指示ではないの!」

 必死に自分の知っている事を伝えた。正直、信じてもらえるとは思っていなかった。しかし、

そのグリムと言うまだ年若い狐は、利発そうな見た目通り、抱えた感情に流される事なく冷静

にこちらの言葉に耳を傾けてくれた。

「アポロネア・・・ねえ、その時の事、もっと詳しく聞かせてくれない?」

 

 私の有している記憶の量は大して多くない。覚えている事の全てを話すのにそれ程時間は掛

からなかった。全て話し終えた頃には、目の前の女性から怒りの感情が消えていた。

「となると、やはりアポロネアが・・・」

「あ、あの・・・私もどうなっているのか知りたい・・・です・・・・・・」

 考え込んでいる所に恐る恐る話し掛けると、女性はこちらを見てニヤリと笑った。

「いいわ。あなたはどうやら信用できるみたいだから話してあげる」

 その女性によると、話はこうだ。


 まず、私を空間ごと封印する時アポロネアが言っていた、タリムが私を倒す気であるという

話は・・・嘘だった。タリムにその様な動きは一切無く、倒そうとする理由も無かった。その傍若

無人っぷりが世に知れ渡り、一見そういうことをしそうには思えるが、タリムは理由もなしに

誰かの命を奪おうとしたりは決してしなかった。

 では、何故アポロネアはそんな嘘を吐いたのか。それはアポロネアが強大すぎるタリムの力

を恐れていたからだった。

 タリムを討伐にやって来たアポロネアは七魔全員を率いていた。予めその動きを察知したタ

リムは、娘二人に遠くへ行っているように伝えていたらしい。こっそりと様子を伺いに戻って

きていた、その時はまだ幼かった彼女は隠れてその様子を見ていたらしい。

「魔王様が貴女を倒せと命じられました。覚悟して下さい」

 そうアポロネアが言うと、

「あら、そうなの?でもおかしいね?あの魔王様はそんな事を命じるような御人じゃないと思

うんだけど、ねえ?」

 タリムは怪しく微笑む。

「魔王様は貴女のその力に怯えて御出でです。必ずや魔王様の御身を脅かす存在になる。故に、

今後に為にも貴女を倒しておく必要があります」

 と、アポロネアに迷いは無く、一切表情を崩さない。

「そ。それなら仕方ないね!未来なんてどうなるか分からないもんね!」

 タリムは満面の笑みだった。

「では、参りましょう」

 七魔たちが戦闘態勢を取る。

「いいよ。それが貴方たちの正義なら、ね!」

 対してタリムは笑顔のまま何一つ、抵抗しなかった。

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