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黒翼のカナエル  作者: 氷花
不死と希望の悪魔編
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その日、その時

う 何日か振りにお腹一杯食べた気がする。やっぱり美味しいものを美味しく食べる事ができる

と言うのは幸せな事だと改めて思った。あのヒュードと言う女に中てられた毒のもいつの間に

かすっかり抜けていて、後遺症も無い。

「あ!そう言えば今日じゃなかったか!?戦うの!!」

「そうですね。お昼過ぎからの予定です」

「相手、どんなやつかなぁ~」

「さあ、それは分かりませんが。それよりもお嬢様、学校へ行く準備は済んでいらっしゃいま

すか?」

「あ?がっこ・・・・・・学校!?忘れてた!!おれ元気だ!!」

 ここの所ずっと休んでて学校の事を忘れかけていた。体調が悪かったから休んでいたんだか

ら、治ったら行かないと!

「でも!う、うう~・・・・・・ベリコの事もしんぱいだしなぁ~・・・もう一日くらいなら・・・」

 チラッとベリコを見る。

「お嬢様。あまり学校を休んでばかりでは、勉強についていけなくなってしまいますよ?それ

に・・・もしかしたら、皆さん、お嬢様の事を忘れてしまわれるかも・・・・・・」

 こちらもチラッ。

「そ、それはやだ!!う~~~!!くそっ!!」

 フェローリアは呻り声を上げながら部屋へ戻り、準備を済ませると、

「行ってきます!!」

 歯を食いしばりながら勢いよく家を飛び出して行った。

「はい。行ってらっしゃいませ!」


 ベリコが戦うのはお昼を過ぎてからだと言っていた。ということは、今日の授業が終わって

から急いで帰れば間に合うかも知れない。その相手がどんな戦い方をする奴なのかにも因るか。

魔王が連れてくる奴な訳だし、一筋縄では行かない相手なのは間違いないだろう。それに、ベ

リコも今日の戦いを楽しみにしてるし、直ぐに終わってしまう事はないんじゃないだろうか?

ベリコは勝つだろうか?今までならベリコが負ける姿なんて想像もできなったが、今朝方の事

もある・・・・・・

 そんなことを悶々と考えていたら、いつの間にか学校に着いていた。

(まあいい、今は授業に集中しないとな)

 気合を入れ直し、教室のドアを開けた。

「え!?」

「だ、誰だ・・・?」

 教室に入ると、こっちを見た人たちが次々に驚きの声を上げた。

「な、何だ!?ま、まさか・・・本当にわすれられちまったってのか!?」

 あれは半分くらい冗談で言ってるもんだと思ってたのに!一気に不安が湧き上がってきた。

「その声・・・まさか、フェロちゃん!?」

「ええ!?お前、フェロなのか!?」

「そうだよ!!ちょっと休んでたくらいでわすれんなよ!!」

「いや、でも、だってさ・・・!」

「すげえかっこうになってるからわかんないって!」

「あ?かっこう?・・・はっ!そうだった!忘れてたー!!

 姿がものすごい変わってるんだった!そりゃあ一目見ただけじゃあ分かんないわ。

「こほん・・・。これが、おれの、不死鳥の本当の姿だ!」

「へー!!す、すごい!!はじめてみたよ!きれいだね!」

「ああ、そうだな・・・!」

 フェローリア本人だと分かると、今度は打って変わって人だかりができた。

 どうやらこの姿は人目を惹き付けるらしく、廊下ですれ違う人よく知らないたちも振り向き、

感嘆の声を漏らす人も少なくない。

 今日一日は本当に疲れた。休み時間になるたびに人が集まってきて、触ってもいいかとか、

こうなるときどんな感覚だったかとか、質問や要望に応えてばかりいたから仕方が無い。

 授業が終わり、放課後になってもまだ人だかりができる勢いであったが、今日はもう疲れて

たし、明日また話そうと伝えると、みんな快く理解を示してくれた。

(つかれたけど・・・やっぱ、学校っていいとこだな・・・)

 そう微笑んでいると、

「フェローリアちゃん」

 話し掛けてきたのは、小さな身体に長い耳が特徴的なミーニだった。傍らには天使と狸の姿

もある。

「よお、何だ?」

「お、ほんとだ!ちょっと見ない間に派手になったなあ~!」

「ラキエルさんたちのところにもうわさ、広まってるみたいだよ」

「よその学年にもか!?」

「はい。絶滅危惧種の不死鳥本来の姿を見られるとあって、かなり皆さん騒いでおられました」

 むう・・・。忘れられていなくてよかったと思ったが、逆に目立ちすぎるのも考え物だ。考えた

くは無いが、目立ちすぎる事によって、また血肉を狙う者たちが増える事も考えられる。

(あまり目立たなくする方法、考えないとな・・・。ベリコにもいっしょに考えてもらうかな)

 ん?フェローリアはふと立ち止まった。何か、とても重大な事を忘れている気がする・・・・・・

「あ・・・ああーーー!!」

「な、何だ!どうした!?」

「そうだった!!忘れてたーーー!!」

 集まってくる皆の対応とか色々と追われててすっかり抜け落ちてた!!

「まずい!急いで帰らねえと!!」

 フェローリアは走り出す。

「え・・・ま、まって!」

 ミーニはフェローリアが焦り、駆け出していく様を見て何か事件でも起こっているのかと心

配になり、後を追うように駆け出した。

「行きましょう!私たちも!」

「あたしもか!?でも、ハワーが来るの待ってないと・・・って!ちょっ!」

 同じく何か早急に対応しなければならない用件があるのではと感じ取ったラキエルはバンリ

の手を掴み、半ば強引に引き、それを追った。


 フェローリアたちがベリコたちが戦っているだろう場所へ向かっている途中だった。

「な・・・なんだあれは・・・!?」

 そこに突然、真っ黒なもやの様なものが立ち昇ったと思うと、それは形を成し、雲に達する

巨大な体躯を持つ黒い毛並みの獣の姿となった。

「おお・・・かみ・・・!?」

「とにかく急がねぇと!!」

 急ぎ、更に距離を詰めて行く。巨大な狼に近付くに連れてひしひしと伝わってくる、巨大な

狼の膨大な魔力。

 その狼は巨体に似合わない速さで動き、戦っているのだろうか?狼自身の巨体に隠されて、

その狼が何をしているのか確認することができない。と、突然狼がフェローリアたちの方へと

向きを変えた。

「見つかったか!?」

「いえ、違うようです!後ろを気にしています!」

「ねえ、あれ!口のところ、だれかいない!?」

「あ、あれは・・・ベリコ・・・?」

 その巨大な狼の口元、牙の先にベリコらしい格好をした人物が力無く引っ掛かっている様子

が見て取れた。

 すると次の瞬間、巨大な狼はその爪で空間を切り裂くと、あろう事かその中へと消えて行っ

てしまったのだ。

「ま、待てーーー!!」

 巨大な狼の作ったその空間は急激に小さくなっていっている。

「くっ!間に合わねえ!!」

「まかせて!!フェローリアちゃん!」

 ミーニはフェローリアの脇を抱える。

「私たちも行きます!」

「あ、ああ!?くそ!しゃあねえ!!」

 ラキエルとバンリもミーニの身体に触れる。そして、

「タイム・カット!!」

 一瞬で裂け目の目の前まで移動し、そのまま四人はその中へ、先の見えない、何があるかも

分からない世界へと飛び込んで行った。

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