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黒翼のカナエル  作者: 氷花
勇者と魔王編
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手掛かりを探して

 それから十日ほどが経過し、分かってきた事がある。それは気候である。暑い、寒い、うる

さいの順で巡っているようなのだ。それさえ分かってしまえば、対策を採るのも容易である。

 暑い日は暑いだけ、寒い日は寒いだけで雨も雪も降らない事から、三日に一度雨が降るとい

う事がわかり、天気も気候も分かっているため、むしろ行動の計画が立て易いということに気

が付いた。

 その事もあり、当初はこの異常気象に不安を隠しきれなかった世界中の人々も、上手く対応

して生活し始めており、笑顔も見せるようになっていた。

 意識の無かったセイムたちも数日前には目を覚まし、退屈な入院生活を送っていた。

「ああ~身体動かしたいよ~!」

 セイムはほぼ完治していたが、大事をとってもう少しだけ安静にしているように言われ、も

どかしさを感じていた。

「むにゃぁ・・・・・・」

 メルリアも同様であったが、「安静にしている」をいい事に惰眠をこれでもかと貪っていた。

 骨折していたワンコだけはまだ完治には時間が掛かりそうで、ゆっくりと世界中の書物を読

みながら有意義に過ごしていた。

「セイム、お前も何か今出来ることを見つけたらどうだ?」

 退屈だとぼやいてばかりいるセイムに、本やら遊び道具を持ってきてはその相手をしていた

カイエルだったが、元々身体を動かす事が大好きなセイムは、直ぐにそれらに飽きてしまい、

長続きしなかった。

「そんな事言われてもー!運動したいのー!」

「本読め、本!知識も立派な力だぞ」

「ぶー!」

 だが、セイムは本に触れようともしない。

「セイムちゃん、学校に通ってたときも、座学は苦手だったもんね」

「そうだねえ。授業中も全然じっとしてられなかったしねえ」

「全くだ。おかげで先生も大変だったろうな」

 実際、先生も始めの頃は集中力の無いセイムを注意していたのだが、一向に直らず、次第に

注意する回数も減っていき、最終的には静かに、授業の邪魔さえしなければ注意する事も無く

なっていた。

「そうそう。先生、あれも個性だからって言ってた!」

「諦めちゃったんだねえ」

「うう~・・・・・・そんなに・・・迷惑・・・なの?」

 流石のセイムも罪悪感に顔を曇らせる。

「ま、迷惑だったろうな」

「うぐ!」

「でも、今しおらしくなられたら心配しちゃうけどねえ」

「どこか身体の調子でも悪いのかなあって思っちゃうよね」

「つまりはただの思い出話だ。お前は今のままでいいんだよ」

「ほ・・・なあーんだ!」

 セイムは胸を撫で下ろし、笑顔を見せる。

「じゃあセイムちゃん、退院するまでに、どうすればもっと強くなれるか一緒に考えようねえ」

「・・・うん。次は・・・・・・絶対に負けない!」


「ハワーさん・・・・・・」

「あんなハワー、初めて見るな・・・」

 いつもの明るさ、元気が何処へやら。自分の部屋の片隅に横たわり、動かない。喋らない。

 無理もないだろう。あれから未だにミーニは帰って来ず、連絡の一つも無いのだ。それは明

らかにミーニの身になにかあったという事を示していた。

 近所で聞き込みをしてみても、目撃者は一人もおらず。家族に連絡し、友達や家族の友人達

にも捜してもらっているが、話の一つも入ってこないという状況だ。これだけ日数が経過して

しまうと、健全な状態でいる可能性は低いと考えざるを得ない。

 その不安が絶望となり、ハワーに元気を失わせていた。

「これだけ捜して情報の一つも入らないなんて、異常じゃないか?・・・いや、居なくなってる時

点で異常ではあるんだが・・・何て言ったらいいか・・・」

「何か見落としてるとか、そんな感じですよね」

「そうなんだよ!こんな時って、近くにヒントがあるのにそれを見落としてるって事、結構あ

ると思うんだよ」

「そうですね。もう一度ミーニさんの部屋を調べてみましょうか」

 手掛かりを求めてミーニの部屋の扉を開く。

 ミーニが居なくなって直ぐの頃にも一度調査に訪れていたが、その時は何も見つける事が出

来なかった。

「それじゃあ始めましょうか。スターシャさんも宜しくお願いしますね」

 今回はスターシャにも協力を仰いだ。小柄なスターシャならば、狭い所も探す事が出来るた

めだ。

 ノートの中身を一頁一頁確認したり、小さな紙片でも何か掛かれていないか調べていく。ス

ターシャは家具の隙間に何か落ちていないかを調べていく。

 調べるに連れて分かってくるのは、ミーニが真面目であるという事。こんな子が突然居なく

なるなんて・・・と、驚きが大きくなるばかりだ。

「どうですか?」

 一通り調べ終えた所で、首尾を確認してみる。

「・・・ふう。駄目だな。全くそれらしいものは見当たらんな」

「スターシャさんはどうですか?」

 隙間から出てきたスターシャは耳を垂れる。どうやらこちらも得るものは無かったようだ。

「何も出来ないんでしょうか・・・」

 結局何一つ進展せず、己の無力さを痛感する。その時

「ラキエルさん・・・あまり芳しくない結果だったようですね」

 ヒイカが心配そうに様子を伺っている。

「はい。何も・・・見つけられませんでした・・・」

「そうでしたか・・・。処で、皆さんの部屋は探したりしましたか?」

「えっと・・・それは・・・」

「しっかり者のミーニさんの事です、もし書置きを残すのであれば、分かり易く自分の部屋か、

親しい人の部屋に残すのではと思ったのですが」

「自分の部屋・・・!」

 そう言われてみると、探してみた事は無かった事に気がつく。

「でも・・・それらしい物は私の部屋には無かった気が・・・バンリさんは・・・って」

「あたしの部屋はこのハイラント邸にはねえよ」

「そうでしたね」

「つーか、一番親しいのはやっぱ、ハワーだろ。姉なんだしさ」

「ハワーさん・・・・・・行きましょう!様子を見るついでで探しに!」

「だな」

 ハワーの部屋にやって来た。ミーニの部屋に初めて入ったときもそうだったが、部屋は綺麗

に片付いていた。しっかりしているミーニは分かるが、ハワーの部屋まで綺麗である事は、正

直意外だった。いつも元気なハワーだけあって、部屋も元気に散らかっていると勝手に思って

いた。

 部屋に入ると、ハワーは相変わらず片隅にぬいぐるみのように横たわり、静かで動かない。

二人が部屋に入ってきてもこれといった反応も見せない。

「重症だな・・・気持ちはよく分かるがな・・・・・・」

「・・・ハワーさん、少し部屋を見せて頂きますね」

 聞こえているかも怪しいが、一言断ってから探し始めた。

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