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黒翼のカナエル  作者: 氷花
不死と希望の悪魔編
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「悪魔」捜し

 「悪魔」と呼ばれる者。その情報を得ようと思うのなら、まずはあらゆる世界中の情報に精

通している育みの象徴インフォルマの元を訪れるのが一番手っ取り早い。のだが、今探してい

るのは「悪魔」。この話はカナエルにもしておいた方がいいと思い、魔王グリムは大聖堂を訪

れていた。

 すると案の定、黒翼の天使カナエルは顕著に反応を示した。

「今、悪魔と言ったかしら?」

 テーブルに少しだが前のめりになり、置かれたティーカップの中の紅茶が零れそうになるほ

どに揺れる。

「言った。それで、この世界に私が知る他に『悪魔』がいるのか、先にあなたに訊いて見よう

と思ってね。ま、その様子じゃあ、把握して無いみたいだけど」

 知っている悪魔とは、先代の魔王オルトの事である。ま、今は姿を大きく変えているが。

「・・・その情報の信憑性は?」

「さあ?会ったのは私じゃないし。聴いただけの話だから、それが本物なのか、ただ単にそう

称するに値するような人物だったというだけなのか」

 そう言うと、カナエルは少し残念そうに息を吐き、背もたれにどっともたれ掛かった。

「で?魔王グリム。貴女はその『悪魔』とやらを見つけてどうするつもりでいるのかしら?」

「こちらはまあ、部下を二人も倒されてる事だし、詳しく話を訊くつもりだけど?」

「部下?あの七魔のこと?まさか、貴女が七魔の仇討ちなんてしようと?貴女に限ってそれは

ないでしょう」

 カナエルはくすくすと笑う。

 魔王グリムと七魔との関係は、部下と上司の関係すら成り立っていないほど希薄だと言って

いい。今まで魔王が七魔のために、七魔が魔王のために何かしたという事実は無い。そもそも、

七魔は先代の魔王オルトが任命したものであり、その先代を討ち、成り代わったとされている

現在の魔王グリムとは何の恩義も無いのである。

「ま、そういう体で行こうと思ってるだけよ。それでだけど、もしそれが本物の悪魔だったと

したら、どうして欲しい?」

「丁重に扱って連れてきてくれるかしら?悪魔族とは是非にでも協力関係を結びたい・・・悪魔族

との交信をする方法が見つかっていない以上、この機を逃す訳にはいかないわ」

「分かった。ま、頭の片隅にでも置いておくわ」

「もしそうだったら、お願いね」


 さて、育みの里。

「何か御用ですか?魔王グリム殿」

「この世界に悪魔っている?」

 グリムは顔をあわせるなり切り出した。

「・・・悪魔・・・それが何か?」

 返答までに少し間があった。

「知ってたら教えてくれない?」

「端的過ぎて話が見えません。もう少し詳しく願います」

 淡々と返答してくるインフォルマだが、グリムはその挙動に少しばかり違和感を感じていた。

「部下である七魔がこの一日二日で二人も倒されてしまっていてね、その一人が『悪魔』がい

ただのと、苦しみながら必死に訴えてきているのよ。嘘を吐く様な人物ではないし、もしそれ

が本物の『悪魔』であったなら・・・・・・色々としなければならない事があるしね。・・・だから、教

えてくれない?」

 笑顔でもう一度訊く。

「もしも、万が一、知らないというのなら、調べて?分かるまでここから動かないから」

 グリムにはインフォルマが悪魔と呼ばれている人物について知っているという確証めいたも

のがあった。それはフリーミから聴いた話の中に出てきた、狸の女を「先生」と称し従う黒装

束の集団。その卓越した隠密の技術と統率の取れた動きを含めると、これは完全に「組織」で

ある。こんな組織を持っているのは、このインフォルマくらいのものだろう。だとすれば、必

ずこの件の情報は入ってきているはずである。なのに、何か御用ですか?と言った。七魔が倒

されたことも知っていたとすれば、これは何かを隠そうとしていると考えていい。

「グリム殿」

 インフォルマは一つ溜め息を吐くと、答えた。

「確かに、『悪魔』と呼ばれる者の事は存じております」

「やっぱりね」

「・・・できれば隠したかった理由をお話しましょう」

 インフォルマは語った。その者は絶滅危惧種の不死鳥を育て護っている事、最近になって不

死鳥狩りを企む者たちが現れたことを。だから話を広める事はしたくなかったと。

「成程ね・・・」

 あの二人はその不死鳥を狙ってその護衛の『悪魔』に返り討ちに遭ったということか。それ

にしても、あの二人が隠れてそんな事をしていたなんてね・・・

「グリム殿」

「ん?」

「不死鳥とその側付きの二人事は何卒、そっとしておいてあげて下さいませ」

「・・・不死鳥は魔獣族。私の管轄だしねー。悪いようにはしないつもりだけど」

 インフォルマは結局、その悪魔の居場所を喋る事は無かった。当然か。では、居場所をどう

特定するかだが、それは簡単である。


 あの時、フリーミはこうなった事情については何も話さなかった。自分たちがバレたらやば

い不死鳥狩りを隠れて行っていたのだ、話すわけにはいかなかったという訳だ。

 病院でまだ寝ているフリーミに不死鳥の話しをすると、いとも簡単に突き止めた不死鳥の居

場所を吐いた。

 涙すら浮かべて幾度と謝罪の言葉を述べ続けるフリーミを余所に辿り着いた創生界の人里離

れた場所。そこにはぽつんと一件の家が建っていた。

 辿り着くと直ぐに家の中から人が出てくる。狸の女。おどおどしているようだが、慌ててい

る様子は無い。

「ま、魔王様・・・ですよ、ね・・・?何か、御用でしょうか・・・?」

 その女は弱弱しい挙動だが、よく見ると家を護るように立っている。

「別に、仇討ちに来た訳じゃないわ。少し、お話しない?」 

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