そういえば幽霊
丸一日続いた大宴会もようやく落ち着き、次第に集まっていた人々が自分たちの家に帰って
いく中、同じようにハイラント邸に帰ろうとしていたメルリアたちをメアトリスが呼び止めた。
「メル、お前たちに渡しておかないといけない物がある」
そう言って手渡された物は、何かの楽器のような物だった。棒の先に鈴が幾つか取り付けら
れており、それを軽く振ると、シャン、という複数の鈴の音が混ざり合った綺麗な音が鳴った。
「これは何じゃ?」
「『神楽鈴』とか言う物だ」
何だか小ざっぱりしていて、鈴の数が少ないように見える。
「これは・・・どうすればいいんすか?」
「持ってろ」
「それだけ?」
「ああ。その内分かる時が来る。だから、絶対に無くさない様にだけ気を付けて持ってろ。い
いか、絶対無くすなよ!話はそれだけだ、じゃあな」
メアトリスはさっさとどこかに行ってしまった。
「『絶対』と言っておったのう」
メルリアは何やらにやけた顔をしている。
「あの、フリじゃないと思います」
「ダメかの?」
「無くしたら殴られるんじゃないか?」
チーム「ハイラント」は『神楽鈴』なる物を手に入れた。
「本当に行っちゃうの!?」
わざとらしい悲壮感漂う顔で引き止める。だが、相当に長い付き合いであるため、死神族・
猫種の女性、カテドールは全く動じる事無く突き放す。
「行きます。それでは」
「それだけ!?だめだめだめだめ、行くなら私も連れて行きなさい!」
足元に抱きつき、進行を妨害する。
「リベラール様」
カテドールは無表情で足元に抱きつく邪魔者の首筋に鎌の先を当てる。
「刈りますよ?」
「う・・・」
大人しく解放する。
「カテ、私だって協力したいのよ、分かるでしょ?」
「はい。ですが、リベラール様には人に仕事を押し付けて怠ける癖がありますので、これを機
会にちゃんと仕事をする事を覚えて下さい」
「は~い・・・」
普段から仕事の大半を肩代わりして貰っているため、何も言い返せない。
(さて、依頼の対象たる人物の情報は『娘』というだけ・・・リベラール様の事もありますし、ゆ
っくりと事に当たるとしましょう)
天界城の外に出た所で、その肩に紫の狐が飛び乗る。
「では、ゆるりと参りましょうか」
カテドールはそのまま城を後にした。
夏休みが終わり、学校が始まった当初は皆、ラキエルが居なくなった事に驚き、悲しみの表
情を浮かべていたが、時間が経てば慣れてしまうもので、次第にラキエルの話をする者は居な
くなっていった。ラキエル自身、いつまでも悲しまれる事は望まないだろうし、これで良かっ
たと思うが。
学校が始まった事により、チームとしての活動は殆ど出来なくなっていた。今はカリナの特
訓を続けて力を付ける事が目的だと言える。当初はバンリだけであったが、例の姉妹喧嘩をき
っかけに、メルリアもワンコも、ハワーまでも加わって特訓をしている。メルリアは単純に強
くなりたいと思ったからで、ワンコは自分の可能性を見つけたため、それを生かせるように色
々な事を覚えたいがためで、ハワーは皆がやっているからという安直な理由でそれぞれ日々精
進していた。
秋の中節。夏の暑さもすっかり無くなり、一年の中でも過ごしやすい気候となってきた頃、
バンリは悩みを抱えていた。
(このままでいいのか?あたしは本当に強くなってるのか・・・?)
苛立ちも含んだその悩み。バンリには自分が成長しているという実感が全く無かったのだ。
なのに、メルリアやワンコは覚えがいいみたいであり、目に見えて成長しているのが伺える。
中途半端な覚悟で特訓しているハワーでさえ、カリナに動きが良くなったとよく褒められてい
る程だ。だというのに、バンリは褒められた事も無かったのである。
集合住宅の自分の部屋に居ると、どうしてもそんな事ばかり考えてしまい、余計に苛立ち、
不安にすら苛まれる。そのせいで夜も上手く眠れない。目を閉じていても眠りに落ちる事が出
来ず、苛立ちや不安が大きくなるばかりだ。
(もう駄目だ!眠れん!散歩でもしてくるか・・・)
バンリが眠る事を諦め、目を開けて起き上がった瞬間だった。
真っ暗な部屋の中に青白く光る人の姿がくっきりと、直ぐ目の前に見えたのである。
「ひぃっ!?ぎゃああああああ!!!」
勢いよく後ずさり、壁に頭と背中をぶつけるが、今はそれどころではない。目を覆い隠し、
何も目に映らないようにする。
(ききき気のせいか?気のせいだよな!?気のせいであってくれ・・・)
そうっと目を開けてみる。・・・いた。
「もう駄目だ!!!」
その言葉を断末魔にこてんと倒れ、バンリは目を閉じたまま動かなくなった。
何処からか声が聞こえてくる。
「バンリさん、バンリさん、大丈夫ですか?起きて下さい」
何だか、聞いた事のある声だ。だれだっただろう・・・そう、この声はガル。ハイラント邸で
給仕をしている人だ。もしかして助けに来てくれたのだろうか。バンリは三度、目を開ける。
すると青白い・・・以下略。
「もう帰れよ!」
涙目になりながら叫ぶバンリに、その青白い人影は言う事を聞くはずも無く、むしろ近寄っ
て来る。
「や、やめろ!?来るな!」
「バンリさん、私をよく見て下さい!分かりませんか?」
よく見てと言われても、正直言ってまじまじと見たくない。だが、それでも言葉に従わない
と状況が変わりそうに無いだろう。仕方なく恐怖を押し殺し、身を震わせながら目の前の物体
でも無さそうな存在に目を向ける。
青白い、恐い。服装は見た事がある、恐い。表情は笑顔、恐すぎる。だが、何となく分かっ
た気がする。
「あの・・・ガル、さん?」
「はい!そうです!」
ようやく分かってもらえてガルは嬉しそうだ。
「あの、何も分からないんすけど・・・」
何を何から質問したらいいのか、頭が回らない。
「そうですよね。えと・・・バンリさん、最近何やら悩んでいる様子でし、誰にも相談なされてい
ないようでしたので、心配になって様子を見に来たんですよ」
「ヘー、ソウナンデスカー」
まだ頭は働いていない。
「はい。これまでも何度か様子を見に来ていたんですよ」
え?何度か?その光景を想像すると恐ろしくなる。何か、取り憑かれたりとか・・・これ以上考
えるのは止めよう。
「それで・・・何でそんな心臓に悪い姿してるんすか?」
「私が幽霊だという事はご存知ですよね?」
そう言えば、そんな話を以前に聞いたことがあるような気がする・・・あまり覚えていないが。
「私はハイラント邸に取り憑いている自縛霊なので、本来は敷地内から離れられないのですが、
無理矢理離れようとすれば離れる事が出来まして、その代わりに実体を保つ事が出来ないので、
こうして魂をこの姿に変化させているのです」
「ああ、だから魂の色をしてるんすね」
自縛霊のうんぬんかんぬんはよく分からないが、実体が無いという事から先は理解できる。
「どうやらご理解頂けた様ですので、本題の方を伺いたいと思うのですが・・・」
ガルは気を使ってくれている。本当はあまり人に相談とかしたくない内容なのだが、何度も
見に来るほど心配をさせてしまっている訳だし、これから先、夜中に目を開けるたびに何度も
青白い姿を目にする事になるのは心臓が持たない。
「分かりました、話すんでとりあえず明かりを点けさせて下さい」
バンリは机の上のランプに火を灯した。オレンジの光を受けても相変わらず青白く光ってい
るガルは、何だか神秘的にも見えてきた。
「悩みは・・・話せば簡単な事なんすけど、その・・・成長してる気がしないんです・・・・・・あたし一
人だけ・・・」
恥ずかしい気持ちを押し殺し、打ち明けた。
「そういう事でしたか・・・そう言えば、バンリさんに一つ、伺いたい事があるのですが、宜しい
ですか?」
「え、あ、はい。どうぞ」
「バンリさんの魂、小さいですよね」
「!」
バンリは目を見開いた。
「ガルさん、分かるんですか!?魂が見えるんですか?」
「はい。幽霊ですし、魂に関しては結構詳しいですよ!バンリさん、もしかして・・・魂を半分く
らい何処かに封印されてたりしませんか?」
「・・・・・・ええ、まあ、そうなんすよね!あたしが一人暮らしをしたいって言ったら反対されて、
それでも引き下がらなかったら、『だったら魂を半分置いてけ』って言われて、それで半分は
今、実家にあるんすよ!」
バンリは不自然な笑顔を浮かべながら打ち明けた。あんまり実家の事は口に出したくないと
思っていたのだが、上手く隠すのは無理だろうから仕方が無かった。
「へえ~、成程・・・それが原因ではないでしょうか。身体と魂は密接な関係にありますから、ど
ちらが欠けてしまっても成長に支障をきたすと思いますよ?」
「・・・・・・やっぱり、そうなんすかね?」
バンリは薄々気が付いていた。だが、残りの魂を取り戻すとなると、どう足掻いても実家に
関わる事になってしまう。それが嫌で考えないようにしていたのだ。だが、最早それはただの
我侭に過ぎないのかもしれない。背に腹というやつか、でも・・・
「バンリさんにも色々と事情がおありでしょうから・・・私はこの辺りで失礼させて頂きますが、
今一度、考えてみてはどうでしょうか。それでは、おやすみなさいませ」
ガルは本来の魂の形に戻り、壁をすり抜けて帰って行った。
「うむ!『部位顕現』にも慣れてきたみたいじゃ!力まずとも出来るようになってきたのう!」
メルリアはコツを掴んだようで、身体の一部分だけを顕現させる技『部位顕現』と名付けら
れたそれをスムーズに出来るようになっていた。
「そうみたいですね。後は、顕現させる部位によって出来る事が違ってきますから、それぞれ
の部位を顕現させた時の動きを練習しないといけませんね」
「そうじゃな、何か・・・『技』を覚えてみたいのう。セイムやらのように・・・」
「『技』・・・私も欲しいと思います」
メルリアもワンコも未だに『技』というものを持っていない。二人共、例の一件で自分の力
不足を感じていた。
「『技』ですか・・・それにはまず、己の出来る事を増やし、磨いていく事でしょう。技はそうし
ている内に思いつくものです」
「そういうものなのかの?」
「思いつく・・・」
技に関して今は何も思い浮かばない。言われた通りに今はひたすらに特訓を続けるのがいい
だろう。
二人が特訓を続けている最中、
「ワンコさーん。お届け物ですよー」
ガルが小さな風呂敷を持って来る。そこには手紙も添えられていた。まずはそれを開いて読
んでみる。
【ワンコさんへ ワンコさんの能力に合う道具を作りました。この「ストリッジ・カラー」は
装着後、ワンコさんの意識と一体化して、ワンコさんの思い通りに機能するようになります。
機能は、ワンコさんの適応能力の強化・補助です。詳しい性能は実際に使用してみて下さい。
追伸 お友達も出来て、楽しく暮らしているようで安心しました。最初は、戦う事を止めた
いと、怪我をして欲しくないと思っていました。ですが、ワンコさんにも共に戦う仲間が居て、
ワンコさんがその方たちと戦う事を望むのなら、私は全力でワンコさんを応援します!
グルより】
「母様・・・」
風呂敷の中から、機械の首輪が出てきた。ワンコはそれを取り付けてみる。
「・・・・・」
特に身体に変化は感じられない。良く言えば違和感が無いと言える。やはり実際に試すしか
効果を知る方法はなさそうだ。
「ほう・・・!新しい装備とはいいのう!ワンコよ、何か変化はあるのかえ?」
「いえ、変化は感じられません。実践で発揮される道具のようです」
「むう、そうか・・・」
「そう言うメルリアさんの『部位顕現』も新しい装備のようでカッコイイと思います」
「そ、そうかの!?・・・ひひひ」
「そう言えば、ワンコさん、さっき母様?と呟いておられませんでしたか?ワンコさんは強化
獣人ですが、お母さんがいらっしゃるのですか?」
ガルが不思議そうに問い掛ける。
「はい。私は生まれた時、碌に話す事も歩く事も、何も出来なかったのですが、グル様が何か
ら何まで教えてくださったのです。ですから、私にとってはまさに『母』そのものなのです」
「そうだったのですか・・・その方はとてもお優しい方なのですね!」
ガルを見ていると、やはりグルの事を思い出す。ワンコは今まで聞いた事が無かった質問を
投げ掛けてみる。
「ガルさん、この手紙の差出人は『グル』と言う方なのですが、ご存知ありませんか?」
「グル・・・・・・」
ガルは首を傾げながら考え込む。
「すみません、聞いた事も無いです」
「そうですか・・・」
グルとガル。同じ毛並みの色をした狼であり、給仕者。本当に知らないのだろうか。赤の他
人なのだろうか・・・とてもそうは思えない。
「ワンコさん、これからどうします?首輪、試しに行きます?」
「・・・そうですね」
「何処に行くのじゃ?」
「水のある所がいいです」
「では、近くの川に行きましょうか」
この間の一件で、水中での動き方には慣れる事が出来た。この首輪を着けた状態なら、水中
でどういう動きが、どんな事が出来るようになるのだろうか。
ワンコは川に飛び込んだ。
「・・・・・・浅い」
川の水は膝にすら届かない程浅かった。
「もう少し深いほうが良かったですか?」
「もう少しと言うより・・・」
潜れる程の深さは欲しかった。ワンコが手で水に触れた時だった。
「これは・・・水の感触が違う・・・!」
「まあ、海の水と川の水は違うからのう」
「いえ、そういう事ではなく・・・」
説明するならば、手に吸い付く・・・水が持てる・・・水を操れる・・・上手く説明できないが、そん
な事が出来る気がする。
ワンコは右の手の平を川の流れをせき止めるように広げる。そして感覚を研ぎ澄まし、
「いま!」
川の流れに逆らい、右手を振り上げる!
すると、持ち上げ、振り上げられた水が弧の形を保ったまま水の上を流れに逆らって滑って
行った。
「おお!今のはなんじゃ!?」
「あれは、水の刃ですね」
「新しい感覚・・・!」
ワンコはその感覚に慣れようと繰り返す。水の刃が同じように川を遡って行く。
「この感覚・・・覚えました」
ふと、首輪が光を放っている事に気が付くが、その光は直ぐに止んでしまった。
ワンコは川から上がり、二人の元に戻った。
「ワンコよ、やったのう!水を操る事が出来たではないか!」
「はい。やりました」
「ワンコさん、それで、その首輪の詳しい効果は分かりましたか?」
「えっとですね・・・」
水を操れるようになったのはこの首輪のおかげだろうから、恐らくは
「自分が適応したものを操る事が出来るようになる・・・と言った感じでしょうか」
「なるほどのう・・・今は操れぬのか?」
今・・・水から離れた場所に居る今の状態で、と言うことだろうか。それは試そうとも思ってい
なかった。
「やってみます」
ワンコはさっきの感覚を思い出し、水を操ろうという意識を強く持つ。水を右手に集めるよ
うに集中する。
「水よ、集まれ・・・」
すると少しずつ、何処からか水が集まってくる。やがて、小さな水の球が出来上がった。
「出来ましたね!」
確かに出来たが、この程度では実践で使う事は出来そうに無い。集める速さと量を磨かなけ
れば。
「新しい目標が出来ました・・・!」
「うむ、ではこれで帰るとするかのう」
新たな手応えと目標を手に入れ、ワンコは改めて感謝した。
(母様・・・ありがとうございます!)
「所長ー、お手紙届いてますよ」
首輪を送ってから数日後、グルの元に一通の手紙が届いた。
「誰からですか?」
「ワンコっすよ。首輪のお礼じゃないっすか?ワンコも律儀っすよねー」
確かにワンコからだった。字がまた上達しているのが見て取れる。グルは封を解き、手紙を
開いて読み始めた。そして直ぐに、グルは驚きの声を上げた。
「え!?」
「所長?何かあったんすか?」
グルは見間違いではないかと手紙を読み返している。しばらくして、はっと顔を上げたグル
は走って何処かに行ってしまった。
「所長・・・これは何やら良くない事になりそうっすかね?」
モリトも嫌な予感を察知し、後を追う。
グルはラグラの所に居た。
「ラグラ様!この手紙を読んでみて下さい!」
「あ?」
ラグラは面倒くさそうに手紙を受け取り、目を通す。
「これは・・・はぁ~・・・・・・」
ラグラは大きな溜め息を漏らした。
「どうですかラグラ様!ガルが、ガルが・・・うっ・・・ガルが生きてたんですよぉ・・・それに、給仕
者にもなって・・・!」
グルは感激の余り涙を流し始めてしまった。
(面倒な事になったなこれは・・・)
ワンコの預け先をハイラント邸にした時点でこうなる可能性がある事は予想していた。どう
せいつまでも隠してはおけないし、いつかは真実を伝えなければならない時が来るとは思って
はいたが・・・泣かれてしまっては真実も伝え辛い。本当に面倒な事になった。それでも伝えなけ
ればならない。
「グル、話を聞け」
「ラグラ・・・様?」
グルは涙を拭う。
「ふう・・・グル、ガルは確かに居る」
「やっぱり・・・!」
「まだ話は終わってないぞ」
ラグラは意を決する。
「ガルは・・・グル、お前の事を覚えていない」
「え?」
「第三次象徴大戦が終わった後に起こった、あの列車事故。ガルはその事故の唯一の生存者だ」
「そ、それって・・・!?」
列車事故。父と母、そして妹のガルが育みの里で給仕者になるべく勉強していたグルの元に
遊びに来る際に起こったものだ。列車は脱線、大破炎上し、乗員乗客共に全員死亡したと伝え
られていた。
「ガルは生きていた。お前が家族の死を受け入れる事が出来ずにいた頃もずっとだ」
「どうして・・・どうして言ってくれなかった・・・ですか?」
「助け出された時には既に記憶を失っていたて、親族が何処にいて誰がそうなのか分からなか
った。それに、それ所では無かったんだ」
そこにエルビナがやって来る。
「負の象徴」
「エルビナか」
「負の象徴は倒され、封印された。でも、その残滓が機械にまだ残っていた。列車事故もそれ
が原因。それによって全ての残滓を祓う事が最優先された」
「・・・・・・そういう事・・・でしたか」
グルはどうやら少し落ち着いたようだ。
「いいです。ガルが、生きているのなら・・・・・・それでその・・・」
「駄目だ」
何かを言おうとしたグルを、言う前に却下した。
「ラグラ様!どうしてですか!?」
「さっきも言ったが、ガルはお前の事も、家族の事も、事故の事だって忘れている。もしお前
と会うことで、あの凄惨な事故の事を思い出してしまったらどうする!」
「!・・・それは・・・」
「今、ガルは幸せにしている。余計な事はせず、遠くから見守っている方がいい」
ラグラの言っている事はもっともだ。だが、ガルに会いたい気持ちはそんな簡単に諦められ
るものではない。
その夜。皆が寝静まった頃を見計らい、グルは人知れず研究棟を出で行った。
「グルのやつ・・・我慢しろと言う方が無理か・・・はあ、どうなる事か・・・」
ラグラは心底面倒くさそうに溜め息を吐いた。




