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黒翼のカナエル  作者: 氷花
不死と希望の悪魔編
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125/240

記憶

「ねえ、あなたは一人が好きなの?」

 突然話し掛けられて、表情には出ずとも内心は物凄くびっくりしていた覚えがある。

 人と話をするのが嫌いと言う訳ではない。ただ、何を話したらいいのか分からなくて、それ

が恥ずかしくて、恐くて、一人でいるほうが気楽だっただけだ。こういう時、どう答えたらい

いのだろうかと悩み困っていると、話しかけてきたその女は更に近寄ってきた。

「ごめん!急に話し掛けちゃって。同じ七魔になったんだし、仲良くしたいなって思っててさ」

 そうあっけらかんと笑顔を見せる女。そうだった。その人も美しい翼と尾羽を持っていた。

結局、その人と話したのはそれが最初で最後だったか。そうだ。

「種は違うけど、同じ七魔で仲間だね!」

 そう眩しい笑顔を向けてくれた人。そうだ。

「私はね・・・・・・って言うの!よろしく!ヒュードちゃん!」

 覚えている。その人の名は・・・・・・


「フェルミア・・・・・・」

 その女ヒュードは新たなフェローリアの姿に、思わず呟いた。

「ん?誰だ、それは」

「不死鳥フェローリア」

「何だ」

「・・・交渉しよう」

「交渉だと?いまさらそんなことを・・・」

「こちらからの要求は一つだ。ベリコ。クリークたちに掛けた呪いの類のものを解いて欲しい。

それさえ叶えば、フェローリア。余は汝の命を二度と狙わぬと誓おう」

「な・・・!ほ、本当・・・なのか・・・?」

 態度が一変した。これを信じてもいいものだろうか?

「なぜだ・・・なぜいきなりそんな事をいいやがる・・・!」

「・・・それがそもそもの目的だからだ。フェローリア。余は元々、クリークからそのベリコを倒

し、術を解くよう依頼されたに過ぎない。汝を連れて帰ろうと試みたのは物のついで程度だ」

「術・・・どういうことだ?」

 フェローリアはクリークを倒したことを知らなかったため、首を傾げる。

「ベリコ?あいつの話って、あってるのか?」

「はい。少し前に私が倒して、報いを与えておきました」

「知らない間に戦ってたのかよ!」

「すみません。ですが・・・分かりました。その交渉、受けましょう。あの方たちに掛けた報いは

解いておきます」

「・・・・・・ならば、余は立ち去ろう。・・・フェローリア。ベリコ」

「何だ?」

 ヒュードは何か言いたそうに見えたが、結局は何も言わないまま立ち去っていってしまった。

「何だったんだあいつ・・・よくわかんねえな・・・。それにしても・・・・・・」

 フェローリアはヒュードが徐に口にした名前のような言葉が妙に気になっていた。

「お嬢様?何かお考えですか?」

「あ、ああ・・・・・・なあ、フェルミアって・・・何だか分かるか?」

「気になりますか?」

「知ってるのか!?」

「はい・・・・・・フェルミア。それは、お嬢様の、本当の母親の名前です」

「・・・・・・そうか・・・・・・」

 何となく、本当に何となくだが、そんな気はしていた。自分のフェローリアと言う名前とよ

く似ているし・・・。

「フェルミア・・・そっか・・・・・・それが、おれの二人目の母親の名前か!」

「お、お嬢様!?お嬢様を直接お産みになられたのはフェルミア様ですよ!?フェルミア様こ

そ本物の母親なのですよ!?」

「知らん!!おれの入った卵を産んでくれたのにはかんしゃしてるが、その卵をかえしてくれ

て、ここまで育ててくれたのはベリコだ!だれが何と言おうと、真実がそうだったとしても!

おれの一番はベリコなんだよ!!」

「・・・お嬢様・・・!」

 と、何とも情けなくて、力の抜けるような音が鳴り響く。

「は、はら減った・・・・・・最近ろくに食べてなかったしなぁ・・・。帰るぞ、ベリコ!」

「・・・はい!直ぐに御用意致しますね!」

 空はすっかり青くなり、太陽の光を全身に浴び交わる二つの影は、仲良く家へ帰って行った。


「クリーク」

 ヒュードは再びクリークのいる洞窟を訪れていた。どうやら確かにクリークたちを苦しめて

いた術は解かれているようで、もう苦しみ呻く者はいない。

「ヒュードか。あの『悪魔』を倒してくれたか」

 ヒュードは首を横に振る。

「倒していない?・・・まあよい。解いてくれただけで十分だ。感謝する」

 あの苦しみから解放されたというだけで全快した訳ではない。その時のダメージは未だ残っ

ている。しかし、幸いここにはそれを癒すことのできる鉱石が多数配置されているため、傷が

癒えるまでにはそう掛からないだろう。

「癒えれば再び不死鳥を狙うか。クリーク」

「当然だ。我の寿命は近い。座して死ぬも、戦死するも同じ。ならば死するその時まで『不死』

を求め戦うのみだ」

「・・・・・・」

「ヒュード、貴様も我に協力せぬか?手に入れられたなら、その血肉を分けてやろうぞ」

「・・・断る。不死などに興味は無い」

 ヒュードは踵を返し、立ち去ろうとする。

「貴様自身が死に直面したとき、同じ事が言えるのか、よく考えるのだ」

 足は止まらない。

「我も貴様も同じ七魔。仲間ではないのか?」

 止まる。

「仲間を見捨てるのか、貴様は」

「・・・・・・」

 ヒュードはまた直ぐに歩き出し、立ち去った。

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