表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒翼のカナエル  作者: 氷花
勇者と魔王編
PR
102/240

錬金魔法

「もう時間が有りません・・・!」

 カリナが天を見上げ、呟く。正確な時間は分からないが、もう何時落ちてきても不思議では

ない。

「な、なあ!シュリさん!」

「何かねえ、バンリちゃん」

「シュリさんは色んな魔法が使えるんすよね?だったら、あれを何とか出来そうな魔法に心当

たりとかあったりしないっすか!?」

 そもそもの時間制限は空のあれがあるためのものだ。あれさえ何とかなってしまえばもう、

時間を気にする必要も無くなる。

「そんな事言われてもねえ・・・・・・あんなにも膨大な魔力の塊・・・下手に刺激したらそれこそ、そ

の瞬間にドカンといっちゃいそうだしねえ・・・」

 一見、ただの魔力の塊のように見えるが、あれも歴とした魔法である。完成されたそれを突

いて破壊すれば、溜め込み安定していた魔力が不安定となり、暴発、つまりは大爆発を起こし

てしまう可能性は極めて高いと言えるだろう。例え空高くにある状態での爆発であっても、空

を覆うほどまでに成長してしまっている以上、地上にいる自分たちであっても無事ではすまな

いだろう。

「何か、かのうせいのあるまほうはないですか?かのせいがあるっていうだけでいいんです!」

 そう訴えるミーニの表情には、何か考えがあるように思えた。

 シュリには既に一つ、思い当たっているものがあった。それを少し俯きながら口にする。

「・・・『錬金術』って言う技術があってねえ・・・・・・それを使って、あの魔法を別の物に変換する

という方法なんだけどねえ・・・・・・まだできていないんだよねえ・・・・・・ごめん」

 シュリは皆の顔を見る事が出来なかった。それもそのはずだ。シュリはこれまで暇があれば

『錬金術』の研究を行っていたのだが、それでも全く上手く行っていなかったのだ。これを使

えるようになれば、後の戦いにも大いに役に立つと思い、研究をし続けた。しかし結局、見据

えていた北の三姉妹との戦いに間に合わず、此度の魔王との戦いにも遂に間に合わなかった。

皆が成長を見せる中、自分一人が遅れてしまっている。それが情けなくて、申し訳なくて仕方

がなかった。

「それって今、どのくらいまでできているんですか?」

「う、う~ん・・・魔法陣を、『錬金』の効果を魔法陣に持たせるのに必要な文字を纏めた・・・・・・

くらいかねえ・・・だからまだ、錬金の魔法陣を実際に組み立てて描いてみた事も無いし、本当に

思った通りの効力があるのかも確かめられて無いんだよねえ・・・」

 シュリはどんどんと自信を失っていき、大きな溜め息を吐いた。

「それで行きましょう!」

 それとは裏腹に、ミーニは力強く頷いた。

「え・・・いや、だからねえ」

「あんしんしてください!私の力で、上手く行く未来をつくりますから!!だからシュリさん、

お願いします!!」

 さらっと突拍子も無い事を口にするミーニ。それを自信満々に言っている姿を見たシュリは

思わず笑ってしまった。

「はは、あはははは!!何だか随分と頼もしくなっちゃったねえ!・・・分かった、私も大魔法使

いを目指してる訳だしねえ、できないー!なんて、言ってられないよねえ!!ミーニちゃん、

私も上手く行く確立が少しでも高くなるように全力を尽くすから、宜しくお願いするねえ!」

「はい!!」

「それとみんな、魔法陣を組み立ててる間は無防備になっちゃうから、護ってねえ!」

「分かりました!必ず!」

「じゃあ、さくせんかいしです!」


 シュリは頭の中で魔法陣を構築すべく、その場に座り込んで目を閉じ、集中に入る。

「オオオオオ!!」

 何かを企んでいると悟った巨大な狐が咆哮を上げると同時に狐火を纏った、これまた巨大な

錨を無数にシュリへ向かって放つ。

「お姉ちゃん・・・シツライちゃん・・・私が全部、防ぐから!!」

 エンジュの身体から炎が勢いよく噴き出す

「硬炎幻獣・数多ノ大蛇!!」

 巨大な蛇の姿に成形された炎が、迫り来る錨に次々に噛み付き、全てを受け止める。

「こちらからも攻めなくては!」

 カリナは緑の鎖を組み上げ、巨大な剣を生成する。

「緑鎖・爆裂大剣!!」

 振り下ろされた巨大な剣は、直撃すると同時に大爆発を起こす。しかし、

「リフレクト・アンカー」

 その瞬間、瞬時に生成された巨大な錨がカリナへ向かって真っ直ぐに伸びる。

「くっ!」

「タイム・アクセル!」

「うおおお!魂の大盾!!」

 ぎりぎりで間に割り込んだバンリが巨大な盾で錨を正面から受け止める。錨の直撃こそ防ぎ

はしたが、その威力を受けたバンリは軽々と吹き飛ばされ、直ぐ後ろにいたカリナを巻き込ん

で後方へ転がった。

 巨大な狐は追撃を行わんと大口を開ける。

「狐火・閃哮!」

 吐き出された極太の光線は誰ではなく、全員を纏めてその範囲に捉えていた。

「硬炎幻獣・玄武!!」

 全員を内包する巨大で分厚い半球が生成され、受け止める。

「ぐぐ・・・ぬ、抜かれる・・・!」

 光線はエンジュの炎をも燃やし、硬質化を解除しながら掘り進んでいた。

「あたしの盾で・・・!」

「いえ、私が引き受けます。なので、盾を貸して下さい」

 ワンコが半ば強引にバンリから盾を受け取る。

「エンジュ殿、少し穴を開けて下さい」

「え?」

「そうか!わざと逃げ道を作って全壊を防ごうと言うんですね!」

「そう言う事なら・・・お願い!」

「はい・・・防ぎます」

 エンジュは半球にワンコの手にする盾で十分塞げる程度の穴を自ら開ける。その隙間へ光線

が集まり、ワンコの持つ盾へ直撃する。

「ん・・・んん!」

 衝撃で少し後方へ押されるも、耐える。

 すると、光線から狐火が伝い、ワンコの身体へと燃え移り、激しく燃え上がる。

「ワンコさん!!」

「心配要りません。直ぐに慣れます」

 心配する皆とは裏腹に、ワンコは淡々と答える。思わず目を逸らしたくなってしまうほどに

燃え上がってしまっているが、当のワンコは至って涼しい顔をしている。

「さ、流石ですね・・・力を使えば燃え上がる炎も、あらゆるものに対して適応してしまう力の前

では無力・・・!」

 全身を燃え上がらせながら盾を構え続けるその姿は、誰よりも頼もしく見えた。

 そして・・・

「・・・ミーニちゃん、準備できたから・・・行くねえ!」

 シュリは頭の中で組み立てた魔法陣を、空を覆う魔力の塊の直ぐ下辺りに展開する。

「これが私の錬金魔法!『魔生水の陣!!』」

 円形の陣の中に文字がびっしり、所狭しと描かれている。現代文字と古代文字が入り混じり、

陣の中がごちゃごちゃしてしまっている。

 如何にも不完全な魔法陣はやがて、魔力の塊に影響を及ぼし始めるも、直ぐに不安定に歪み

始めてしまう。

「私のばんですね!・・・我、望みし未来を描き、此の時に紡がん!『メイク・ザ・タイム!』・・・

《錬金魔法が無事に役目を全うし、解決に導く未来!!》」

 辺りが一瞬大きく揺れたような気がした。すると、魔法陣は一転、安定を取り戻し、順調に

魔力の塊に作用し始める。

「ひっ!つめたい!!」

 ハワーは首筋が突然ヒヤッとした。ぽつ・・・ぽつ・・・ぽつと、水滴が落ちてきている。やがて、


ザーーー!!


 轟音を上げながら水が降り注ぎ始めた。

「な、何だ急に!?」

「この世界で雨なんて・・・シュリさん、あの魔法は一体?」

 シュリは空を見上げ、驚きながらも嬉しそうな表情を浮かべていた。

「これだよ!これがやりたかったんだよねえ!!」

 シュリは空へ向かって手を伸ばす。

「魔力及び魔法そのものを全く別の物に変換する技術・・・!今回は比較的簡単な元素への変換だ

ったけどねえ、もっと研究を進めればいずれ、魔法を全く別の魔法に変換したり、物質だって

創れちゃうかもしれないんだよねえ!!」

 シュリは誰に説明するでもなくただ、未来の可能性に大きな希望を得て興奮しているようだ

った。

 空を覆っていた魔力の塊はどんどんと水に変換され、大地に落ちていく。塊は確実に薄く、

小さくなって行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ