希望
運び込まれた病院には、母親でもあるデイの姿もあった。ハワーは嗚咽を漏らしながら母親
に抱き付いている。
「デイ先生・・・ごめんなさい!」
「わしじゃ・・・わしがやった事なのじゃ!すまぬ・・・すまぬ・・・」
メルリアは額を床に擦りつけて土下座し謝る。しかし、デイもハワーもその姿を見ようとも
しなかった。
そんな中、手術室の扉が開き、医師が出てくる。
「先生!ミーニちゃんは・・・!?」
「・・・出血が酷く、血が足りません。ご家族の方、御協力を願います!」
「はい!分かりました!」
「わだじも・・・わだじもやるう!」
二人は医師の後を付いて手術室へと入って行った。
「わしはどうしたら・・・どう償えばよいのじゃ!」
輸血も無事に行われ、手術は終わった。だが、ミーニの命は風前の灯だった。
何時消えてしまうとも分からないその小さなちいさな灯火に、ハワーはすがるようにして眠
り、それを優しくデイが寄り添っている。
メルリアは病室に入れないで居た。入るなと言われた訳でもないが、とても入る事が出来な
かった。メルリアは寒い病室の外でただうずくまっていた。メルリア自身の身体も、度重なる
雷によって焦がされ引き裂かれてボロボロだった。だが、そんな痛みすらも忘れてしまうほど
自分のしてしまった事に絶望していた。その姿は見るに耐えなかった。
ヒサメは気が付くと住処に寝かされていた。身体の痛みを堪えて立ち上がる。
「あ、お姉ちゃん!動いて平気なの?」
「平気って訳でもないがな。そういうエンジュは元気そうだな」
「うん。私は結局、魂を抜かれただけだったから。でも、シツライちゃんは・・・」
シツライは自分の部屋に横たわっていた。目は開いていたが虚ろで、何も映していないよう
だった。
「身体の傷の方はどうなんだ?使ったんだろ?黒雷を・・・」
「それは・・・」
「外傷はそこまでではありませんが、体内の損傷が激しいです。ですので、暫くは安静にして
いて貰わねばなりません」
答えたのはウインターだった。
「ウインター、奴等と帰らなかったのか?」
「はい。ミーニ様はあなた方の事を御気に召して御出でです。そんな御三方のことを、ミーニ
様に命を救われた私が見捨てて帰ることなど出来ません」
「メイドっつうのは、皆そんなに難儀な生き物なのかねえ」
「興味がおありなのでしたら、一度志してみては如何でしょう?」
「ああん!?やめてくれよ・・・」
自分がメイドに?考えたくも無い。だが、エンジュの目は輝いていた。
「メイドのお姉ちゃん見てみたい!!」
「なる気ねえっての!」
「一度お貸ししましょうか?」
「ほんと!?ほら、お姉ちゃん!」
「ほらじゃねえし!お前ら、シツライの心配しろよ!!」
数日が経った。あれから異常気象は起こらなくなっていた。だが、そんなのは些細な事。ミ
ーニは未だに眠ったままだった。片時も離れようとしないハワーにも流石に疲れの色が見えて
きていた。
「ミーニちゃん・・・いっしょにあそぼ?おはなしするだけでもいいから・・・・・・にんじんだってわ
けてあげるから・・・だから、ミーニちゃん・・・おねえちゃんってよんでよ・・・きかせてよ・・・・・・」
まるで自分の命を分け与えるかのように、ミーニの小さな手を祈るように抱き締める。
「なあラキエル!あたしらにも出来ること、何かねえのか!?」
バンリは苛立っていた。悲しみ、苦しんでいる親友の力になれない事に、バンリ自身も苦し
んでいた。
「出来ること・・・心当たりはありますけど・・・」
「それは本当かの!?」
その発言にメルリアが強く反応する。
「頼むのじゃ!わしにも出来ることがあるのならば、教えてくれぬか!?ミーニを救うためな
ら何でもするつもりじゃ!!」
メルリアにすがり付かれ、ハイラント邸へと帰ってきた。目的は「叶える」力である。
訪れた三人の顔を見たヒイカは、察したような素振りを見せたが、あえて問い掛けた。
「何か、ご入用ですか?」
「ミーニを・・・助けて欲しいのじゃ!!」
「・・・このまま待つだけでも目を覚ますかもしれないですよ?」
「覚まさぬかも知れぬではないか!それだけは絶対に駄目なのじゃ!!」
「それだけじゃねえ!ミーニを心配し続けてるハワーもこのままじゃあ、ぶっ倒れちまうよ!」
「お願いします!力を貸してください!!」
ヒイカは再び三人の様子をじっと見つめる。そして、
「いいでしょう」
その言葉に三人は手を合わせて喜ぶ。
「しかしです。生と死の間を彷徨っているミーニさんを強引に目覚めさせようと言うのは、言
わば『生き返らせる』行為と等しいと言えます。私の叶銃には、生と死に直接影響を及ぼす願
いを叶える事はできないのです」
「そ、そんな・・・」
「何か方法は無いんですか!?」
焦る三人に対し、ヒイカは冷静に言葉を続ける。
「まあまあ、方法ならあります。要は、間接的に生き返ることになればいい訳ですから。・・・・・・
ミーニさんに生き返るほどの強い力を宿してやりさえすれば、自然と目を覚ますでしょう」
「自然とって・・・結局は待つ事になるのか・・・」
「じゃが、それでミーニが助かる可能性が高まると言うのならばよしじゃ!」
「でも、その生き返るほどの力って何なんでしょう?」
すると、ヒイカは徐に電話を始める。そして、何やら手早く話を付けたと思うと、直ぐに何
者かが入ってくる。
「ご足労頂き、感謝いたします、ミカエル様」
「急いでいるとの事でしたので、急いできてみました」
それは、その人物は伝説の大天使ミカエルだった。




