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黒翼のカナエル  作者: 氷花
勇者と魔王編
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夜の始まり

 秋の下節・二十七日。ラキエルとバンリとハワーはいつもの様に学校へ向かった。天気も良

く、何時もと変わらない日だ。

 ラキエルはこちらへ帰ってきてから、再び以前通っていた学校に通うようになったのだが、

まだ恥ずかしさが抜けていなかった。久しぶりに学校に戻ってきた当初から、ラキエルの元に

は、「天使界はどんなトコだった?」「どんな勉強をしてきたの?」等など、天使界に短期留

学していた事になっていたため、次から次へと質問に訪れてくるのである。以前に通っていた

時には、これ程ラキエルの元に人が集まってくる事は無かったため、最近のラキエルは疲れ気

味だった。

「ラキエル、大丈夫か?明日は休みだから、今日一日の辛抱だぞ」

「はい~・・・」

 その疲れの理由はもう一つあった。同学年だけではなく、上や下の学年からも訪れたり、廊

下を歩いている時に話しかけられたりもし、学校にいる限り、何処にいても休まる場所が無い

のだ。最早、授業中だけが休める時間だった。

「ラキエルちゃ~ん?お疲れかなー?」

 つい、うとうとしてしまっていた所を、担任のデイ先生に注意されてしまった。

「はっ!す、すいません!」

 慌てて身体を起こすが、少しすると直ぐに眠気が襲って来る。何とか睡魔に負けまいと頬っ

ぺたを抓ったりするが、あまり効果は無い。そんな不利な戦いを繰り広げている間に、いつの

間にか授業は終わっていた。

(あれ・・・?終わったのでしょうか?)

 欠伸をし、背筋を伸ばしたその時だった。

「おはよ、ラキエルちゃん」

 直ぐ目の前に笑顔のデイ先生が立っていた。

「あ・・・あの・・・・・・」

 驚いて言葉が出ないラキエルに向かって、先生の手が伸びて来る。怒られるかと思い、顔を

しかめるが、その手はラキエルの頭に乗せられた。

「噂は聞いてるよ~。色々と質問されて大変だって」

 その手が動き、ラキエルの頭を優しく撫でる。

「でもねラキエルちゃん。教室で寝るのは駄目だよ!」

「す、すいませんでした・・・・・・」

「どうしてだか分かる?」

「え・・・と・・・・・・」

 突然の質問に戸惑い、答えられない。

「教室で寝ちゃったら、皆が羨ましがっちゃうでしょ!先生だって授業をほっぽり出して寝ち

ゃいたいって思う時があるのにぃー!」

「は、はあ・・・」

「あ!これは皆には内緒にしてね!」

 とは言われても、大声で叫んでしまっているので、もう遅いと思う。

「とにかく、ラキエルちゃんは眠いのなら、保健室でちゃんと寝るように!これからは身体の

調子が悪い時はちゃんと先生に言ってね?」

「・・・はい、先生!それじゃ、寝てきます!」

「はいはーい!せんせー!わたしもねてきまーす!」

「ハワーちゃんは元気一杯でしょ~?」

 ハワーが便乗して一緒に教室を出ようとするが、ニコニコ笑顔の先生、もとい母親に捕まっ

てしまう。

「えう~~~」

 残念そうなハワーを尻目に、ラキエルは保健室へと向かって行った。


 いつの間にか夕暮れになっていた。どうやら、授業の全てを保健室で寝過ごしてしまったよ

うだ。いっぱい寝てすっきりした気持ちと、授業の全てをすっぽかしてしまったという罪悪感

が入り乱れる。

(どうしよう・・・皆さん、もう帰ってしまってますよね・・・。私も帰らないと・・・)

 そう思っていると、保健室のドアが開けられる音が聞こえてきた。足音が中へと入って来て

こちらへ近づいて来る。カーテンが引かれていて、誰が入ってきたのかまでは分からないが、

足音から落ち着きを感じるため、恐らく大人の人だろう。足音は目の前で止まり、視界を遮っ

ているカーテンが開かれる。

「ラキエル?あ、起きてるのね、良かった。それじゃ、早く帰りましょ?」

 ラキエルはその人物を見て言葉を失った。

「どうしたの?もしかして、まだ寝ぼけてるの?さ、早く帰って晩御飯にしましょう?お父さ

んも待ってるわよ」

 それは紛れも無い、母親だった。

「おかあ・・・さん・・・?」

「なあに?怖い夢でも見たの?しょうがないわね・・・いらっしゃい」

 母親は両手を広げる。

「おかあさん・・・・・・」

 ラキエルは惹かれるように両手を伸ばす。が、その瞬間、視界が大きく傾いた。

 身体に走る痛みで目が覚めた。どうやら、ベッドから落ちたようだ。

「夢・・・・・・当然ですよね・・・」

 辺りを見渡しても、誰も居なかった。

「もう、乗り越えたはずだったのに・・・あんな夢を見るなんて・・・。バンリさんの影響かもしれ

ませんね・・・・・・」

 あの日、あの家族の幸せそうな顔を見てしまったせいだろう。別に、バンリが悪いわけでは

ない。誰も、悪くない。

 思いふけっている間も日はどんどんと沈み、夜が迫ってきている。

「あ・・・早く帰らないと・・・」

 機械のようにそう呟き、立ち上がろうとした時だった。ガララ!と、再び保健室の戸が開け

られる音がする。そして、足音が中へ入り、こちらへ近づいて来る。落ち着いた雰囲気の足音。

大人の人だ。さっき見た夢が正夢になるのではと、感情が湧き上がる。その感情は期待だろう

か、不安だろうか・・・。

 ラキエルはその場から動かず、カーテンが開かれるのを待った。そしてその通りにカーテン

は開かれた。

「ラキエルさん?あ、起きてますね、良かったです・・・って、そんなベッドの下でどうしたので

すか?もしかして、転げ落ちたりとかしました?」

 ラキエルは言葉を発する事が出来なかった。

「大丈夫ですか?どこか、強くぶつけたりとかしてませんか?」

 地べたに座っているラキエルに目線を合わせて心配するその人は、ヒイカだった。

「ヒイカ・・・さん・・・?」

「はい、何でしょう?」

 そのヒイカは大人の姿をしていた。最後に見た時は子供だったが・・・。あれからはまだ、半年

位しか経っていないのだが、これは・・・。

「ラキエルさん?はっ・・・!もしかして頭を!?フュクシンさん、早く病院へ!」

 中々言葉を発しないラキエルに、不安を抱いたヒイカが後ろに控えていた彼の「使い」であ

るフュクシンに助けを求める。だが、フュクシンは冷静に対応する。

「ラキエル様、私の眼を見て下さい」

 両手でラキエルの顔を掴み、眼を合わせる。ラキエルも言われた通りに眼を向ける。

「・・・・・・大丈夫ですね。ヒイカ様、ラキエル様はただ単に驚いていらっしゃるだけかと思われ

ます」

「驚く?」

「そうですね・・以前にお会いした時は確か、ヒイカ様はまだ子供の姿をしていらっしゃったと

記憶しております。其れ故かと」

「そう言えば、元に戻ってからは会っていませんでしたね。えっとですね、何処から説明した

ものか・・・・・・」

「ヒイカ様、夜が迫っています。家に帰ってからゆっくりと話された方が良いかと」

「うん、その方がいいね」

 ヒイカはラキエルの手を取って立ち上がらせる。

「ラキエルさん、荷物はまだ教室ですか?」

「あ、はい」

「それなら早く取りに行きましょう!もう廊下も薄暗くなっているので、足元には気を付けて

行きましょう」

 ヒイカに手を引かれ、ラキエルは思考が回らないままに、取り合えず従って歩いた。夢か、

現実か。未だにはっきりとしない。分からなかった。

 教室で荷物を纏め、学校の門を出てハイラント邸へと向かう道を進む。既に日が沈み、空に

は無数の星たちが競うように煌いていた。依然として手を引かれて歩いている所に、冬間近の

冷たい夜風が吹き抜け、少しずつ頭が冴えて来た。

「ヒイカさん、迎えに来て下さったんですね」

「はい。混乱させるような事になってしまいましたけどね」

 ヒイカは苦笑いを見せる。

「最近お疲れの様子だと聞きましたが、何かあったんですか?」

「えっと・・・連日、たくさんの人から次々に質問されるので・・・」

「成程、人疲れでしたか。どういった質問を?・・・って、これも質問か!というかさっきも質問

してたし・・・ごめん!ごめんね!?」

 ヒイカは慌てふためいて謝る。滑稽なその様を見たラキエルに悪戯心が芽生えた。

「傷つきました・・・もう駄目です」

 そう言い、ラキエルはうずくまる。

「わー!?どどどどうしよう!?らららラキエルさん!謝りますから、もう質問しませんから

許して下さい!」

 うずくまったまま何も答えずにいると、ヒイカは更に焦り始めた。

「どうしたら許してくれますか!?何でもしますから!!」

 だんだんと可愛そうになって来た。少しやり過ぎたみたいだ。でも、折角「何でもする」何

て言ってくれているのだ。

「それじゃあ、一つだけ。・・・どうして私に優しくして下さるんですか?同情・・・しているとか

ですか?」

 ヒイカには願いの声が聞こえる力がある。恐らく、ラキエル自身が意識していなくとも、何

かを願ってしまっている事だろう。そしてそれは当然、ヒイカにも聞こえているはずだ。

「私の願いの声を聞いて・・・それで色々と優しくして下さってるんですか?」

 ずっと思っていた疑問をぶつけた。別に、同情されるのが嫌だとか言う訳ではない。ただ、

どう言う思いで自分に接しているのかを知りたかった。

「ヒイカ様、もういっその事・・・」

「・・・・・・そうですね」

 ヒイカはうずくまるラキエルに目線を合わせる。

「ラキエルさん、本当ならもっと後に、折を見て話すつもりだったんですが・・・」

 随分と思わせ振りな言い回し

「私は・・・・・・あなたを養子として引き取ろうと思っています」

「!?・・・え・・・と・・・」

「これは確かに、同情も入っているかもしれません。ですが最大の理由は、単純にあなたを支

えたいと思ったからです」

 全く予想外の理由だった。

「ラキエルさん、返事はその内でいいので、聞かせて下さいね?」

「・・・・・・はい・・・・・・」

 ラキエルは生返事しか出来なかった。


 それから、時間はあっという間に過ぎていた。いつの間にかハイラント邸に着き、いつの間

にか晩御飯を食べ終え、もう既に寝る準備まで整っていた。それまでにどんな会話をしたのか、

どういった立ち居振る舞いをしていたのかも覚えていない。

 頭の中には常にヒイカに言われた言葉が駆け巡っている。養子になると言う事は、その人の

子供になると言う事で、つまりは「親」ができると言う事になる。「親」がラキエルにとって

どんな存在なのか、ヒイカも当然分かっていて、その上で申し出ているのだろう。

 ラキエルが部屋でぼーっと考えている所に、ハワーがやってくる。

「ラキエルちゃーん・・・おきてる?」

「はい、何でしょう?」

「ラキエルちゃん!だいじょうぶ?ラキエルちゃん、じゅぎょうぜんぶおやすみしちゃうほど

つかれてたんだね・・・」

 どうやら心配して来てくれた様だ。

「先生には申し訳ない事をしてしまいましたね」

「いいよいいよ、ママはそんなこときにしないから。それより、マッサージしてあげるね!」

 ハワーはラキエルの背後に回り、肩を揉み始めた。

「へへへおきゃくさん、けっこうたまってますねぇ」

「ん・・・んん~~~・・・・・・思ったよりも気持ち良いですね・・・」

 身体の凝りだけでなく、心の凝りまでほぐされていく様だ。

「ハワーさん、ん・・・上手ですね」

「えへへ、ありがとー!いえでもね、ママとかパパにもやってあげてるんだ~。でも、ミーニ

ちゃんはやらせてくれないんだよねー。くすぐったいからやだ!っていってさ」

「そうだったんですか・・・。まあ、ミーニちゃんはまだ小さいですから凝ってないんですよ」

「そうなのかなあ?でもでも、さいきんはなんだかスキンシップもさせてくれないんだよー?」

「あ、じゃあ嫌われてますね」

 ラキエルは軽いノリで言う。勿論、冗談のつもりだ。

「ええーー!?」

 だが、妹であるミーニの事が大好きなハワーにはあまりに衝撃的な言葉だった。

「そ、そんな・・・ミーニちゃんが・・・ミーニちゃんがわたしをきらいに・・・・・・?」

「まあ、冗談で」

 冗談だと告げようとしたそれよりも早かった。

「ミーニちゃあああああん!!」

 ハワーは部屋を飛び出して行ってしまった。

「は、ハワーさん!?ちょっと待って下さい!」

 ラキエルもこのまま放っておく訳にも行かず、ハワーを追って飛び出した。

 ミーニはハワーとは四つ違いであり、今はまだ六歳なのだが、姉とは違ってその年の割に非

常に落ち着いた性格をしている。それは部屋にも表れており、ミーニの部屋は綺麗に整頓され

ていた。

「ミーニちゃあああん!!」

 今にも寝ようとしていた所に、涙を浮かべて叫びながら姉が部屋に飛び込んできた。

「えっと・・・お姉ちゃん?・・・・・・ラキエルさん、何が・・・?」

 ミーニは驚いただろうが、取り乱さず、状況を確認する。しかも、冷静ではない姉にではな

く、後ろから追って入ってきたラキエルにだ。何とも冷静な判断だ。

「これは、あの・・・・・・私のせいです。ごめんなさい」

 誤魔化したりせず、素直に謝る。

「私が『ハワーさんがミーニちゃんに嫌われている』と冗談で言ってしまったのが原因です・・・

本当に申し訳ありません・・・」

「ミーニちゃんはおねえちゃんがきらいになっちゃったのー!?」

「どうしてそんな話に・・・」

 ミーニからしてみれば、根も葉もない話だった。

「お姉ちゃん?嫌いになんて、なってない・・・よ?」

 そう言いつつ今にも泣き出しそうな姉の頭を撫でる。

「ほんと・・・に?」

「ほんとだよ?」

 ミーニはまるで母親のような優しい笑みを向ける。

「でもでも、さいきんミーニちゃん、さわらせてくれない・・・」

「ああ、それは・・・・・・」

 一転、ミーニは何か言い難い事があるのか、目線を逸らして口ごもる。

「やっぱりきらいなんだ!!うわーーーん!!」

 当然そうなる。

「まってお姉ちゃん!それにはちゃんとりゆうがあるの!」

「りゆうってなに!?」

「それは・・・」

 ミーニは言うべきか悩みながらも、誤魔化す事は出来ないと、意を決した。

「ママに言われたの!・・・『あまりお姉ちゃんを甘やかさないように』って・・・・・・」

 ハワーはしばしぽかんとした。

「な・・・?にそれーーー!?え?どういうことなのー!?」

「ああ、成程・・・」

「ちょっと?ラキエルちゃん!?」

 何故かラキエルが理解を示す。

「ようはね、お姉ちゃんにはもっとおちついてほしいってことだよ」

「そのために、まずは甘え癖を直させようという事ですね」

「なんでわかるの!?」

「はい。だから、お姉ちゃんがきらいになったわけじゃないよ?」

「う~~~・・・なんだかいろいろとなっとくできないとこがあるけど・・・きらいになったんじゃ

ないならいいやー!」

 ハワーは深く考える事を止め、満足顔で自分の部屋へ帰って行った。

「ミーニちゃん、何だか私のせいで、本当にごめんなさい」

「いえ、わたしもお姉ちゃんに分かってもらえ・・・たと思うので。言えてすっきりしましたから」

 本当にしっかりした妹さんだった。

 部屋に戻ったラキエルの心は幾分かすっきりしていた。

(ハワーさんのおかげで、少し気が紛れましたね・・・今日の所は寝てしまいましょう)

 明日も学校がある。明日はちゃんと授業を受けなければと決意し、眠りについた。


 眠りから覚めた時から、何か違和感は感じていた。前日の昼間にあれだけ寝たと言うのに、

結構しっかりと眠れたという感覚があったのだが、どう言う訳か、部屋は真っ暗だった。外を

見てみると、空には未だに無数の星たちが変わらず煌いている。

(まだ夜・・・眠れたようで、実は全然眠れてなかったんですね・・・・・・)

 ラキエルはもう一度眠ろうと横になって目を閉じるが、

「・・・・・・眠くない・・・・・・」

 かなり寝た感覚があり、眠ろうとも眠れない程目が冴えてしまっていた。仕方なく小さな燭

台に火を灯し、それを持って居間へと向かった。皆は寝ているだろうが、ガルさんなら間違い

なく起きているだろうと思った。

 その予測通り、ラキエルが居間に到着すると、ガルが何処からとも無く現れた。

「お早う御座います、ラキエルさん」

 出てくる事は最初から分かっていても、この真っ暗闇の中で突然声を掛けられるとドキッと

してしまう。ガルには全く気配が無いから余計にびっくりする。

「お早う御座います。・・・?こんばんは、ですよね」

 ガルが軽い冗談を言っているだけだと思った。だが

「いえ、お早う御座います、ですよ?今は朝ですから」

「え?でも・・・真っ暗で・・・」

 ガルが冗談を言っている感じでは無いように思えてきた。

「朝・・・なんですか?」

「はい。私の長年の経験から、時間の経過具合は目を閉じていても身体に染み付いているので

分かるんですよ。皆さん、起こしてきますね」

 そう言って、ガルはまるで驚く様子も無く、日常を繰り返している。

 起きて来たハワーもミーニも驚いた様子だった。

「これがあさなの!?すごい!まっくらなあさだよ!こんなのはじめてー!」

「なにか・・・変・・・」

 まあ、驚きの向かう方向は全く違うようだが。

 いつもの様に朝食が用意される。それを戸惑いながらも食べ終え、そして、

「そろそろ出発された方が宜しいですよ」

 外をひたすらに眺め続けている所にガルが声を掛けて来る。

「出発って・・・がっこう・・・?」

 ミーニは不安そうだ。

「はい。時間としては丁度良い頃合です」

「でも・・・こんな空だし・・・・・・」

「そうですよね、もしかしたらお休みになるかもしれませんね・・・」

「おやすみ!?やったー!」

 ハワーだけは全く不安を感じさせない。

「そうかもしれませんが、一応向かわれてはどうですか?こんな綺麗な星空の下で授業を受け

るのも面白いと思いますよ?」

 その言葉に、やはりハワーが一番に反応した。

「!!そっか!!そうだよ!こんなおそらのしたでべんきょうしたことない!ねえ、ふたりと

もいこ!?がっこうに!!」

 ラキエルとミーニは顔を見合わせる。

「行かないと、最悪サボりだと思われてしまうかもしれませんし・・・」

「しかたない・・・のかな・・・」

「じゃあきまりー!いざ、しゅっぱーつ!!」

 いつもと違う朝に異様にテンションが揚がっているハワーに手を引かれ、ラキエルとミーニ

は学校へと向かう。


「スターシャ・・・あの子の番なんですね、グリム様」

 カリナは空を見上げながらそう呟いた。

「ええ、ただのお試しの役割だけど」

「でも、大事な役割ですよね。あの子にちゃんと務まるか心配で・・・」

「まあ確かに。会話も満足に出来ないし、いざ敵と対峙した時には一抹の不安はあるわね」

「あの、グリム様。私が少し手引きをしても宜しいでしょうか?」

 グリムの耳がピクリと動く。少し間をおいて口を開く。

「具体的には?」

「解決への手引きです。敵側と行動を共にし、ヒントを与えながら『あの場所』へ導き、最終

的には私もスターシャと共謀した者として、あの子と共に戦います」

「心配性ね」

「・・・・・・駄目でしょうか・・・?」

 グリムは溜め息を吐く。

「好きになさい。今回の件はそれ程長引かせる必要は、別に無いもの。それに・・・誰かが教えな

い限り、分からないでしょうしね」

「ありがとうございます!では、そのように行動させて頂きます!」

 カリナは嬉しそうに尻尾を振りながら出て行った。

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