チーム「ハイラント」
チーム結成まで後一人となってから、メンバー集めは難航していた。バンリの知り合いであ
る集合住宅の住人に声を掛けてはみたが、皆それぞれ仕事があり、協力は難しいとの事だった。
学校の友達に声を掛けてみようとも思ったが、今居るメンバーを考えると、出来れば頼りにな
る人物がいいと思ったので却下した。
他の二人の首尾はと言うと、ハワーもメルリアもこれといった人との繋がりが無く、心当た
りが無いと言って、ハイラント邸でだらだらしている。やってられん。
夏休みも後、四分の一。最早、万事休すの心境だった。最終手段としてヒイカを無理やり仲
間に加える他無いと思い、ハイラント邸へと向かう。
大きな門の前に到着し、いつものようにその一部を開けて入ろうとしたその時、気配を感じ
て振り向くと、見かけない女性が無表情で立っていた。
「こ・・・こんにちは・・・」
「こんにちは、初めまして」
無表情で声に抑揚無く挨拶するその様は、どこか不気味ですらある。それにしても、その女
性はここから離れようともしないし、自分と同じようにここに用があるのだろうか。
「すみません、ここはハイラント邸でしょうか?」
「あ、はい。合ってますよ。あなたも用があるのですか?」
「はい」
「だったら、一緒に入りましょう。あたしも客なので、こんな事を言うのも変ですけど、案内
しますよ」
「宜しくお願いします」
やはり表情が殆ど変化しない。感情が読み取り辛くて話し難い相手だ。とにかく、早く屋敷
に入ってしまおうと思い、足早に中に入っていく。いつもなら直ぐに玄関に到着するのだが、
今日はものすごく永く感じる。何を話したらいいかも分からないし、無表情で何を考えている
のかもまるで分からない。
走り出してしまいたい気分を堪え、ようやく玄関に着いた。バンリは逃げ込む様に玄関を開
け放ち、屋敷内へ入る。
「お邪魔します!」
「ようこそ、いらっしゃいませ」
ガルが待ち構えていたかのように、冷静に迎える。そのまま、女性の方へ歩み寄った。
「貴方様が、ワンコ様でしょうか?」
「・・・・・・はい」
ガルを見たそのワンコと言う女性は、相変わらず無表情ではあったが、驚いている感情が初
めて読み取れた。
「お話は伺っております。どうぞ、お部屋に案内いたします。あ、申し遅れました。私、この
ハイラント邸で給仕をしております、ガル、と申します。何か御座いましたら、いつでも気軽
にお声掛け下さいね」
「・・・・・・ガル・・・様・・・」
ワンコはガルに連れられて屋敷の奥へ消えていった。
謎の女性ワンコが見えなくなって、バンリは本来の目的を思い出す。ソファに横になり、二
人仲良くだらけているハワーとメルリアを叩き起こす。
「なんじゃ!ようじょよ!」
「幼女言うな!あたしはバンリだっつってんだろ!」
「ふひひ・・・お主も来るがよい!」
「や、やめ・・・」
メルリアは長くて強靭な尻尾を起用に使い、バンリの手を掴み、そのまま自分の懐に抱き込
んで再びソファに寝転んだ。
「ふひょひょ・・・若い女子はええのう・・・よい香りがするのう・・・!」
バンリの身の毛がよだつ。
「やめろー!離しやがれ、ヘンタイ女め!」
その様子を見ていたハワーも参戦し、二人でハワーの身体を弄り始める。
「こんのお・・・クソどもがあああああ!!!」
バンリは力を振り絞り、二人を巻き込んでソファから転げ落ちた。解放されたバンリは、メ
ルリアに馬乗りになり、反撃のくすぐりを開始する。
「いい加減にしやがれよ、ヘンタイ女め~!」
「あひ、ひゃひゃひゃ!やめ・・・ひぃぃぃひひひ!や、やめるのじゃあー!は、ハワー!」
メルリアはハワーに助けを求める。だが、ハワーの目はイタズラ魂に燃えていた。
「やってやれ!ハワー!」
「うん!」
「あっひゃあああああ!!!」
二人の波状攻撃により、メルリアは大人しくなった。
激しい攻防により、上がった息をようやく整え、ようやく本題に入る。
「ハワー、ヒイカは居るのか?」
「え?いないよ?」
「いないのかよ!くっそ~、あいつまさか・・・身の危険を察知して逃げたのか?ちなみに、何処
に行ったんだ?」
「しらない」
「いつ帰ってくる?」
「きょうはかえってこないよ?」
「終わった!」
バンリはソファに倒れこむ。今日はもう駄目そうだ。日を改めて来るしかないだろうと、気
力を失っている所に、突然聞きなれない声で話しかけられる。さっきのワンコという名の女性
だった。
「先程は案内して頂き、ありがとうございました。わたしの名前はワンコです。差し支えなけ
れば、あなたのお名前を教えて頂いても宜しいでしょうか?」
「お、おう。バンリ・・・あたしの名はバンリだ」
「わたしはハワーだよ!で、こっちでたおれてるのはメルリアちゃん!」
「バンリ、ハワー、メルリア・・・宜しくお願いします」
そう言えばさっき、荷物を持っていたし、ガルが部屋にも案内すると言っていた。彼女はこ
のハイラント邸に住むのだろうか。バンリは疑問に思ったが、あまり追求する事も無いだろう
と思い、聞くのを止める事にしたが、ハワーが聞いてしまう。
「ワンコちゃん!ここにすむの?」
「はい、今日からお世話になります」
「なんで?」
「おい!ハワー!」
ハワーの辞書には「気遣い」という言葉はないのだろうか。そんなハワーに対しても、ワン
コは気に留める事無く答える。
「研修です。世界を知るというのが目的です」
「へぇ~。あ!ねえねえ、バンリちゃんバンリちゃん」
「何だよ」
「ちょうどいいんじゃない?せかいをしりたいってことはさ、ほら!」
ハワーに言われて気が付く。「クエスト」は達成するためには世界のあちこちに行く事にな
る。それはつまり、世界を知るという事にも繋がる。ワンコと言う女性は、見たところ大人で
あり、何を考えているのか分からない所はあるが、何だか頼りに成りそうな雰囲気はある。そ
れに、これからこのハイラント邸に住むというのであれば、集まるのも容易だ。これ程の好条
件は待っても来ないだろう。
「いいな、それ!」
ヒイカが所在が分からず捕まらない以上、今日、この場で決めてしまいたい。バンリに再び
やる気の炎が灯る。
「ワンコさん!お話、聞いてもらえます?」
「あのねあのね、チームにはいってほしいの!」
「チーム?ですか?」
「チームって言うのはですね、簡単に言うと・・・世の中にある困り事をいろんな場所に行ったり
して解決する集まり、ですかね」
困り事を解決する。いろんな場所に行く。世界を知るというのが目的であるワンコは、この
話を好機であると判断した。
「分かりました。お受けします」
「あ?」
返事が返ってくるまでがあまりに短かったため、バンリは思わずぽかんとしてしまう。
「いいの?ありがとうー!ずっとひとりだけたりなくて、こまってたんだよ~!」
「それじゃあ、後はチーム名だけじゃの!」
いつの間にか復活していたメルリアが何事も無かったかのように会話に入ってきている。
「チーム名・・・チーム名かあ・・・・・・」
考え出して直ぐに、ハワーが手を挙げる。
「プリティバンリちゃんず!」
「やめろ!」
「もっとガンバンリましょう!なんつってのう!」
「だまれ!」
「バリバリバンリ・・・」
「あたしから離れろ!」
碌な案が出ないまま、時間だけが過ぎて行く。そんな時、日の光が差すように、その様子を
見ていたガルが一つの案を口にする。
「皆さん、このハイラント邸を拠点になさるわけですし、いっその事、このお屋敷の名前を冠
して頂いてもよろしいのですよ?」
「このお屋敷のって・・・『ハイラント』か・・・」
「はい。この『ハイラント』と言う言葉には『救世主』と言う意味があるんですよ。皆さんは
これから、世の中の困り事を解決して行くのですよね?でしたら、丁度よいのでは?」
「それって、わたしたちがよのなかの『きゅうせいしゅさま』になるってこと!?いい!いい
よそれ!」
「いや、でもなあ・・・名前が大げさ過ぎる気が・・・」
「ならばバンリよ、他に良い案があるとでも言うのかの?」
「う、それは・・・」
「何も、大きな事を成すだけが『救世主』ではありませんよ。世の中の人々と密接して、小さ
な困り事を解決する事もまた、大切だと思いますよ」
「・・・なるほど・・・皆は『ハイラント』でいいか?」
三人とも迷う事無く賛成の意を表す。
「それじゃあ、あたしたちは今日から、チーム『ハイラント』だ!」
「「「おーーー!!!」」」
バンリは再び冥界の大社を訪れた。今度は四人、ちゃんと揃っている。人数は揃っているの
に、登録用の紙を忘れたなどと言う落ちも無く、無事にクエストカウンターの受付にしっかり
と手渡した。
受付の女性、以前に来た時と同じ竜種のその人は紙を軽く流し見た後、四人の顔を確認し、
その紙にハンコを押した。
「確かに!チーム『ハイラント』、承認いたします。どうぞ無理せず、自分のペースで頑張っ
てくださいね!」
「いよっっっしゃああああ!やっとだー!」
四人中手を挙げて喜んでいたのはバンリ一人だった。
「うふふ、バンリちゃん・・・かわいい」
「ようじょはええのう・・・」
「素直な感情の表現、いいと思います!」
三人だけではなく、周りの大勢の人たちまで微笑ましそうに見ている事に気が付き、真っ赤
になり蹲る。
「く、くえすと・・・クエストを、下さい・・・」
真っ赤な顔のまま、俯きながら立ち上がり、蚊の泣くような声で何とか話を変えようとする。
「ふふっ、クエスト、ですね?初めてのクエストになりますので、まずはこちらの方であらか
じめ簡単そうなものを纏めた、ランクの低い物のみ紹介させて頂きますね」
「らんく?」
「はい。クエストには達成の難易度によってランクを付けさせて頂いております。実績の無い
最初の内は、最も低いランクの物のみしか受ける事は出来ません」
「うむ。より上のランクの物を受けるためにはの、実績を重ねて認められねばならんのじゃ」
「認めるタイミングはこちらの方で判断させて頂きます」
「皆さん、何を受けますか?」
別の受付の人が紙の束を持ってくる。
「初回ですので、お手伝い系やお使い系の物がお勧めですよ。それから、『帯』について説明
しておきますね」
よく見ると、依頼の内容が書かれた紙の束はそれぞれ違う色の帯で纏められている。
「まず、この青色が依頼主と協力して事に当たる『お手伝い系』。緑色は指定された場所に指
定された物を届ける『お使い系』。黄色は依頼主の求める情報を調べて伝える『諜報系』。最
後に、赤色は単なる腕試しなど、戦闘行為が発生する『戦闘系』になります」
「じゃあとりあえず、青か緑の中から探そう」
四人は大量にある青と緑の帯の依頼書に目を通し、よさそうな物が無いか探し始める。だが、
一言に「よさそう」とは言っても、なかなか難しい。書かれている内容は簡単そうに見えるも
のが多いが、だからこそ、その中から更にどれに絞り込むか悩ましい。そんな中、ハワーが何
か見つけたのか、一枚の紙を指差しながら見せてくる。
ハワーが指を差しているのは依頼内容ではなく、依頼者の所だった。その欄に書かれていた
名前は「ポン」だった。
ポンは大人のヒイカの親友である人だ。以前の「負の象徴」の一件では、非常に短い間だけ
であったが、一時共に戦った仲だ。仲とは言っても、対して会話をした覚えも無く、互いに良
く知らないので、実質知り合い程度なのだが。それでも、少しでも知っている分、気が楽とい
うものである。
「うん。これ、いいんじゃないか?」
「だよね!ポンちゃんかわいいし、おてつだいしてあげようよ」
「ポン・・・おお!確か、ヒイカの友人のちっこい狸じゃな」
「ポン・・・ヒイカ・・・?皆さんのお知り合いなのでしたら、その依頼を受ける事に賛成します」
「よし!じゃあこれにしよう!」
「その前に、依頼内容を確認した方が良いのではありませんか?自分たちに出来ない内容であ
った場合、迷惑を掛けてしまう事になってしまいます」
「そういや、そうだな」
初めて依頼内容に目を通す。
【依頼内容『鉱石の採掘及び運搬』・・・場所:創生界・マテリルの町のはずれの山小屋】
「う~ん・・・これくらいなら、出来そう・・・か?」
運搬はともかく、採掘はやったことが無い。何かコツの様な、或いは職人技が必要だったり
するのだろうか。
「やってみませんか?」
どうやら、ワンコはやる気のようだ。その発言に背中を押されるように、皆も賛成の意を表
した。決まりのようだ。受付の女性に紙を見せる。
「これを受けます!」
「では、その紙は依頼を受けたという証としてお持ち下さい。依頼者にも受けたという事を示
さなければなりませんので。依頼終了後、依頼者のサインを貰って、またこのクエストカウン
ターに持ってきて下さいね。万が一、紛失した場合にもここを訪れて下さい。では、いってら
っしゃいませ!」
「よし!いくぞ!」
意気揚々と受付から踵を返して向かおうとした所をハワーがバンリの袖を掴んで何か言いた
そうにしている。
「ねえ、もうひがくれちゃうよ?」
よく外を見てみると、もう大分日が傾いてきていた。
「ふう。また明日だな!」
「そうじゃな」
「うん。おなかすいたしね」
「焦らず頑張っていきましょう」
翌日、朝早くから出発しようと、簡単に朝食を済ませてバンリはハイラント邸を訪れた。何
せ初めてのクエストだし、皆気合が入っていて、もう待っているかもしれないとか思いながら
お屋敷の門を開けた。
「あら、お早う御座います、バンリ様」
いつものようにガルが迎えてくれる。皆は何処にいるかと見渡すが、ソファにも何処にも居
ない。まあ、そんな事だろうと思った。別に期待してた訳じゃないし。
「バンリさん、皆さん起こしましょうか?」
「ん~・・・後三十分くらい待ちますよ。それで起きてこなかったらお願いします」
「はい。ではそのように。ところで、朝食は御済みですか?」
「あ~、軽く食べて来ました」
「では、軽く用意いたしましょうか?」
「えへへ、お願いします」
こんな事なら食べてこなければ良かったと少し後悔しながらお言葉に甘える事にする。
「そう言えば、ヒイカはどこに行ってるんすか?帰ってきてないんすよね?」
昨日はメンバーを揃える事だけで頭が一杯で詳しい事を聞いている余裕が無かった事を思い
出し、唐突に気になったので聞いてみる事にした。
「今頃は・・・『死神界』ですかね」
「!・・・死神界かあ・・・あたし、死神族だけど、死神界には行った事ないんだよなあ」
「あら、そうなんですか?最近はそういう子も多いのかもしれませんね」
結局、三十分経っても誰一人起きて来ず、全員叩き起こされた。
「ふああ・・・バンリちゃん、やるきまんまんまん?」
ハワーはまだ寝ぼけている。
「バンリよ、睡眠は大事なのじゃぞ?」
メルリアはマイ枕を抱いたまま起きて来た様だ。
「おはようございます。いつでも行けます」
ワンコは起きたばかりだというのに、既に準備が出来ている。というか、些か張り切りすぎ
ている様にも見える。
「とりあえず朝飯食って目を覚ませ。早めに出発したいんだよ。どれくらい掛かるかわ分かん
ないしさ」
分かったのか分かって無いのか、返事をしたのはワンコだけだった。この調子で大丈夫なの
だろうかと、不安が過ぎる。
『創生界』五つの世界の中で最も歴史が浅い世界であり、この世界が誕生したのはおよそ、
今から五十年程前であると言われてる。
この世界には妖怪族が多く住んでおり、その妖怪族は別の世界から移住してきたと言う。そ
もそもこの世界は、人間族との抗争を避け、妖怪族が気ままに生きていくために、七人の人物
によって創られたと言う話がある。
妖怪族は自然界に深く関わり、影響を及ぼすため、強い力を持った妖怪族が棲みかを構えた
場所は、その妖怪が棲みやすい環境に変化して行く。そしてそれに引き寄せられるように、そ
の妖怪と同じような特性を持つ妖怪が、棲みやすい環境を求めて集まってくる。と言ったよう
に、この世界には本来ありえないような所にありえない環境が存在している事がよくあり、そ
れを一目見ようと、他種族の者がよく観光に来たり、住み着くこともある。
妖怪族は楽天的な者が多く、縄張りに土足で踏み入っても怒る事無く、逆にもてなされたり、
驚かされたりするくらいで笑って許してくれる者が多い。
今日訪れた町「マテリル」の近場には採掘場があり、採掘者を癒すお風呂屋さんや飲食店、
マッサージの専門店に採掘の道具の専門店などが建っている。だが、人の数はそれ程多くない。
「この町のはずれだって書いてあるが・・・方角が分からん・・・」
「聞き込みをしてみてはどうでしょう?」
「基本じゃな」
早速近くにいる人に声を掛けてみる。
「すまぬ、少しばかり良いかの?」
「ああ?何だ?」
がたいの大きい男性は目つき鋭くこちらを睨む。だが、メルリアは怯える気配も無い。
「ポンと言う名の者がおる家を探しておるのじゃが、知らんかの?クエストで行かねばならぬ
のじゃ」
ポンと言う名前を聞いたその男性は、途端に明るい笑顔になる。
「おお、あの御仁のクエストか!いいだろう。向こうの採掘場とは反対の方向の・・・ああ、丁度
このまま真っ直ぐ進んで行けば、その内右側に一軒だけ建っている小屋が見えてくる。それが
そうだ」
「このまま真っ直ぐ・・・じゃな。感謝するのじゃ」
「ああ!是非協力してやってくれ!あの御仁の腕は世界一だからな!はっはっは!」
男性は笑いながら去っていった。
「御仁・・・世界一・・・相当すごい人だったんだな・・・」
「うん・・・サインとかもらえるかな?」
「クエストが終われば貰えるがの」
「そのサインとは違うと思います」
一行は言われたとおりに歩き始める。
およそ十分くらいだろうか。確かに、そこに一軒だけぽつんと建っている小さな家・・・家と言
うより小屋と呼んだ方がしっくり来る程の小さな建物かあった。その建物からはカン、カン、
カンと言う金属を叩く音が小気味好く響いてくる。
バンリが扉をノックすると、先程まで聞こえていた音が止んだ。扉が様子を伺うようにゆっ
くりと少しだけ開き、か細い声が聞こえてくる。
「ど、どちらさま・・・でしょうか・・・?」
少し開いた扉の隙間からは顔は見えず、バンリの目線の高さに狸の耳だけが見えている。
「ポンさん、覚えてます?あたしですよ、バンリです!」
「私もいるよー!」
聞き覚えがあったらしく、ポンはひょこっと顔を見せる。
「あ・・・バンリさんと、ハワーさん?ですよね?」
「そうだよー」
「何か・・・御用ですか?」
依頼書を見せる。
「あ!・・・皆さんが受けて下さったんですね!・・・ありがとうございます・・・」
「詳しい話をお聴きしたいのですが、中に入れてもらっても?」
「え・・・でも、今は炉が燃えているので・・・暑いですよ?」
「大丈夫です!」
安易に大丈夫とは言ったものの、実際に入ってみると予想以上に暑い。小屋の奥には景色が
揺らぐほどの熱を発する炉がごうごうと眩しいほどに燃えている。その直ぐ傍には、いつもこ
の場所で作業しているのだろう、鍛冶に使う槌等の道具が置かれている。
「ああ~・・・あづいよう~」
「このような環境でいつも・・・しておるのか・・・」
「あの、外でお話・・・しませんか?」
ハワーとメルリアは明らかに辛そうな顔をしている。これではゆっくり話も聞いていられな
いと言うことで、結局外に出る事になった。
「では、依頼のお話・・・しますね?」
ポンは辛そうにしていた二人を心配し、顔色を気に掛けながら話し始める。
「今回お願いしたいのは・・・書いてある通り、鉱石の採掘のお手伝いと運搬・・・です・・・。マテリ
ルの町の先に採掘場があるので、そこで採掘します」
「そういえば・・・」
バンリは以前、『負の象徴』の一件の時にポンが何も無いところから金属を出現させていた
事を思い出す。
「ポンさん、この間・・・金属を出してませんでしたっけ?」
「あ!そういえば、そんなことあったよね!」
「ああ・・・確かにそうです。私は金属を生み出す事が出来るんです」
それならば、わざわざ採掘をする必要は無いのでは?と質問をする前にポンは続けて理由を
述べ始める。
「ですが、私は・・・自然界の物を用いて、打ちたいんです・・・。自分で生み出せる、自分の思い
通りになる金属ではなく・・・自分の思い通りにならない金属を、私自身の鍛冶の技術で、想う物
を打ちたいんです!」
いつものか弱そうなポンとは違い、想いを語るポンからはとても熱くて揺ぎ無い信念の様な
ものを感じる。
「ほお・・・職人魂じゃのう・・・」
「かっこいいと思います」
褒められたポンは、熱意の篭った顔から恥ずかしそうな顔に一気に切り替わってしまう。
「あう・・・そ、それでその・・・・・・て、手伝って・・・頂けますか?」
胸の前で両手をもじもじさせながら不安そうに問い掛ける。
「か、かわいいのう・・・お主、本当に男の子かえ?」
「お、男です!・・・子でもありません・・・」
ポンは子供と見間違うほど小柄であり、よく女の子と間違われるのである。本人はそれをと
ても気にしている。
「男・・・ポンさんは、男・・・了解しました」
「そんなに・・・見えないですか・・・?」
全員が頷く。それを見たポンはうう~と小さく唸り、項垂れる。
「あの、採掘、採掘行きましょう!」
「じ、じゃな!うむ、クエストじゃ!」
ポンを落ち込ませてしまった事から話を逸らすようにクエストの話に強引に戻した。
「そ、それでは・・・町で道具を借りましょう・・・はぁ・・・」
「あ、あの!どうぐってどんなのがあるんですか?」
皆が必死に気分を変えさせようとしている事に気が付いたポンは、顔を上げて少し微笑んで
見せる。
「えっとですね・・・とりあえず、現地で実際に道具を見ながら説明しますね」
「そうですね、とりあえず出発しましょう!」
チーム「ハイラント」一行と依頼者ポンはマテリルを目指し、歩き出す。




