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黒翼のカナエル  作者: 氷花
不死と希望の悪魔編
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ともだち

 魔獣族不死鳥種。その姿は太陽のように暖かな橙の大きな翼に、最も特徴的な七本七色の美

しい尾羽を持つというのが本来だ。しかし、自身を不死鳥だと名乗ったフェローリアの身体に

は翼も、その美しい尾羽も見られない。それは何故かと問うと、フェローリアは少し俯いて答

える。

「・・・進化、したんだ・・・・・・」

「え・・・しん、か・・・?」

「生き延びるためにな」

 当時の冥界にはとある噂が広がっていた。それは「不死鳥の血肉を喰らえば『不死』の力が

手に入る」というものだった。元々極めて長命な魔獣族であったのだが、自分は『不死』だと

いう肩書きを手に入れて名を上げたいと思う者たちにより、不死鳥たちは有無を言わず狩られ

るようになってしまったのだ。

 不死鳥の数は瞬く間に減少したが、それでも、いや、減ったがこそ競争するように更に狩り

が激化した。このままでは絶滅は免れないとなった不死鳥は、その翼を、特徴的な尾羽さえも

失うという進化を遂げ、隠れて生きてきたのだった。

「それでも今、のこっている不死鳥はおれと母親の二人だけだ・・・」

「え!?た、たったの二人!?」

「だからおれは、同じように絶めつにひんしている時の兎のお前になら全部話せるし、ともだ

ちになれると思ったんだ・・・だめか?こんな理由じゃあ・・・?」

「うん、だめ!」

 ミーニは即答する。

「うぐぅ!」

「だってそれって、同じ絶めつきぐ種の人だったらだれでもよかったってことでしょ?だった

らいやだよ!」

「!!・・・ミ、ミーニ・・・おれは・・・」

「もっとちゃんと私を見てよ!」

 フェローリアは何も言い返すことが出来なかった。

「お、おれは・・・・・・すまん、出直してくる・・・!」

「・・・・・・」

 フェローリアは一言、声を絞り出すように謝ると、逃げるように去っていってしまった。

「・・・ミーニ、追わないのか?」

「・・・・・・うん、追わない」


 フェローリアは家に帰るなり床に飛び込み、塞ぎ込んだ。

「お嬢様?」

 給仕者ベリコが不思議そうに声を掛けてくる。

「一人にしてくれ!・・・すまん・・・・・・」

 そう言うと、足音が遠くなって行った。

 同じ絶滅危惧種なら誰でもよかったのか。言われたその言葉が胸に突き刺さっていた。

(おれは、何でともだちがほしかったんだっけな・・・・・・)

 友達が欲しかったのは・・・・・・仲間が欲しかったからだろうか?いや、自分は今までベリコ以

外の人とは殆ど関わり合ってこなかったから、同年代の人たちと仲良くなりたかったんだ。で

ももし、自分が不死鳥だと皆に知られたとき、その人たちが変貌してしまうのではないかと思

うと怖くて、それで同じ絶滅危惧種の人ならばこの気持ちを理解してくれるのではと思っての

ことだったんだ・・・・・・。

 じゃあ本当に自分は絶滅危惧種なら誰でもいいと思っていたんじゃないか!いやでも、確か

に初めはそうだったかもしれないけれど、ミーニと出会ってからはどうやってミーニに近付こ

うかとか、どうしたら仲良くなれるかとか考えていて・・・・・・でもそれって、ミーニの事を考え

ていたっていうのとは違う気がする・・・・・・どちらかと言えば、ただ近付いて仲良くなる事ばか

りに重点を置いて、相手のことを、ミーニ自身の事を考えていたかと言うと、いいえ、だ。

(やっぱりおれははくじょうじゃないか!自分の事ばっかりのはくじょう者だ!)

 布団に包まり、呻り声を上げた。

 そのまま不貞寝してしまおうという勢いだったが、時刻はお昼時。襲い掛かる空腹に耐え切

れず、部屋を出た。

(ちくしょう、いいにおいだ・・・・・・)

 部屋を出ると直ぐに鼻孔を刺激される。人が悩んでる事なんてまるで気に留める気のない美

味しそうな匂いが食欲を更に増幅してくる。

「あ、お嬢様、起きていらしたのですね」

「ん、ああ・・・」

 フェローリアはテーブルの上の料理を見て涎をすする。

「ですが、お召し上がりにはなりませんよね」

「は?」

「お嬢様はどうやら深くお悩みのご様子ですし、とても食事が喉を通りませんよね」

「な、何を言って」

「安心して下さい。全て残さず私が頂きますので、お嬢様はごゆっくりとお休み下さい!」

「た、食べるよ!!」


「はぁ~・・・・・・」

 腹は満足しても心は満たされない。

「はくじょうなおれなんかにゃあ、一生ともだちなんてできねえよ・・・へへっ・・・・・」

 仕舞いには自暴自棄になる。

「ともだちとか、もう・・・止めちまおうかな・・・・・・」

「お嬢様がそれでいいと仰るのなら」

「・・・・・・そう、だな。・・・何だかよく分かんなくなってきた」

 フェローリアは「ともだち」の事を考えるのを止める事にした。


 後日、学校に登校する。友達の事をもう考えないと決めた事で、心が大分軽くなった気がす

る。もう適当に、気を使わずに好き勝手振舞えばいいのだと思うと、かなり気楽だ。まあ、好

き勝手とは言っても、規則を害するような行為はしないが。

「おはよー!フェローリアちゃん!」

「おはよ」

 少し気だるい感じの挨拶になる。

「ん?何だか今日はいつもとちがうね?」

「そうか?」

「うん、何か・・・・・・」

 相手が神妙な面持ちになり、少しドキッとする。

「やっとフェローリアちゃんを見られた気がする!」

「?」

 その子はそれだけ言うと笑顔で手を振って去って行った。

(おれを見られた?どういうことだ?)

 まるで意味が分からない。

 その後も話し掛けられれば自分の思ったことを口にし、思ったように振舞った。

 体育の時。

「はぁ、はぁ、ふぇ、フェローリアって・・・うんどうしんけいいいな・・・!」

「ま、きたえてるからな」

「しかもぜんぜんつかれてないみたいだし・・・うんどうには自信あったんだけどな・・・」

「きたえ方がちがうんだよ。おれを甘く見んな」

 昼食時。

「はあ~・・・!フェローリアちゃんって、いっぱい食べるんだね!」

 今までは皆に合わせた量で我慢していたが、それも止めた。

「・・・悪いか?」

「そんな事ないよ」

「ん?何だ、それねえ食わねえのか?」

「これ、苦手なの・・・」

「だったらおれが食う!食いもんをそまつにすんなよな!まったく・・・」

「・・・ごめん・・・・・・」

 翌日も、そのまた翌日も、自分の思うように行動した。やはり、自分のやりたいようにやれ

るというのは楽だった。その反面、心のどこかには本当にこれでいいのだろうか?という疑問

や不安があったのも事実だった。それでも態度を更に改めるつもりは無い。

 朝、いつものように教室のドアを開け、入る。すると、

「おはよ!フェロちゃん!」

「おは・・・・・・ん?」

 何か違和感が・・・。

「よう!フェロ!」

「フ、フェロ・・・?」

 皆が何故か急に名前を省略して呼んで来る。心の奥底にあった不安感が大きくなる。今まで

してきた振る舞いのせいで何か、心境に変化を与えてしまったようだ。これが良い事なのか、

悪い事なのか判断がつかない。

「フェロって・・・何だ?」

 恐る恐る訊く。相反してその少女は満面の笑みで答える。

「フェローリアだからフェロ!いいでしょ!」

「あだ名だよ。ともだちなんだからいいだろ?」

「・・・・・・とも・・・だち?おれがか?」

 上手く理解する事ができない。

「は?そりゃそうだろ」

「は、はあ・・・・・・」

「フェロちゃんってかっこいいよね!」

「うんどうしんけいもダントツでいいしな。でもだ!いつかぜったいおいついておいぬかして

やるからな!」

「あ・・・ありがとう・・・・・・へへ・・・へへへへ」

 思わずだらしなくにやけてしまう。

「はははっ!何だよその顔!おもしれえな!」

「あはははっ!あらためてよろしくね!フェロちゃん!」

「ああ!よろしくな!」

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