大狐の真実
「セ、セイムちゃん・・・?」
その事態はシュリたちの目には煙が邪魔をして見えていなかったため、忽然と姿を消してし
まったように見えていた。
「ど、どこいっちゃったんだろう・・・」
煙が晴れ、よく目を凝らしてみてもその姿を確認する事はできない。皆が困惑する中、巨大
な狐はそんな勇者たちを次なる標的に据える。
「き、来ますよ!」
戸惑いながらも各々戦闘態勢を取る。
どうなったの?私は食べられて死んじゃったの?何も見えない。聞こえない。でも、地に足
を着いている感覚はある。
「そうだ!魔力の光で!」
手元に小さな魔力の塊を生成し、微かながら光を得る。それを携えて少し歩いてみる。しか
し、何一つ物体を視認することができない。ここが本当に体内であるのなら、何かそれらしい
音なりなんなりを感じ取る事は出来るはずだが・・・・・・
耳に入ってくるのは、不安と焦りに駆られて荒れる呼吸音のみ。ただでさえ時間が残されて
いないこの状況。こんな悠長に探っている場合ではない。
「やるしか!だよね!」
何処に何があるのか分からないが、そんなのは最早些細な事である。
「出口まで!この拳で突っ切る!無いなら貫いてでも作り出す!!」
帯を多重に巻き込み、大きな円錐を作り上げる。それを前方に向け、推進力を発生させる。
「迅・螺旋錐拳!」
勢いよく真っ直ぐに進んで行く。体内なら直ぐに何かに突き当たりそうなものだが・・・
「と!っとと!!」
遂に何かにぶち当たった。それは破壊できなかったようで、進行を止められてしまった。
「くっ!貫けないかぁ・・・」
「当然でしょう」
「この声!!」
声が聞こえた。直ぐ目の前から。まさに拳の直ぐ先からだ。それもこの声は間違いなくグリ
ムのものだ。次の瞬間、空間が白に染まる。少しして目が白に慣れてくると、その姿を漸く視
認することができるようになった。そこに居たのはやはりグリム。人型のグリムがそこにいた。
「グリムお姉ちゃん・・・!ここは何処なの?」
「私の中」
「あああ~・・・やっぱり食べられちゃったんだぁ~・・・・・・」
元々そうだとは思ってはいたが、改めてそれが真実であると伝えられると・・・・・・セイムは絶
望感に打ちひしがれる。
「と、言うと少し語弊があるけれど」
「え?」
「ここは、正確に言えば『私を模した大狐の中』かしらね」
「えー・・・模した・・・って言うと・・・?」
「そのまんまの意味よ。この大狐は私の姿をしているだけであって、私ではないって事」
「そ、それじゃあ・・・私が幾ら攻撃してもあまり手応えを感じなかったのって・・・」
「そうよ。言うなれば、あなたは家の中に居る私を倒したいのに、家その物を必死で叩いてた
って所かしらね」
セイムは意味を理解し、ぽかんと口を開けたかと思うと、直ぐに納得が行かなくなって声を
上げる。
「・・・そ、そんなの聞いて無いしずるいよーーー!!卑怯だよーーー!!」
「何を言っているのかしら?これはれっきとした魔法であり、作戦であり・・・見破れなかったあ
なたたちの力不足だとは思わない?」
「う・・・ぐぬぬぅ~・・・・・・」
力不足だと言われてしまえばもう、言い返す言葉は無い。
「それに、あなたたちが全く気が付く素振りも無かったからこうしてタネ明かしをしてあげて
るじゃない。むしろ、感謝して欲しいくらいよ」
「うう・・・やっぱり、倒して欲しい・・・から?」
「まあ、ね。私を倒すほどの力を見せて欲しいというのは確かね。目的は他にもあるけれど」
「?・・・他の目的って?」
「そんな事より、私本人を目の前にこんなにくっちゃべっていて時間は大丈夫なのかしら?」
「ああ!!ひ、卑怯!卑怯だよそんなの!!グリムお姉ちゃんが気になる事とか一杯喋るせい
だよー!!」
セイムは慌てて構える。
「ふふふ。言葉に惑わされて今やるべきことを見失ってしまうのも一重に、修行不足よ」
「もうーーー!!やるからね!!」
「勿論。見せて頂戴。その姿になって得た力を。そして私を見事、倒して見せなさい!」




