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黒翼のカナエル  作者: 氷花
不死と希望の悪魔編
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鬼の誇り

 七魔フリーミが提示した洞窟「鬼の口」。どんなに大きなものであってもその内に飲み込ん

でしまうほど大きい事からそう呼ばれている。それは深い森の中、突如として姿を現す。

 フリーミの言っていた通り、洞窟の中から光が漏れてきいる。

「ここみたいだね」

 ここまで来るのにどれくらい掛かっただろうか?冥界には昼夜で明るさに差は無いため、分

からない。

「誰だお前たちは!」

 辿り着いて直ぐ、四方八方の森の中、洞窟の中から次々と人々が現れる。その様子を見るに、

かなり警戒されているようだ。

「あなた方が、不死を欲する方々ですか?」

 ベリコのその問いに対し、その中の一人が間を置いて力強く肯定する。

「そうだ。俺たちは不死になる!貴様等の目的は何だ?」

 ここは自分たちも不死を欲していると、同志であると主張し、中に入れてもらえるよう平和

的に交渉していくのが得策だろう。と、ポンポコは思った。が、

「待て!・・・お前・・・何処かで・・・?」

 ベリコの姿を見た一人が声を上げる。

「そうか!お前、あの不死鳥の付き人か!!」

「何ぃ!?・・・確かにそうだ!聞いていた特徴と同じだ!!」

「でも何故ここに・・・?」

「こいつまさか!報復に来たってのか!?」

 交渉する暇すらなく、敵として認識されてしまったようだ。

「そう言えば、こいつのトコにフリーミ様たちが向かったんじゃなかった?」

「・・・そうだ!じゃあ、何でこいつらが・・・まさか!」

「フリーミ様たちはどうしたんだ!!貴様らぁ!!」

 敵意が勝手にどんどんと高まっていく。

 どうにかして落ち着かせたいところだ。だったが・・・

「皆さん、今は病院に居るはずですよ」

 ベリコが笑顔で一言。交渉決裂!はい、終わり!

「貴様等あああ!!覚悟しろ!!」

 ここでも囲まれる事になってしまった。しかし、ベリコは全く動じない。

「そんなに不死になりたいのですか?」

「当然だ!誰だって死にたくは無い・・・何時までも生きていたいだろう!」

「あの不死鳥一人で、大勢の人が死なずに済むようになるのよ!」

「しっかり感謝して喰らってやるつもりさ!」

「・・・そうですか。ポンポコお姉様、離れていて下さい」

 ベリコの声色に変化は無い。だが、確実に機嫌は損ねている。

「うん、分かった。・・・でも、殺しちゃうのはだめだよ?」

 ベリコが静かに頷くのを確認すると、ポンポコは一瞬の内にその場から消えた。

「な、何!?何処へ行った!?」

「いい!居なくなったのなら目の前のこいつから始末するまでだ!!」

 敵意がベリコ一人に集中する。

「遠距離で一気に潰せ!」

 魔法やら何やらを使用し、魔力の塊やら火の玉やら何やらを形成し、ベリコに向けて一斉に

射出する。

 全ての攻撃が寸分の狂いなくベリコの身体目掛けて飛んで行く。対し、ベリコは前で手を組

んだまま回避も防御行動も行わない。そのまま全ての攻撃が次々に直撃した。尚もしばらく攻

撃は続けられ、砂煙が自分たちの元まで広がりそうになった所で漸く手を止めた。

「へっ!どうだ!」

「少しやり過ぎちゃったかな?なんて!」

 砂煙が治まる。そこにはベリコが、変わらず立っていた。変わらず穏やかな表情を浮かべ、

傷を負っているようにはとても見えなかった。

「な・・・!何だと!?」

「効いて・・・ないってのか!?」

 少なくとも百発は直撃しているはず・・・。だと言うのに、その女は涼しい顔で傷一つつかず、

余裕の表情でそこに立っている。

「な、ならば・・・!接近戦だ!」

 今度は刃物やら鈍器を取り出し、襲い掛かる。それでもやはりベリコは動かない。防がない。

「はああっ!!」

 一人の男が鋭い太刀筋で斬り付ける。しかし、傷一つつく所か、刀の方が折れてしまう。

「これならどう!?魂狩り!!」

 死神の女が鎌を振るう。

「ひいぃ!!」

 しかし、弾き返されてしまった。

「何で効かないの!?強靭過ぎでしょ!!」

 槍だろうが鈍器だろうが、どの部位を狙おうともまるで通用しなかった。

「う、嘘だろこいつ!?」

「ば、化け物か・・・!!」

 あらゆる攻撃がまるで通用せず、捕食者たちの中に恐怖心が芽生える。後ずさりさえする者

が現れたその時、遂にベリコが動く。と言っても、動いたのは口だ。

「どうなさったのですか?もっと殺す気で掛かってきて下さい」

 そう笑顔で煽る。

「くっ・・・!」

 しかし、捕食者たちは有効な攻撃方法が思い浮かばず、誰も動けない。と、

「何をしている!」

 洞窟の奥から一人の大男、七魔クリークが姿を現した。

「す、すんません!!クリーク様!!」

「こいつが・・・!不死鳥の付き人が!!」

 必死で訴える同志たちは完全に怯え切っていた。

「たった一人・・・という言葉では片付けられぬ相手のようだな」

 クリークがベリコの目の前まで近付き、上から睨みつける。

 ベリコとクリーク。身長差で言えば有に二倍、もしかしたら三倍もあろうかと言うほどだ。

それほどの体格差の相手に睨まれてもベリコの笑顔は微塵も崩れない。

「あなたがこの方々の親玉、ですか?」

「そうだ。貴様の主には悪いが、我が身のための犠牲となってもらう」

「それは別に構いません。弱肉強食ですし、好きにしてもらっていいです」

「・・・ほう?それは邪魔をしないと言う事でいいのか?」

「できるのなら。・・・私を倒し、立ちはだかる者全てを打ち倒して手に入れられたというのなら、

好きに喰らえばいいというだけの事です」

 ベリコが睨み付け返し、敵意を示すと、それに呼応するようにクリークの魔力が、気迫が急

激に高まっていく。同時に、クリークの頭上に出現した魔法陣から、ベリコの身体よりも遥か

に大きい金棒を乱暴に取り出し、地面に突き立てる。

 その衝撃で地面が揺れ、それを警告と受け取った同志たちは全員が二人から離れ、邪魔にな

らない、もとい巻き込まれない安全圏まで退避して行った。

「そう言う事であれば・・・容赦はせん!!」

 クリークが大金棒を薙ぎ払う。対するベリコはやはり回避しない。だが、片腕で防御する体

制を取る。


ズガゴン!!!!!


 重く鈍い音が響く。

「む・・・!」

 しかし、ベリコは一切吹きとぶ事もなく、元の位置に立ったまま完全に防ぎきっていた。す

ぐさま二撃、三撃四撃と幾度となく大金棒を打ちつけ、止めと言わんばかりに天高く振り上げ、

一気に振り下ろす。

「地砕き!!」

 地面に対し、ほぼ垂直に振り下ろされた金棒が変わらず防御体勢のベリコに直撃する。

 衝撃波が周囲の木々を大きく揺らす。

「あ、あれは・・・!」

「嘘・・・だろ・・・」

 あれだけの攻撃を受けても尚、ベリコはしっかりと地面に立っていた。

「これはこれは、見た目に騙されましたね。この程度であれば、片手で十分でした」

 そう言い、未だ押し潰さんと力を加え続ける大金棒を片手で軽々と押し返した。

「な!?・・・鬼の・・・我以上の怪力を持っているというのか!?」

 凄まじい怪力を持つ事で有名な鬼種は、同時に己の怪力に誇りを持ち、力で負けることなど

あってはならないのだ。クリークは青筋を立てる。

「認めん・・・認めてなるものかあああ!!」

 クリークの怒りに呼応するかのように大金棒が更に巨大化して行く。

「我は・・・負けんん!!重量変化・乗・一万!!」

「あ、あれは不味いぞ!!」

「に、逃げろー!!出来るだけ遠くへ!!」

 クリークが超巨大金棒を両手で振り上げている。同志たちはクリークが魔王グリムから授か

った能力を知っていたが故、皆一様に焦り、逃げ惑う。それもそのはず。クリークが得たのは

物の重さを変化させる力。鬼の怪力と超強化された金棒の重さが合わさってしまったそれが、

今まさに地面へ向けて振り下ろされようとしているのだ。

 あんな物が地面に到達してしまえば、周囲一帯はどうなってしまうのか、想像するに易い。

しかし、同志たちにも逃げる猶予など与えられなかった。

「星・・・砕きぃぃぃぃぃぃ!!!」

 超巨大金棒がベリコを含め大地へ渾身の力を以って振り下ろされる。最早逃げ場も時間も無

い。だが、ベリコは最初から逃げるつもりなどなかった。

 右手右脚を大きく引き、拳を握る。

 迫る超巨大金棒に合わせ、拳を振り上げた。


 次の瞬間、誰もが眼を疑った。ベリコ本人以外は。

 クリークの巨体が宙を舞っていたのだ。同じく宙を舞う、二つになった超巨大金棒。とても

現実とは思えない光景がそこにはあった。

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