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黒翼のカナエル  作者: 氷花
不死と希望の悪魔編
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二人の訪問者

 身体が不調になって二日目の朝。このまま寝ていたいほどの調子だが、何時までも人のベッ

ドを占領している訳にもいかない。心配して同じ部屋の床で寝ていてくれたミーニの姿はもう

ない。それもそうか、今日も学校はあるのだ。

 部屋を出て壁を伝いながら居間に辿り着く。

「あ、フェローリアちゃん、おはよう!」

「お、おはようミーニ・・・?」

 朝食のサンドウィッチを食べるミーニと、確か・・・ラキエル、と名乗っていただろうか、天使

の傍に、見知らぬ顔が二つ、あった。

「フェローリアさんに御用があるそうですよ」

 その内の一人が自分がフェローリアだと理解すると、気さくに声を掛けてくる。

「よお!噂のお姫さん!」

「は?だ、誰だ?」

 そう問い掛けると、その女はこちらに歩み寄り、目の前で跪き、手を取ってきた。

「騎士様、だぜ。お前を護るためにやって来たんだ・・・ぜ!」

 そう言いながら取った手に口を近づけてくる。

「や、やめろお!!」

 気持ち悪くて思わず手を引き戻す。あの気色悪かった女と言い、この女と言い、世の中こん

な奴等ばかりなのかと、思わず眩暈と溜め息が出る。

「どうした?顔色が悪いぜ?寝床に連れて行ってやろうか?」

 今度は抱きかかえようと近付いて来る。

 ああ、うっとうしい。より一層調子が悪くなりそうだ。

「グレイス姉さん、そのくらいにしておいてあげたら?その仔、姉さんが気持ち悪すぎて倒れ

そうよ」

「気持ち悪すぎてって、ひでえな!」

 気色の悪い女その2とは別のもう一人の、モコモコした毛並みの女がその凶行を制止してく

れた。が、何故だかその女の人はずっと目を閉じている。それでもこいつよりは話が通じそう

なのは間違いない。その女の人の方へ近付き、話を訊いて見る。

「おれが言うのも変だけど、どちら様で?」

「どちら様かって?知りたいなら教えてやろう!」

「はぁぁぁぁぁ~~~!」

 気色の悪い方が割り込んできたのでわざとらしく大きな溜め息を吐いて遮ると、

「おやや?こりゃのっけから嫌われちまったかな?あっはっはっは!!」

 と、大口を開けて笑った。呆れた様子でもう一人の女性が口を開く。

「ふう。私たちは、あなたの保護者であるベリコの姉、と言えば通じるかしら?」

「姉?・・・ってことは、二人も強化獣人なのか?」

 姉とは言っても実際に血が繋がっているわけではない。強化獣人は造り出された順に姉妹兄

弟が決められており、つまり二人はベリコよりも先に造り出されたという事だ。

「ええ、そうよ。私はムム。こっちの・・・変なのはグレイス」

「変なのって!言葉選んで変なのって!」

「変な人ではないのですか?」

「割と酷いこと言うな、この天使も!ちょっとふざけてただけだっての!」

「じゃあ、ふざけた変な人ってこと?」

「変な人がパワーアップしてるじゃねーか!!」

「じゃあ、どういう変な人なの?」

「おい兎、撫で回されたいか!!」

 いつ来たのかは知らないが、何やら既に随分と打ち解けているようだ。ミーニやラキエルも

楽しそうにしているようだし、意外と悪い人・・・変な人ではないのかもしれない・・・?

「た、楽しそう・・・だな」

「あ、そうだフェローリアちゃん。今日は学校はどうするつもりなの?」

「え?あー・・・そう、だな・・・・・・」

 あまり学校は休みたくない。でも、こんな身体がこんな状態だし、行けば確実に周囲に迷惑

を掛けてしまうことになる。だからここは

「悪いけど、休ませてもらおう・・・かな」

「うん、それがいいよ。フェローリアちゃんがもし行くだなんて言ってたら、ベッドにしばり

つけてでも休ませたけどね!」

「お、おう・・・」

 笑顔でそう述べるミーニに得も知れぬ恐怖を感じる。

「私のベッド使ってていいからね?あ、でも別の部屋の方が休めたりするのかな?ねえ、フェ

ローリアちゃん」

「ん?何だ?」

「私のベッドで一晩寝てさ・・・その・・・く、臭かったりとか・・・しなかった・・・?」

 気にしていたのか、ミーニは恥ずかしそうに訊いて来る。でもまあ確かに、自分のいつも使

ってる寝床を他人に貸すとなったら気にもなるか。

「いや、いい・・・」

 少し待て!ここでいい匂いだったと言うのもどうなのだろうか?これでは嗅ぎまくっていた

ではないかと思われてしまう危険がある!ここは良し悪しではなく・・・

「えふんっ!別に、気にならなかったが?」

「そっか、よかったぁ・・・」

 ミーニは胸を撫で下ろしている。何とかなったな。

「じゃあよ、良いか悪いかで言ったらどっちだ?」

「はあ!?」

 こいつ何を訊きやがってんだ変態クソ女!

「人の匂いって結構気になるもんだとおもうんだけどなあ~・・・なあ?そう思わないか?」

「・・・確かに、枕とかは匂いが染み付くものですもんね。自分では分からなくても、余所の人が

嗅げば何かしら感じそうですよね」

「だろ?」

「くっ・・・」

 天使の女までそういうことを言う。

「ねえ、フェローリアちゃん・・・本当の事、言って?」

「う・・・」

「自分の匂いが他の人にどう思われてるのか、知りたいの!」

「そ、そんなの人そ」

「人それぞれだってのは無しな」

 クソ女!!!

 退路を断たれた。もう、正直に答えるしかない。でなければ、ミーニを傷つけることになり

かねない。

「い・・・・・・いい匂いだと思った・・・」

「本当に?」

「本当だよ!悪かったら眠れないし」

「ほ・・・」

「じゃあ最初からそう言えば良かったじゃねえか。何で変に隠そうとしたんだ?何かその辺り

にやましい事でも・・・」

 いい加減にしろーーー!!

 心の中で叫びつつ、強引に話を変える。

「そんなことより!!あんたたちは何しに来たんだよ!」

「やっと話が戻ってきてくれたわね。私たちは一応、あなたを護るためにきたのだけど」

「あんたたちがか?」

「ああ、ベリコにゃあお前を護る気なんて更更無さそうだったからな!」

「グレイス姉さん!」

「ああ、そんなに気にしなくても、ベリコがそう言う質なの知ってるんで」

 そもそも今までベリコが護ろうとしてくれたことがあっただろうか?殺されそうになった事

なら幾らでもあるが。

「そうなの。あなたはベリコに育てられたのよね?」

「ああ」

「どんな感じだったんだ?ベリコに子育てなんざぁ出来るとは到底思えないんだがなあ?」

「フェローリアちゃんの幼少の頃の話?聴きたい!」

「幼少て・・・今も十分幼少だろ。そもそもそんな面白いものはないぞ?」

「面白いとかじゃなくて、フェローリアちゃんを知りたいの」

「お、おれをか?・・・ま、まあ・・・別に話してもいいけど・・・・・・」

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