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黒翼のカナエル  作者: 氷花
不死と希望の悪魔編
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110/240

狙う者

 友達ができた事自体はとても嬉しい事で、それを話ししたベリコも喜んでくれた。でもやは

り、手放しでは喜べない理由がある。

(ミーニ・・・・・・)

 あれからミーニとはまともに会話できていない。素っ気無く挨拶をされ、それに返すだけで

会話と言うほどものは全くしていない。したいとは思っているし、機会が無いわけでもないの

だが、如何せんどう話し掛けたらいいものか、経験則が全く無いため分からない。

 素直に友達になりたいと言えばいいのだろうか?でも、それも何だかすっきりとしない。上

手く言えないけれど、それではだめな気がする。

 そうして、ああじゃないこうじゃないと悩んでいる内に、再びお休みの日がやってきてしま

った。

「今日は兎さんの所に行かなくて宜しいのですか?」

 朝食を終え、鍛錬のために外へでようとしたところ、ベリコが不意に問い掛けてきた。

「ああ、今日はまだ・・・・・・分かんねえし・・・・・・」

「そうですか。他の方たちとはお友達になることができたから、当初の目的であった彼女の事

はもう、どうでもいいと言う事ですね?」

「な・・・!そんな事言ってないだろ!・・・・・・分かんないだけなんだよ!」

「・・・お嬢様はどうなされたいのですか?お二人はまだ子供なのです、何かと面倒くさい大人の

世界とは違って、自分の思っていることを真っ直ぐに相手に伝えれば必ず相手も分かってくれ

るでしょう。・・・もう一度、ぶち当たってみる気はありませんか?」

 今思えば、友達ができたのって、変に気を使うのを止めてからだった気がする。

 あの時、ミーニに言った「同じ絶滅危惧種だから仲良くなりたい」という言葉も嘘では無い。

むしろ本音だった。足りなかったのは言葉と、相手であるミーニをよく見る事だ。

「ふー・・・・・・悩むのもつかれたな・・・ベリコ!ちょっと当たって砕けてくる!」

「はい!行ってらっしゃいませ!」

 フェローリアは家を飛び出して行った。


 フェローリアはミーニが住んでいるあのお屋敷ではなく、訓練で訪れているあの雪原へと真

っ先に向かっていた。その理由は、ミーニが強くなりたいと言ったときの目だ。相当な決意と

覚悟を秘めていると感じた。なら間違いなく、今日も訓練を行っているはずだ。

 だがここで一つ、問題が生じる。

 雪原地帯の入り口までやってきたのはいいものの、進むべき方向が全く分からないのだ。ど

こも同じような景色で目印になるようなものが無い。あの時はミーニの後ろを付いて行っただ

けだったし、帰りは適当に走って抜けてきちゃったし・・・

「こりゃまいったな・・・」

 『不死鳥』と言う名ではあるが、進化によって翼を失っているため、飛んで捜すこともでき

ない。だからと言って闇雲に突っ込んで行くのも危険がある。

 フェローリアが雪原の向こうを見つめて悩んでいると、誰かが声を掛けてきた。

「どうしたのぉ?何か、お困りぃ?」

 それは妖艶な雰囲気を放つ女性だった。何ともくどいほど甘ったるい声色だ。

「お姉さんがぁ、お話ぃ、聞いてあげるわよぉん?」

 そう言いつつ近づいて来る。

「・・・・・・人さがし」

 後ずさりしながらぽつりと呟く。

「人捜し?あらまん可愛そぅ~!お姉さんがぁ、一緒に捜してあげるわね~ん!」

 そう言い今度は手を伸ばしてくる。

「いいかげんにしろ!!」

 フェローリアはその手を払い除ける。

「気色悪いしゃべりかたしやがって!たくらんでること、はっきり言ったらどうだ!」

「企んで?もぉ~ん、酷い子ねぇ~!傷付いちゃうわぁ~・・・」

 その女は両手で顔を覆い、おいおいと泣き始める。だが、その程度で騙されるフェローリア

ではない。フェローリアは一気に距離を取り、戦闘態勢を取る。

「どうしてん・・・どうしてそんなに疑うのぉ?子供の癖に人を疑う事ばかり・・・ほんと、可愛く

ないったら!!」

 女は顔を覆っていた手を下げる。やはり!泣いてなどいなかった!おまけに喋り方も変わっ

ているし。

「目的は何だ!」

「目的?それはあなた自身が一番分かってるんじゃないのかしら?」

「まさかとは思ったが・・・・・・」

 世の中では、絶滅危惧種に対しては大切に護って行かなければならないというのが一般的な

のだが、未だに不死鳥を狙う者がいるとは。

「手荒な真似はしたくないのよ。だから付いて来てくれる?」

「断る!!」

「でしょうね」

 女もやれやれといった様子で構える。

「ぜってえてめえの思い通りにはならねえ!雛炎(すいえん)!」

 広範囲に撒き散らされた火の玉が一斉に女へ向かって行く。対する女に回避する素振りは無

く、左手を掲げる。

「ザステン!」

 女がそう叫ぶと、地面から巨大な腕、ゴツゴツとした岩のような腕が出現し、その一振りで

全ての火の玉を薙ぎ払った。

「なに!?」

 それだけではなかった。何時の間にかフェローリアの足が地面にゆっくりと沈み始めていた

のだ。

「くそっ!なんだこれ!」

 地面から引き抜こうとしてもまるで何かにがっちりと掴まれているかのように抜けない。そ

うこうしている内にも身体はどんどんと沈んで行く。

「さあさあどうする?どうする?大人しく付いて来る?そうしたら助けてあげるけど~?」

 女はフェローリアがもがく様子を楽しそうに見ている。

「物覚えが悪いな、おばさん!

「お、おばさん!?私おばさんて言われた!?」

 女は明らかにうろたえている。

「もう一度言ってやる!てめえの思い通りにはならねえ!・・・・・・ヘクト・ブレス!!」

 フェローリアは自信の足元へ向かってブレスを放った。

 ゴオオオオオン!轟音と共に砂煙が広範囲に亘り巻き上がる。

「ブレス!?ブレスなんて吐けるなんて聞いてないったら!」

 濃い砂煙に思わず顔を覆う。そして、砂煙が治まると、

「ん?・・・あ、ああーーー!!逃げてる!?」

 フェローリアは全速力で逃走していた。もうかなり小さくなってしまっている。

「ザステン!ザステン!!何とかしてっ!」

 その呼びかけに対し、地面から声が響いてくる。

(無理だ・・・寒いのは苦手だ・・・・・・)

 フェローリアが逃げ去ったのは雪原の果てだった。

「あーあ・・・こんな簡単に逃がしちゃってぇ・・・・・・ま、元々確認する事が目的だったし?別に本

気で捕まえようとか思ってなかったし・・・帰ろ!」

(フリーミ様がそれでよいのなら、従う)

 女はフェローリアを追わず立ち去った。

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