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黒翼のカナエル  作者: 氷花
勇者と魔王編
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星空の世界

私は知っています。あの空を星で埋め尽くしている張本人を」

「本当!?」

 カリナは静かに頷く。

「それはどんな人?行きそうな場所は!?」

「・・・・・・名前はスターシャ。・・・・・・私と同じ、グリム様の弟子です。そして、場所も・・・案内出

来ると思います」

「本当か!?もしそれが本当なら、直ぐにでも解決させる事が出来るやもしれんな!」

 突然見えた希望に、皆が湧き立つ。

「では、直ぐにでもこの事を他の皆にも伝えて・・・」

「いえ、待ってください」

 解決へ動き出そうとした所を制止する。

「スターシャの下へは、転移魔法で直接行く事になります」

「え?場所は分かってるんじゃないの?」

「・・・私は、案内出来るとしか言っていません」

「あ、そっか」

「私とスターシャには強い繋がりがあるので、彼女が何処にいようと、相手の居る場所に転移

する事が出来るのです」

「成程・・・」

「ですが、今の私の体調では、同時に転移できるのは、せいぜい三人から四人が限界です」

「そりゃそうだよね。あ!でもさ、シュリちゃんならその辺り何とか出来たりしない?」

 セイムがシュリに話し掛けるが、シュリは何かを考え込んでいる様子で、その声が聞こえて

いないようだった。

「シューリちゃん!何考えてるのー?」

 セイムが抱き付くと、シュリは漸く気が付いた。

「ええ?ああ、うん、まあ、大した事無いじゃないからねえ。それより転移の事だったねえ?」

「そうだ。何とか出来ないか?」

「流石に、三人四人だけだと少ないし」

「う~ん・・・・・・」

 シュリは再び考え込む。自分が使える魔法の中で、望みの結果を導ける物を探す。

 転移魔法に必要なのは、まずは魔法陣。これは問題無い。次が転移する場所を強くイメージ

する事だ。これが問題だ。今回、対象となるのは場所ではなく、人物になる。つまりは、その

人物の事を強くイメージする必要がある訳である。

「スターシャ・・・すたーしゃ・・・・・・」

 だが、スターシャという人物には会った事が無い。これではシュリ自身がイメージをして転

移魔法を行使する事は出来ない。そもそも、人物を対象に転移を行うには、相当に強い繋がり

が必要になる。それを補う方法は・・・・・・

「まあ、難しく考えずに、魔力を補うだけでいいよねえ」

 シュリは考えるのを止めた。

「つまり?」

「そもそも、四人程度しか同時に転移できないのは、体調不良のせいで、魔力の使用、つまり

は転移魔法陣の広域展開及びその制御が難しくなるからなんだよねえ。だから、私が転移魔法

の魔力の大部分を肩代わりして、制御もすれば、カリナさんはごく少量の魔力を制御するだけ

で、広範囲にわたる転移魔法陣を使えるようになるって感じかねえ」

「成程、二人で一つの魔法陣を展開するという訳ですね」

「そーゆーこと」

「それってつまり!合体魔法!?」

 セイムが驚きと期待に目を輝かせている。

「う~ん・・・まあ、形で言えば、そう言えるかねえ。そんな大それたものではないんだけどねえ」

「す、すごいよ!私もそういうのやってみたいなー!」

「うん。そう言うと思って、実は、幾つか案があるんだよねえ・・・ふっふっふ」

 シュリは不敵な笑みを浮かべて笑う。

「おお~~~。流石はシュリちゃん!いつ練習する!?今直ぐ!?」

 セイムは耳を立て、尻尾を忙しく振る。

「落ち着け、セイム。今はそれ所じゃないだろ」

「そうだねえ。転移魔法陣を二人で展開する練習をしないとねえ」

「えー?そっかー・・・・・・」

 耳と尻尾が力なく垂れる。

「じゃあカリナさん、身体に負担が掛かり過ぎない程度に練習しましょうかねえ」

「はい。お願いします」

 二人が部屋を出て行こうとすると、

「一つだけよいか」

 メサイアが呼び止める。

「決行は何時にするつもりだ」

 シュリはカリナの様子を伺う。

「そうだねえ・・・一先ずは安定した魔法陣が展開できるか次第だけど・・・カリナさんの体調も考

慮するに、三日くらいは猶予が欲しいねえ」

「三日か・・・これまでの事を思えば、今更三日程度、か・・・・・・分かった。三日待とう」

「ん。じゃ、そういう事で」

 二人は部屋を出て行った。

「これは、決行は三日後に決定と言う事なのか?」

「そう・・・みたい?」

「よーし!じゃあそれまでに準備をしなくちゃね!」

 ここでカイエルが一つの疑問を持つ。

(そういえば、転移した先で、何をすれば解決するんだ?戦うのか?それとも・・・)


 シュリとカリナは早速、転移魔法陣の展開を試みていた。まず、カリナの体調を考慮して、

カリナが陣の一部分だけを描き、シュリが残りの部分を描いて完成させるというのが、狙った

形である。

 それに習い、カリナは目を閉じ、転移魔法陣の行き先を決める術式の部分だけを描く。それ

に続いて、シュリが残りの術式を描く。

 魔法陣は見事に一つの形を成した!だが、

「あらら」

 出来上がって直ぐに、魔法陣は消えてしまった。

「ふむ。もう一度やってみるかねえ」

 もう一度、二度三度と同じ要領で魔法陣を描く。だが、結果は同じだった。

「ふう・・・ふう・・・駄目・・・みたいですね・・・」

「そうだねえ」

「原因は?」

 様子を見ていたメイエルが心配そうに、息苦しそうなカリナに寄り添う。

「うーん、魔力量の違い、かな?」

「私の・・・せいですよね。すいません・・・」

「そうなの?」

「まあ、そうだねえ」

 二人で一つの魔法陣を、継ぎ合わせて形成するには、陣に込められている魔力が全く同じに

ならならくては、不安定になり、消滅してしまう。だが、今のカリナは体調を崩していると言

う事もあり、呼吸するたびに魔力が変動してしまっているのである。

「ん。今日はゆっくり休んだ方がいいねえ。また明日にしようねえ」

「・・・はい」

 カリナは自分の不甲斐無さに唇を噛み締めていた。

「私が送っていくから、メイちゃん、先に帰るねえ」

「うん。御大事にね、カリナさん」

「よっと!」

 シュリはカリナを背中に担ぐ。

「シュリさん!?」

「ん~?私に、病人を歩かせろって、酷な事を言わせたいのかねえ?」

「あ、いえ・・・ありがとう・・・ございます・・・」

 シュリは笑顔を見せると、歩き出した。

 道中、カリナの身体からは凄まじい熱が背中に伝わってくる。その熱のせいで、シュリも汗

を掻いてしまっている程だ。

(結構、無理してたみたいだねえ)

 カリナから、寝息と共に、寝言が聞こえて来る。

「すたーしゃ・・・いま・・・むかえに・・・・・・」

「やっぱり、かねえ・・・・・・ま、まだまだ分かんないけどねえ・・・」


 冬の上節・十日。朝の大社に再び集まった。

「カリナさん、身体の方は大丈夫かねえ?」

「はい。万全とは行きませんが、問題無いです。それよりも、一緒に向かう方達は・・・」

 この場に集まっているのは、チーム「ハイラント」と「スパイラル」の面々だけだった。

「この十人で宜しいですか?」

「あ、ちょっと待ってくれ!もう一人、直ぐに来るから!」

 バンリが手を上げる。その言葉通り、向こうから給仕者の女性がこちらへ走って来る。

「申し訳ありません。お待たせしてしまったみたいですね」

「ウインターも一緒に連れて行くから」

「バンリ様のメイドのウインターです。宜しくお願い致します」

「これで十一人・・・んじゃ、そろそろ出発するとしようかねえ」

「はい」

 カリナとシュリが二人で一つの大きな魔法陣を地面に展開させる。その上に集まった面々が

全員乗った所で

「では、飛びます!」

 次の瞬間、魔法陣の光が強さを増し、皆の姿がその場から消えた。


 気が付くと、辺り一面、真っ暗闇に輝く星たちに囲まれた空間に居た。真っ暗なのは何時も

通りだが、ここでは手が届かなかった星たちに手が届きそう所か、目の前に浮かんでいた。

「これ・・・やっぱりただの光の球みたいだねえ」

 シュリがその光る球体に手を触れると、その球体はゆっくりと、真っ直ぐに押された方向へ

移動して行く。

「なにそれ!おもしろそうー!」

 ハワーは光の球へと突撃し、思い切りそれを突き飛ばす。光の球はその威力通りの勢いで真

っ直ぐに飛んで行った。

「おお!!これおもしろいよー!バンリちゃーん!それ!」

 ハワーは光の球をバンリに向かって投げる。

「うお!?ちょっと待て!」

 光の球は真っ直ぐにバンリへと向かう。バンリがそれを咄嗟に手で防ぐと、その反動で光の

球はハワーの方へと戻って行く。

「これは・・・!よーし!つぎ、ラキエルちゃん!」

 返って来た光の球を今度はラキエルの方へ打ち返す。

「わたしですね!えい!」

 ラキエルは飛んで来た光の球を手で打ち返す。光の球は誰もいない方向へと飛んで行くが、

ハワーが飛びつき、打ち返す。

「私もまーぜーてー!」

 光の球を打ち返して遊ぶ三人にセイムも加わる。

「皆さん、光の球にばかり気を取られている様ですが、足元も見た方が宜しいかと」

 ウインターが呟く。

「え?足元?」

 一斉に足元を見る。と、そこには星空が広がっていた。

「あ・・・れ・・・?これ・・・地面が無いの!?」

 確かに立っている。だが、その足元には地面らしきものが見当たらなかった。

「うおお!?これはどうなっておるのじゃ!?」

「シュリ、説明してくれ!」

「う~ん・・・結界の類?じゃないかねえ?」

「結界?これがか?」

「さあ?全部の魔法を知ってる訳じゃないしねえ。分かんないねえ」

 皆がこの空間に心を奪われている中、カリナは辺りを見渡し、捜していた。だが、見当たら

ない。

「カリナさん。そのスターシャという方は何処に?」

「・・・・・・見つかりません。私が来れば、向こうから出て来てくれると思ったのですが・・・」

「ふむ。カリナさん、スターシャさんとはどういう関係なのかねえ?私が勝手に予想している

のは、『使い魔』か『契約』の関係かねえ」

「使い魔?契約?聞いた事はあるのじゃが、なんじゃ?それは」

 『使い魔』とは、本来は魔力を持たない生物に、魔力を与える事で知性を持たらし、自らに

絶対の忠誠を誓わせる術である。

 『契約』とは、知性を持つ者どうし(相手が魔力を持っている必要は無い)が、互いの魔力

や感覚など、様々なものを共有出来るようになる、友情や愛情の契りとして行われる。

「・・・まあ、そんな所です」

「ふーん・・・」

 あまりその話はしたくなさそうに見える。

 カリナは目を閉じる。

(スターシャ・・・スターシャ・・・・・・何処に居るの?)

 スターシャに向け、心を飛ばす。

・・・・・・・・・・・・かりなしゃん?

 しばらくして、漸く反応が返って来た。

「スターシャ!」

「ん!届いたのかねえ?」

 カリナは続けて話し掛ける。

(スターシャ、出て来て・・・!)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(スターシャ、スターシャ?スターシャ!)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 しかし、声は一向に聞こえて来ない。

「カリナよ、どうなのじゃ?」

「・・・・・・駄目です・・・もう、声が返って来ません・・・」

 カリナは俯いてしまう。相当ショックだったようだ。

「聞こえてない訳ではないのかの?」

「・・・・・・聞こえているはずです」

「じゃ、捜すしかないねえ!」

 明るくそう言い、カリナの背中をポンと叩く。

「おーい!セイムちゃんたちー!」

 その声に、遊びに夢中になっていた手が止まる。

「なーあーにー!」

「スターシャという人を捕まえに行くよー!そう!つまり、鬼ごっこするよーーー!!」

 セイムたちは互いに顔を見合わせ、頷く。

「鬼ごっこするーーー!!」

 元気いっぱいの返事が返ってくる

「よし!で、カリナさん、そのスターシャさんって人の特徴を教えてくれるかねえ?」

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