来訪者
予想していた通り、会ってしまった。研究開発棟から出ようと廊下を歩いている途中だった。
「え?・・・わ、ワンコ・・・さん・・・?」
顔を見るや、そう呟きいて時間が止まったかのように動かない。
「はい。事情の重なりにより、今に至ります」
ワンコ本人だと理解した一班の所長グルは顔を赤くした。怒っているのではない。泣いてい
る訳でもない。恥ずかしいのだ。つい昨日、あれほど心苦しく別れたと言うのに、今日のこれ
である。昨日のは何だったのだろうかと思うと、無性に恥ずかしくなってしまう。
「えーと、その・・・・・・」
何を話せばいいのか、言葉が出てこなし、考える事すらも出来ていない状態だ。
「母様。私はチームに入りました。そこで、この方たちと共に世界や人々と触れ合っていこう
と思います」
「ワンコ・・・」
「今は、お土産話の持ち合わせが無いので、また今度、たくさんお話させて下さい」
ワンコは深々と頭を下げると、仲間たちと共に研究室を出て行った。とうとう、グルはそれ
を見送る事しか出来なかった。
直ぐに会えてしまった事に驚いて言葉を失い、頑張っている娘同然のワンコに気の利く言葉
の一つも掛けてやれなくて、心底情けないと、グルは肩を落とした。だが、早速仲間が出来て
いた事が何よりも嬉しく、肩を落としながらも、その表情はにこやかだった。
「はあ・・・人生って・・・一日でこんなに変わるものなのね・・・」
研究開発棟から出て空を見上げるゲラーハイトが、清々しい面持ちで呟いた。つい今朝まで
は思い悩み、いっその事許可を得られないなら隠れてやってしまえばいいとさえ思っていた程、
切羽詰っていたのに。
「ゲラーハイトさん。依頼はどうしましょうか?」
「そっか、確か依頼内容って『説得の手伝い』だったっけ?」
メイエルは依頼内容を確認する。
「達成でオーケー!」
「え、でも、誰も説得できて無いけど」
「大して手伝っても無いしね!」
「いいのいいの!『説得の手伝い』って書いてあるだけで、成否の事は書いてないでしょ?」
確かに。いや、でも、その手伝いすらしてないのだが。
「何?不満そうだけど。じゃあ、こうしない?あなたたちは依頼者であるこの『私』を、依頼
を受ける事で、言葉無くして説得して今のこの状況に導いた、って事で」
「うーん・・・何だか苦しい気もするが、まあ、依頼者本人がいいって言ってるわけだし・・・」
「依頼、たっせーい!」
セイムが高らかに宣言したのを合図に、ゲラーハイトは依頼書にサインをする。
「ゲラーさんはこれからどうするんですか?世界を見て回るんですよね?」
「ええ、その事なんだけど・・・一人で気の向くまま旅をしようと思うの」
「そうですか」
「うん。本当にありがとう、私の依頼を受けてくれて。おかげで人生が変わったわ!」
ゲラーハイトとチーム「スパイラル」のリーダーであるカイエルはがっちりと握手した。そ
して今度は、ハワーの所に歩み寄ってくる。
「あなたも、素直な意見を聴かせてくれてありがとね。またいつか、私が発明できた時は、あ
なたの意見を聴かせてくれる?」
「そう・・・ハワーね。ハワー、お願いできる?」
「まかせて!」
ゲラーハイトに頭を撫でられ、ハワーも嬉しそうだ。
「ポンさん、この度は申し訳ありませんでした!」
「い、いえ・・・私も・・・かなり酷い事を言ってしまいましたし・・・こちらこそ、ごめんなさい・・・」
「そんな事気にしないで下さい!あの時の私は、自分の事しか考えていませんでしたし・・・あの
言葉は、またいつか迷ったり悩んだりした時に、喝を入れてくれる言葉として、心に刻ませて
もらいます!」
ポンは照れくさそうに握手を交わした。
「さて、皆さん。私の依頼の方も、現時点で達成とさせて頂きますね」
「え?いいんですか?」
「はい、もちろんです。採掘の手伝いも、運搬もすでに終わっていますからね。それに、もう
大分陽が傾いてきてますし」
ポンは依頼書にサインをする。依頼書に書かれたサインを見たバンリが宣言する。
「初めての依頼・・・達成だぜ!」
初めての依頼を、少しばかり手こずる事になりながらも達成したチーム「ハイラント」は、
先輩チーム「スパイラル」と共に、達成の報告をするべく、冥界の大社へ向かう。
不安は無いのかと聞かれれば、不安しか無いと答えるのが正しいだろう。特に、誇り高い種
族である竜族を纏めるとなると、本当に自分でいいのかと頭を抱えずにはいられない。でも、
竜族は血筋による上下関係をまず裏切る事はないので、一応は付いてきてくれはするだろうが。
それにしたって自分は若輩者であり、永い年月を生きる竜族からしてみれば、自分は大人とい
う扱いこそされど、まだまだ赤子程度の人生しか経験していないと言える。
そんな長女メアトリスに、纏め役の話を持ってきたのは他でも無い、母メサイアだった。元
々母も纏め役ではあったが、竜族の中にも幾つかの部族があり、その内の一つを纏めているに
過ぎなかった。それでも、メサイアは七人居る魔王グリム直属の配下の一人であり、グリムか
ら特別な力も与えられている事もあり、実質竜族で一番偉い者として認識されている。此度、
その娘であるメアトリスに任されるのは、それら全ての部族を纏める『竜王』と呼ばれる役で
ある。
「母上、やはり何の実績も無い私に『竜王』の役は大き過ぎます!他に適任の者が必ずいるは
ずです!」
「そんな事はないぞ、メル。これは部族長会議で決められた事なのだ。上の者はお前が成る事
に賛成している」
「それにしたって・・・せめて、今直ぐでなくて、ある程度の経験や実績を積む期間を・・・」
メサイアは首を横に振る。
「実際に役をこなしながら積めばよい。では、これから代表者会議に行ってくる」
そのまま部屋を出て行ってしまった。
私一人が反対した所で、どうにもならない事は初めから分かっていた。部族長会議で決めら
れてしまっている以上、それを曲げるのは不可能と言っていい。
「覚悟を決めないと・・・かあ・・・」
妹のメルリアの事がとても羨ましく思えてくる。次第に妹の様に怠けたいと思う心が強くな
ってくるが、両手で頬を叩いて気合を入れなおす。
すっかり陽も沈み、天井に規則的に吊り下げられている灯篭に火が灯され、柔らかな明かり
に照らされた大社の廊下を歩いていると、早速「竜王様」と呼び掛けてくる者たちいる。精一
杯の苦笑いで返してやり過ごすが、
「はあ~・・・」
これは、早い所慣れてしまわないとやってられなくなりそうだ。
クエストカウンターの閉店時間が来た事を知らせるために訪れると、そこに駆け込む様に二
つのチームがやって来た。
「た、達成報告お願いします!」
すっかり人も居なくなり、昼間では考えられないほど静かになっているクエストカウンター
に、まるで取り残されているかのようにぽつんと立っている受付が、いつもと変わらない笑顔
で応対する。
「姉上、こんばんわなのじゃ」
「依頼、達成できたのね」
「うむ。中々楽しい依頼じゃったぞ?やはりお外は楽しいのう!」
生き生きして楽しそうなメルリアを目の当たりにして、ますます羨ましさが大きくなる。
「はい確かに、サインを確認できましたので、依頼達成とさせて頂きます!お疲れ様でした!」
「おお・・・これでようやく達成か・・・あたしにも出来たんだな・・・人の役に立てたんだよな・・・!」
ぐうう~。
依頼達成の喜びに浸っていると、何処からか気の抜けるような音が聞こえてきた。
「お、お、お・・・おなかすいたよー!」
腹の虫だった。何だか色々あって忘れていたが、今日は朝御飯を食べただけで、もう陽が沈
んでいるというのにそれ以来何も食べていなかった。一人の腹の虫に釣られて、他の虫たちも
輪唱した。
「なかまなかま!」
「へへ・・・じゃのう、早く帰ろうぞ」
「ねえねえ」
チーム「ハイラント」が帰ろうとした所をセイムに呼び止められる。
「今度、一緒の依頼受けてみない?」
「一緒の依頼・・・私たちとあなた方、二つのチームで協力して一つの依頼の達成を目指す・・・と
いう事でしょうか?」
「うん!どうかな?」
ハワーもメルリアもワンコもバンリの方を見る。ああ、リーダーだからか。
「いいっすよ?楽しそうですし。な!」
「だよね!」
「うむ」
「お邪魔でなければ」
特に考える事もしなかったが、満場一致ですんなり決まった。
「いつにする?」
「夏休みも残り少ないので、出来れば早い方が」
「そっか・・・じゃあ、明日!」
「早過ぎないか?俺たちはいいが、お前たちは今日が初めての依頼だったんだろ?疲れてるん
じゃないか?というかセイムお前、今はあれが無いんだろ?明日とか絶対無理だろ」
「あ、そっか。そうだったね。えへへ・・・」
言われて気が付いたが、ワンコは昨日ハイラント邸にやってきたばかりでチームに入り、今
日は夜まで依頼をこなしている。
「そうですね・・・二、三日くらい休んでからがいかもしれないっすね」
「そうか・・・よし!じゃあ三日後の朝にしようか!」
「それでお願いします」
「そういう事だ、セイム。いいな?」
セイムは三日は長いと少しばかり駄々をこねたが、聞き入れられることは無く、そのまま皆
に宥められながら、二つのチームは退出していった。
取り残されたメアトリスは、本来の予定通り受付役に閉店を告げて戻った。
「はあ・・・」
本当に楽しそうだった。自分の思うように、自由に動き回れるメルリアを思い出すと溜め息
が出た。自分はこんなにも不安で一杯なのに。
「その憂さ、晴らしてみない?」
自分の部屋、自分以外誰も居ないはずのこの部屋に、突然何者かの声が聞こえてくる。
「だれ!?」
明かりは灯篭一つの部屋とはいえ、広い部屋でもないため、部屋を照らすのには十分であっ
た。だが、肝心の声の主の姿が見えない。隠れるにしても、適した物陰も無く、あるのは隙間
と呼ぶべき程度の狭い空間しかない。気のせいだったのかもしれないと思い、油断したその一
瞬だった。
「ぐうっ!」
天井や壁、床や家具からも鎖が伸び、メアトリスを拘束した。
「鎖・・・でも、これは・・・」
いつの間にか張られていた魔法陣から出現したその鎖は真っ黒だった。禍々しく感じるオー
ラを放っているそれは、見た事の無い物だった。魔王グリムが鎖を扱う事は知っている。だが
これは、色も気質もまるで違う。
「こんな・・・もので・・・」
力と魔力を込め、鎖を引き千切ろうとするも、どういうわけか力が入りきらない。それどこ
ろか、次第に力が抜けて行く。メアトリスが膝を突いた時、声の主が遂に姿を現した。
まず目に飛び込んできたのは、見た事の無い、緑の毛並みをした狐種の女性だった。
「初めまして、竜王様。突然の御無礼、失礼いたしました」
そう言うと、メアトリスを拘束していた鎖は跡形も無く消え去る。だが、奪われた身体中の
力は直ぐには戻らず、壁伝いにようやく立ち上がることが出来た。
「あなたは・・・何者・・・?」
その質問には答えず、肩に乗っている非常に小さな、こちらも初めて見る紫の毛並みを持つ
狐を指で弄んでいる。
「・・・私に何の用なの?」
「お誘いです」
今度はすんなりと答えた。
「どういうことかしら?」
「貴方様に、経験を積んで頂く場を御用意出来ます」
この狐、こちらの事をよく知っている様だ。だが、経験を積む場とは、どういうことなのだ
ろうか?そもそも、信用していいものなのだろうか?目的がまるで見えない。
「まあ、いきなりではお答えも出ないでしょう。また後日、伺わせて頂きますので、今宵はこ
のくらいに・・・では」
「待ちなさい!」
帰ろうとする女性を引き止める。
「何か?」
「詳しい話を・・・お聞かせ願えますか?」
その言葉に狐は不敵な笑みを浮かべる。
「はい、勿論。では、場所を変えますので・・・少々失礼をば・・・」
おもむろにメアトリスの手を掴むと、足元に魔法陣を展開させて・・・転移した。
転移した所は室内の様だった。天井は高く、非常に広々とした空間だった。広さの割りに物
が圧倒的に少なく、殺風景だ。生活空間と言うよりは、何かしらの訓練やら催しをするに適し
ていると言える。
そこに一人、待ち受けている人物が居た。紛れも無い、魔王グリムだった。
「魔王様・・・!」
「メアトリス・・・だったかしら?おめでとう、『竜王』の役に担ぎ上げられたんですってね」
随分な言い方をされているが、実際その通りであったため、否定する事ができなかった。
「昔に比べれば、随分と柔らかくはなってきたと思ってたんだけど、竜種は竜種ね。未だに種
の纏まりを気にしているなんてね。若い者からしてみれば、迷惑よね?」
「そ、それは・・・」
「それで、あなたはどうしたいの?その役」
「どうにかして頂けるのですか!?」
迷惑かと聞かれて言い難そうにしていたのに、どうにかしてくれるのかと思ったら、期待を
露にしてしまう。そんな分かりやすいメアトリスの心を読み取ったグリムに笑われてしまう。
「ふふふ・・・いやいや、直接止めさせようだなんて事はしないわよ」
「そう、ですか・・・」
少し残念。
「大体、余所者である私が他種の在り方に口出しする気は無いわ。でも、あなたがどうしても
って言うのなら・・・お話くらいはしてもいいけどね?」
もし、このままグリムに頼んでしまえば、もしかしたら本当にこの「竜王」の役を無くして
もらえたりするかもしれない。そうなれば、自分も自由になる事ができるかもしれない。何と
も魅力的で、その言葉に甘えてしまいたい気分になる。その一方で、やはりこのまま止めてし
まっていいのだろうかと思う自分も居る。何せ、竜王の役になってから、何一つそれらしい事
をやろうともしていないからだ。
「あの・・・そういえば先程、あちらの方が場の用意がどうと言っていたのですが、その辺りのお
話をお聞かせ願いませんか?」
「あら?真面目なのね。流石は『竜王』を任されるだけはあるわね。いいわ、話してあげる」
その話を聞き終えた時の素直な気持ちは、そんな大それた事が本当に出来るのだろうか、し
てもいいのだろうかという気持ちだった。そもそも、こんな話を竜種の皆に話したところで、
付いてきてくれる者がいるのかという不安もあった。だが、それでも経験を積む場である事は
間違いなかったし、もしもこの話を伝えて、誰も付いてこなければ堂々とこの「竜王」という
役は自分には向いていないと言う事ができる。
「そのお話、是非とも実行に移したく存じます!」
「ええ、失敗を恐れず、思い切りやってみなさい」
「はい!魔王様!」
パンパンとグリムが手を鳴らすと、緑の毛並みの狐種の女性が歩み寄ってくる。
「この子を傍にお付け下さい」
その女性は自分の肩に乗っている、紫の毛並みの小さな狐を差し出してくる。
「名前はスターシャです。この子に頼めば、グリム様とこの子を通じて会話をする事も出来ま
すし、頭の良い子ですから、話し相手にもなってくれますよ」
その小狐はメアトリスを恐れる様子も無く、すんなりと肩の上に乗り、よろしくとでも言っ
ているのだろうか、頬ずりをしてきた。細やかな毛並みが柔らかくてくすぐったい。
「ふふっ!よろしくお願いしますね、スターシャさん」
「では、自室にお送り致しますね」
帰りも同様に転移の魔法陣によって直接メアトリスの部屋へ送られた。
何だかあっという間の出来事で、夢だったのではと疑いを持ってしまう。だが、自分の肩の
上でくつろいでいる紫の小狐スターシャを見ると、現実であったのだと納得できた。
話をするには、今日はもう遅い。メアトリスは眠る事にした。
「グリム様、メアトリス様をお送りしてきました」
「ええ。それじゃあ、あなたももうそろそろ・・・ね」
グリムは目配せする。
「はい。それでは、チーム『スパイラル』に接触開始します」
緑の狐は一礼すると魔法陣を展開し、転移した。
思っていた通り、翌日のセイムの寝起きは最悪だった。内臓を直接掴まれているかの様に苦
しく、息をするのも辛い。
「あ~~~・・・」
目覚めはしたものの、身体を起こすのも辛く、声を出すくらいしか出来ない。それでも、気
合で身体を起こし、自室をでる。
壁を伝いながら、一歩、また一歩とゆっくり歩を進める。
「セイム、大丈夫か?」
後ろから話しかけてきたのは父親だった。
「首輪が届くまで寝てればいいのに・・・無理すんな」
「お~て~あ~ら~い~」
声と言うより、唸り声の抑揚で意思を伝える。そしてそれは何の問題も無く伝わった。
「わかったよ、とりあえず連れてってやるから、終わった後もしばらくお手洗いで待ってろ。
直に首輪が届くからな」
こくりと頷くと、父親はセイムを抱えてお手洗いへ向かう。
コンコンコン。
「おはようございまーす!お届け物でーす!」
元気な見知った声が聞こえてくる。手の離せない二人に代わって母親が対応する。
「ファルセイド君、いつもありがとう!」
「いやいや、もっと早く来てやりたいと思ってたんだがなあ・・・ま、今はそんな事より早く取り
付けてやんな」
「うん」
そう言うと、首輪を受け取り、お手洗いの中で早速首輪を取り付ける。大部分が金属で出来
たその首輪は、ひんやりとしいて、取り付ける瞬間だけはどうも苦手だ。
だが、一度取り付けてしまえば効果バツグン。さっきまでの体調の悪さがあっという間に治
まって行く。快感である。
「あ~生き返る~・・・」
この首輪には身体の魔力を抑えて整える効果がある。セイムは、生まれながらにして非常に
大きな魔力を有しており、その強すぎる魔力はまだ身体ができておらず、器も成長しきってい
ない者にとっては毒であり、魔力によって内臓が圧迫されて人並みに動く事すらままならなく
なってしまう。
一応、セイムは大人ではあるのだが、持ち前の魔力に比べて器の方が育ちきっておらず、首
輪が無くては直ぐに身体を悪くしてしまうのだ。それがつい先日の訓練中に壊してしまったた
め、一日だけ首輪無しで生活してみたのだが、さっきの有様である。
「ファルセイド、ありがとう助かった」
「いいんだよ、アゼル。長い付き合いじゃないか」
ファルセイドは肩を寄せる。
「ファルセイド君、朝御飯はもう食べた?よかったら食べていって」
「お、いいのか?じゃあ頂くぜ」
まるで最初からその言葉を待っていたかのように、微塵も断ろうと言う素振りを見せなかっ
た。そんな運び屋ファルセイドを加えた四人で朝食を摂っている所に来客が現れる。
「こんな朝早くに誰だ?」
父アゼルが扉を開けた先に立っていたのは、緑の毛並みを持つ狐種の女性だった。見覚えの
無い女性にアゼルが戸惑い、誰かと問おうとした直後、ライムが大声を上げる。
「あー!あれあれ?もしかして・・・カリナさん!?」
「はい。お久しぶりです、ライム様」
二人は抱き合って再会を喜ぶ。
「知り合いだったのか」
「うん!私のお姉ちゃんのお弟子さんだよ」
「へえー、あの魔王様、弟子なんてとってたのか」
正直似合わないと思った。面倒くさがりだし。
「どうぞ、中に入って」
「では、お言葉に甘えて・・・」
結局、五人での朝食となり、朝から賑わしくなったものの、これはこれで新鮮で楽しかった。
朝食を終えたセイムは、腹ごなしの訓練を始めようと、玄関先で準備運動をしていた。
「セイムさん、でしたよね」
「えっと・・・確か・・・」
「カリナです」
「そう!それ!カリナちゃん!」
名前を覚えていなかった事に悪びれる様子は無い。
「セイムさんは、チームに入ってらっしゃるのですか?」
「うん、そうだよ?」
「でしたら今度、同行させて頂いても宜しいでしょうか?」
「ん?同行?興味でもあるの?」
カリナは笑顔のまま静かに頷く。その様子に少しばかり引っかかりの様なものを感じたが、
断る理由も無かったので
「いいよ?」
「ありがとうございます」
他のメンバーに相談をする事無く了承した。




