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黒翼のカナエル  作者: 氷花
勇者と魔王編
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真実を求めて

 この終わりの来ない夜空に、終わりが訪れるという話は瞬く間に世界全土へと伝わって行っ

た。その結果、折角だし、それまでにこの綺麗な星空を堪能しようという者たちが大勢現れ、

二十五日となった今では、外でワイワイガヤガヤと騒いで、疲れたら眠るという、世界規模の

お祭りの様になっていた。世界を混乱に陥れるとは一体・・・・・・といった事態である。

 そんな浮かれた世間とは違い、真面目に原因の調査を行っているシュリではあったが、その

首尾は芳しいものではなかった。はっきり言ってしまえば、手詰まりである。

 あの空間に何とか辿り着けないものかと、全ての世界の色々な場所で飛行補助系の魔法を用

いて何度も高空を目指したが、限界まで高度を上げても辿り着く事は出来なかった。

 それよりも高い位置にあの空間を創り出している結界があるのだと思い、限界高度ギリギリ

に留まり、そこから更に高空に向かって魔力の光弾を飛ばしたりしてもみたが、やはり何かに

当たる事は無かった。

 実験によるシュリの考察はこうだ。

 あの空間は空にあるように見えて、実際には存在しないのだろう。ならばあれは何なのかと

言うと、恐らく「幻術」の類だろう。

 「幻術」とは、実際にはそこには存在しないのに、実際に存在するように見せる術である。

それにも種類がある。一つは特定の人物のみに見せる「幻視幻術」。これは幻そのものであり、

実際の風景を変化させる事は無い。もう一つは「可視幻術」である。こちらも幻ではあるのだ

が、この術はその空間そのものを変化させて見せるもので、全ての人々が見る事が出来る。今

の状況がまさにこれである。

 この「可視幻術」を破る方法なのだが、それは術士本体を叩くのが常套手段だ。幻術を維持

し続けるには集中力が必要であり、その間の術士は無防備である場合が多い。高位の術士であ

れば、別の魔法も簡単なものであれば使う事も出来るが。

 だが、今回は異例だ。まずはその規模である。五つの世界全土の空を覆う幻術など、魔王に

匹敵する程の魔力を持っていなくてはまず出来ない。次に維持している時間だ。もう既に三十

日程も維持し続けている。これ程の規模のものを、これ程長い間維持し続けるなど、一人の力

では不可能と言っていい。魔力に関しては他者からの供給を受ければ足りるかもしれないが、

集中力だけは本人次第だ。こんな長い時間、集中を切らさずいられる人物が居るとすれば、そ

れはかなり極まった人物である。自身の欲望や自我を完璧にコントロール出来るような人物だ。

 それがカリナの言う「スターシャ」なる人物なのだろう。だが、その人を知っている者は何

処にも居なかった。各地で聞き込みをしては見たが、成果は得られなかった。

 果たして、何処から幻術を扱い、維持しているのだろうか?カリナ以外の協力者が居る事は

確実だが、スターシャを知る人物が居ないため、縁のある人物を当たる事が出来ず、結果とし

て人となりを知る事も出来ない。捜し様が無いのである。

 カリナに訊けばいいと思うかもしれない。確かに、訊けば教えてくれるかもしれない。だが、

それはしない。これは最早、ただの意地である。カリナという答えに頼らず、自身の力を以っ

て謎を解明して行く。それがしたかったのだ。

 とは言え、残りは五日となってしまった。自分一人だけで解明するのも限界だろう。ならば

どう調べるのかだが、世界の事情に詳しくて、教えてくれそうな人物に心当たりがある。先に

答えを言ってしまえば、それはヒイカである。彼は様々な世界のお偉いさんたちに面識がある

上、一目置かれている様な凄まじい人物であるのだが、その人柄は誰にでも隔てなく優しい、

まさに「天使族」だと言える。


 さて、彼の住まう場所はハイラント邸なのだが、その人望故に色々な場所へ呼ばれて屋敷に

居ない事も多いと聞く。今はまだ朝の時間帯だが居るだろうか。

 ハイラント邸の巨大な門を潜り、敷地内に一歩足を踏み入れれば、その瞬間背後から突然話

し掛けられる。そうやって驚かせるのがこの屋敷唯一の給仕者であるガルの挨拶であり、常套

手段だ。

 ぐるっ!っと、敷地に入って直ぐ後ろを振り返る。

「・・・・・・あれ」

 居ない。まあ、忙しい時は無い事もあるさ。なんて思いながら前を向き直るとそこに居た!

・・・・・・瞬時の危機感で身構えるが、そんな事も無かった。

「はあ・・・こんな事してないで早く行こうかねえ」

「おはようございます」

「うにゃあああ!?」

 警戒心を解いた瞬間だった。やはり背後から耳元で囁かれた。ガルは身体が小さく、地面に

立っている状態ならシュリの腹部まで位しかない。だが彼女の性質上、普通に浮遊する事も出

来てしまうので油断なら無い。まさに今回の様な事になる。

「毎度いい鳴き声ですね!」

「むう・・・時間差とはやりますねえ・・・・・・」

「シュリさんは警戒心が強いですし、勘も鋭いですからね、一筋縄では行かないと思っていま

すので!」

 ニコニコ笑顔で嬉しそうに話すガル。彼女にとっては悪気と言うより、単に遊んでいるに過

ぎないのだろう。

「研究されてるねえ」

「鳴き声が聞きたいので。ところで、今日はどういった御用でしょうか?」

「ああ、今日はヒイカさんに訊きたい事があってねえ」

「ヒイカさんにですか。シュリさんがヒイカさんにとは珍しいですね」

 確かに。今までヒイカとは軽く挨拶をしたりする程度で、何かを話し合ったりした事は無い。

「いらっしゃるかねえ?」

「いえ、残念ながら出かけていらっしゃいます」

「いつからかねえ?」

「今朝です」

「今朝って・・・ついさっきって事かねえ!?」

「はい」

「何処行ったかは・・・」

「天使界のはずですよ。天使界の大聖堂かと。最近よく行っているみたいですし」

 天使界の大聖堂だとすると、簡単には入れてもらえない。だが、駄目元でも行ってみる他無

いだろう。

「ありがとねえ、行ってみるとするねえ」

「はい、行ってらっしゃいませ」

 ガルは軽くお辞儀をして見送る。

「あ、そう言えばカリナさんはどうしてるかねえ?」

「すっかり元気になられましたよ。ですが、もう少しの間は大人しくしていてもらいます。こ

の間みたいに無茶な事をされては困りますから!」

 不機嫌そうに頬を膨らませる。これは本当にしばらくは外出できそうに無い。

「ははは・・・んじゃあ改めて行ってくるかねえ」

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