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黒翼のカナエル  作者: 氷花
勇者と魔王編
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敵か、味方か

 外はまさに炎天下の様相を呈し、激しい光を放ち燃えさかる太陽から打ち付けられる直射日

光の熱さはまるで、直火で焼かれているかのように痛みさえ感じるほどだ。

 この過酷な空の下を歩いて移動するに際し、気合には頼りたくなかった。こんな時に役に立

つのがやはり、研究熱心なシュリの多彩な魔法だ。

 その中の一つ「水陣・泡宿り」

 そう名付けられたこれは、身体全体を包み込むように球状の薄い障壁を張り、その上に水を

纏わせて膜を形成するという魔法である。この魔法は、水の膜によって直射日光を軽減し、そ

の内側を涼しくする事に加え、夏にはよくある突然の雨も薄い障壁によって防いでくれるとい

う、夏を過ごしやすくする事を目的に考案・開発された魔法である。

 この「障壁に水を纏わせる」という点がミソで、例えば、障壁の形状を結界のように大きな

半球状に成形すれば、たくさんの人たちを内側に入れる事ができるようになるというような応

用も出来るのだ。

 だが、欠点も当然ながらある。それは障壁によって雨だけでなく、風も防いでしまうという

点だ。内側には風が入ってこないため、思ったよりも涼しくならないのだ。障壁を覆うものを

水の膜ではなく、氷にすればこの点は解決できるのだが、そもそもの水は大気中から集めて纏

っているため、それを更に氷にする必要があり、これには才能にも左右されるのだが、水を氷

にするには結構な魔力が必要になるのだ。氷のまま維持するとなると更に・・・・・・。

 まあ、そんな改良途中の魔法ではあるが、此度の状況においては中々にいい働きをしてくれ

た。そんな訳でチーム・スパイラル一行はそれほど苦労する事無くハイラント邸に辿り着けた

訳である。

「はあ」

 初めて見た魔法と言う事もあり、余程楽しかったのか、セイムが嬉しそうにその魔法を語っ

ていた。その止め処ない怒涛の言葉をぶつけられ、チーム・ハイラントの面々(ハワー以外)

はキョトンとしていた。

 最後まで話し終え、満足げな表情を浮かべるセイムを横目に、漸く本題に移る。

「そういえば、早急な解決が必要だって?言ってたみたいだが、どう考えているんだ?」

「はい。朝の時点でこの暑さですから、これがもっと日が高くなる時間になると、それは今ま

でに経験したことの無い暑さになる事が考えられます。そうなれば、当然体調を崩す人も多く

出てくる事になるでしょう。という事です」

「そうだね・・・ここから更に暑くなったらと思うと・・・・・・」

「地獄だな」

「よし!となれば、『アレ』の出番だねえ!」

「アレ?」

 誰一人としてピンと来ないのか、首を傾げている。

「あら・・・皆もしかして忘れちゃってるのかねえ?ま、無理もないかねえ」

 『アレ』は今まで全くと言っていい程絡んで来ないし、その用途も全く分からないままだっ

たし、そりゃ忘れてしまうのも仕方がないというものだ。

「『神楽鈴』なんだけどねえ」

「あ・・・・・・あ~・・・・・・なんじゃったっけ?」

 そうか。どうやら『神楽鈴』という物の名前を言った所で、馴染みの無い物であるので、分

からないのだろう。

「持ち手のついた鈴って言ったら分からないかねえ」

「あ!あれの事ですね!何だかよく分からなかった」

「あ?あーーー・・・何じゃか知っておるような・・・ないような・・・・・・」

 メルリアは未だに思い当たりそうで当たっていないようだ。

「メルリアちゃん、メルリアちゃんのおねえちゃんからもらってたよね。あれだとおもうよ」

「おお・・・おお!あれか!絶対無くすなよ!とか言っておったあれじゃな!」

「やっと思い出したのかよ。というか・・・」

 バンリははっきりとは口に出さず、心の中で呟いた。過去の出来事を忘れて今を楽しく生き

るハワーですら覚えていたのに・・・と。

 実際にその『完成した神楽鈴』を持ってきた。鈴は相変わらずシャンシャンと動かされる度

に心地の良い音色を辺りに響かせる。

「おお?いつの間にか鈴が綺麗に揃っておるではないか!」

「それすら知らなかったのかよ!」

「・・・まあまあ、その辺りの問答はそれくらいにして。シュリさん」

「ん。これがどうやら解決への鍵らしいんだよねえ」

「そうなのか。それで、それをどう使う?」

「それは・・・・・・」

 辺りを見渡すと、そこには分かっているのだろう、ヒイカが大人しく座っていた。

「ヒイカさん、もう教えてもらってもいいですかねえ?」

「え!?」

 驚く皆とは裏腹に、ヒイカは笑顔でそれを了承する。

「はい、勿論です」

「え・・・ヒイカさんがどうしてその鈴の使い方を・・・?」

「それは私が『あちら側』を色々とサポートしているからですよ」

 ヒイカはすんなりと自身の立場を明かした。

「勿論、こうして皆さんに協力する事もその一部という訳ですが」

「え・・・・・・」

 周囲もそうだが、特にラキエルは酷く驚いている。

「さて、これを使うに当たり、まずは言っておかなければならない事があります」

 そんなラキエルの様子を知ってか知らずか、ヒイカは話を進める。

「待ってくれ!ヒイカさん・・・あなたは敵なのか・・・?」

 カイエルが代わって問い掛ける。

「敵・・・そうですね・・・・・・敵と言われると少し語弊がありますね」

「どう言う事なんです?」

「私は確かに『あちら側』の協力者ではありますが、その役目は・・・・・・起こる異変を皆さんに

解決させる事です」

「解決させる?邪魔するのではなくですか?」

「はい。解決させる事で私たちの目的は達成されて行くのです」

「それはつまりじゃ!わしらが解決に動く事はあちらの者たちの思う壺と言う事なのじゃな!

ならば止めじゃ!解決はせぬぞ!」

 メルリアは大声で宣言するが、

「では、解決するのを止めて今のままで暮らし続けますか?」

「うぐ・・・それは・・・・・・」

 この尋常ではない気候のまま過ごし続けるなど、したくないし、するわけにも行かない。直

ぐにその宣言は撤回せざるを得なくなった。

「やるしかないのじゃな・・・・・・」

「要するに、私は解決させるためであれば、あなた方に協力は惜しみません。まあ、あまり協

力し過ぎないようにと言われているので、何でもはできませんが」

「敵の間者ではあるが、敵ではないという事か・・・」

「では、話を戻させて頂きまして。話しておかなければならない事ですが」

 ヒイカは一呼吸置いた。周囲はその場の空気で重要な話である事を察し、静まり返った。

「この鈴を使う事で、今回の異変を起こしている者の居る場所へ行く事ができます。ですが、

解決するためには、その者と戦わなければなりません」

「確実に戦いになると言う事か・・・」

「はい。それに、その相手は優しくありません。命の保障すら出来ません」

「な・・・!」

「ですので、中途半端な覚悟で臨めばどうなるかは・・・・・・一度よく考えて頂きたいのです」

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