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黒翼のカナエル  作者: 氷花
不死と希望の悪魔編
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再会の五人姉妹

 三日目。身体の状態は日に日に悪化している。このまま行けば、翌日にはまともに動く事す

らままならなくなりそうだ。なので、

「おれ・・・帰ることにする」

 と、朝、ミーニたちが学校へ行く前に何とか伝える事ができた。

「でも、そんな身体だし・・・よくなるまででもここにいていいんだよ?」

「それはありがたいんだが、世話になりっぱなしだと思うとな・・・どうもおちつかなくて、ゆっ

くり休めねえんだ。わるいな」

「そっか・・・」

 ミーニは少し残念そうに耳を垂れるが、理解を示してくれた。

 一人で帰ろうと思っていたのだが、こんな身体だし、狙われている身でもあるため許される

はずもなく、自分を護るためにやってきていると言う強化獣人の二人、グレイスとムム。加え

て最初は主の側を離れるわけにはいかないと渋っていた屋敷に元々いた、こちらも強化獣人で

狐のフュクシンという女性の計三人を伴うこととなった。


 たった数日振りだと言うのに色々あったせいか、随分と久し振りに感じる我が家。何故だか

微妙に緊張していたが、振り払い、元気に玄関のドアを開け放った。

「ただいま!!」

 まず目に入ってきたのは知らない顔。丸みを帯びた耳に太い尻尾。狸の女の人のようだ。そ

の人はこちらに気が付くと後方を振り返り、声を上げた。

「ベリコちゃーん!帰ってきたみたいだよー!」

 その声に呼ばれるようにベリコが姿を現す。

「あら、お帰りなさいませ、お嬢様!」

「ああ!ただいま!ベリコ!」

 ベリコはいつもと変わりない笑顔で迎えてくれた。やっぱりこの笑顔を見ると安心する。

「と、皆さんも御一緒で・・・あら!まさか、フュクシンお姉様まで!?」

 ベリコが珍しく驚く表情を見せた。

「お久し振りですね、ベリコさん」

「はい!お久し振りに御座います!」

 ベリコは深々と頭を下げている。これ程ベリコが取り乱している姿は今まで見た事がない。

このフュクシンと言う女性は一体何者なのだろうか?

「この間、今度会うときは五人で会おうぜって言ったろ?」

「正確には、今度は五人で会おうぜ!だったと思うけど」

「細かいな!」

「ま、とにかくだ!折角の機会だし、駄弁ろうぜ!」


 あっちのお屋敷ではゆっくり休めないとまで言って帰ってきた訳だが、こっちはこっちでさ

っきのベリコのフュクシンと言う女性への態度が気になって結局のところ、五人の世間話を側

で横になりながら聴く事にした。

「こうして五人揃うのは何時振りだっけか?」

「ウン十年振りかしら」

「第三次象徴大戦が終わって、それからだよね」

「皆さん、色々と忙しくなりましたし、フュクシンお姉様が使いとなられてからは初めてにな

りますね」

「そう・・・でしたね」

 一人だけ、フュクシンは記憶がはっきりしていないのか、反応が鈍い。

「姉貴、やっぱあんまり覚えてないのか」

「すみません、あの頃の私は周りに対して興味が向いていなかったもので・・・」

「それは仕方がないよ」

「そうですよ。気にする事はありません」

「フュクシン姉さんのお陰で、私たちが生まれることができたものだしね」

 お陰でとは、どういうことなのだろう?

「どういうことだ?ってきいてもいいか?」

「いいですよ。お嬢様、フュクシンお姉様は一番最初に生み出された強化獣人なんですよ」

「初めて!?それってすごい人じゃないか!」

「そうだぞ?姉貴が前例となったお陰で、それ以降の強化獣人がより完璧になって生み出せる

ようになったんだからな!」

「完璧・・・?」

「ああ。姉貴は元々感情が無かったと言っていいくらいだったんだぜ」

「命令された事をただ忠実にこなす、それこそまるで機械のようだったわ」

「近付くだけでやられちゃいそうな感じがして恐かったなあ・・・」

「そうですか?私はとても格好良く思ってましたよ?」

「だが、そんな姉貴もヒイカとか言う男に出会い、すっかり調教されて・・・」

「さ、されてません!!」

 確かに、今のフュクシンと言う女性には普通の人と変わらない感情というものがあるようだ。

「なあ、みんなは何番目に生まれたんだ?」

「ふふん!訊いたな?なら教えてやる!何と!俺っちが二番なんだぜ!!」

「で、私が四番ね」

「私は六番だよ」

「私が九番になります」

「ベリコが一番妹なのか・・・」

 そんな感じはしない。散々お世話されてきたからだろうか?いや、そもそも姉妹とは言って

も血の繋がりは無い訳だし、不安定さで言ったら確かに一番妹っぽいかも?

「手の掛かる妹だよな!」

「グレイスお姉様に手を掛けて頂いた覚えはないのですが?」

「おま!?何てことを言・・・・・・すまん、やっぱ掛けた覚えないわ。で、でも心配はしてたし!」

「それも怪しいと思うけどねえ?」

「ムム、お前・・・!」

「あ!そうだった!」

 突然、狸の女ポンポコが大声を上げた。

「何だ!びっくりするだろ!?」

「ご、ごめん・・・でも、心配事は今でもあるの!」

「ポンポコさん、どう言う事ですか?」

「うん。実はベリコちゃん、グリムさんの挑戦を受けちゃったんだよお!」

「ち、挑戦って!まさかベリコお前、魔王と戦おうって訳じゃないだろうな!?」

「ち、違うの!相手は魔王様じゃなくって、魔王様が連れてくる人って事になってて・・・」

 ポンポコは経緯を説明する。

「べ、ベリコ・・・本気で戦うのか・・・?」

 フュクシンは青ざめていた。

「はい。魔王様は私の力を測りたいと仰っておられましたので、手を抜く事は出来ないかと」

 そう、楽しみそうな笑顔で答えた。

「こりゃあ・・・やばいかもな」

「確実に悪い事が起きるわね・・・」

「日時は何時ですか?」

「それはまだ決まっておりません。決まり次第、伝えに来るそうです」

「それは結局、向こうの都合次第じゃねーか・・・そんな条件で受けるなよな・・・・・・」

「ですが、グリム様がそんな卑怯な真似をするとは思えません。こちらにもある程度の時間は

与えられるはずです」

「そ、そうか・・・」

「備える必要がありますね。グレイスさん、ムムさん、ポンポコさんはインフォルマ様に事情

を伝え、研究開発局と協力して被害を最小限に抑えるための物を開発できないか掛け合って下

さい。私はヒイカ様に事情を話し、協力して下さりそうな人々に声を掛けます。ベリコさんは

日時が決まり次第、直ぐに手紙で知らせて下さい」

「ああ!」

「ええ!」

「うん!」

「分かりました」

 四人は、最早決まった災いの発生に備えるべく、行動を開始した。

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