未来の力
「ミ、ミーニちゃん・・・?」
「平気だよ」
ミーニはそんな姉ハワーに対し微笑んで見せる。
「その力・・・どれほどのものか、見せてもらうわよ!狐火・煉獄!」
再び火の玉が放たれる。
「リターン・クロック!」
ミーニの一声で火の玉はグリムの元まで戻り、大爆発を起こした。
「巻き戻した!?」
「まさか、切り取る以外の時間操作も出来るようになったのかねえ!?」
「はい。でも、私の力じゃ、グリムさんをちょくせつたおすことはできません・・・だから、セイ
ムさん!」
「え?私?」
「はい!セイムさんを私たちの力できょうかします!お姉ちゃん、てつだって!」
「う、うん!」
ミーニとハワーがセイムを挟み込んで向かい合うように立つ。
「我、無限の未来より一を見る。その未来、此の地に呼び覚まし、今と成す!」
「応えよ。応え、来れ、来る・・・!」
セイムの足元に大きな懐中時計のような紋様の魔法陣が描かれる。
「「目覚めよ!一つの未来!タイム・ドロー!!」」
魔法陣がゆっくりと上昇し始める。
「か、身体が・・・!」
セイムは自分の身体が変化していくのを感じていた。ふと、声が聴こえる。
(あ!若い頃の私だ!懐かしいなあ~!グリムお姉ちゃんと戦ってるんだね。一緒に頑張ろう
ね!おー!)
その声が、力が身体に溶け込んで行く。
伸びた髪、九本に分かれた尻尾、溢れ出す力。セイムの身体は大人の姿になっていた。
「すごい・・・!身体中に力と魔力が湧き上がってくる!・・・でも・・・・・・」
「え、何かふぐあいでもありました!?」
セイムは徐に自身の胸部に手を当てる。
「まるで成長していない・・・・・・」
「そこかよ!」
「わーん!こんな未来嫌だよー!知りたくなかったよ~!!」
「まあねえ・・・遺伝だろうから、諦めた方がいいかもねえ・・・」
母親であるライムも、伯母であるグリムも所謂幼児体型と言うやつだ。セイムもそんな事は
分かっていた。分かってはいたが、僅かにでも自分だけはと言う強い想いを持ち、希望を捨て
ずにいたのだった。
「セイムちゃん!前!前!」
「え~?」
振り向くと、物凄い勢いで巨大な錨が迫って来ていた。
この距離では回避する事も強化を纏う時間的猶予も無かった。
「ふんっ!!」
セイムは咄嗟に魔力を込めた右腕で防ぎ、払い除けた。払い除ける事ができてしまった。何
一つ強化を纏っていないこの状態で、ただ魔力を込めただけの腕一本であの巨大な錨を弾き返
せてしまったのだ。
「これは・・・やれる!」
「セイムさん、えんごします!」
「私も手伝うからねえ」
「うん!分かった!ちょっと行ってくるね!・・・エヴォリューション・フォース・シグマ!!」
セイムはグリムへ向かって駆け出して行く。
「フォルムバール・トリープヴェルク!」
推進力を以って空を駆け上がり、
「リンゲ!シュピラーレ!フォルムバール!・・・フェアシュテルカあああ!!」
次々と強化を施して行く。
「空を縦横無尽に駆け回る翼を!シンクロノウス・ウイング・ブースト!」
更に、シュリがセイムの背中に翅を生成する。
「行くよ!!」
「来なさい!セイム!」
セイムは斜め下方の巨大狐へ向けて推進力を発生させ、一気に降下する。
「迅・螺旋剛脚!」
繰り出された蹴りは見事に巨大な顔の眉間に命中する。かなりの威力を誇る一撃のはずだっ
た。だが、蹴りを打ち込んだ瞬間、セイムはほぼ効いていないことを直感した。
「リフレクト・ファイア!」
その瞬間、蹴りを加えた部分からあの青い炎が噴出してきた。
「うわっと!」
セイムは寸前の所でそれを回避し、距離を取る。
「狐火・紅蓮!」
「ええ!?」
すると今度は巨大な口から青い炎を吐き出してきた。
「ひい!?き、狐って火ぃ吐けたっけ!?」
薙ぎ払ってくる炎を必死に飛び回りながら回避し続ける。
「ミーニちゃん、ちょっといいかねえ・・・こしょこしょこしょ・・・・・・」
それを見ていたシュリがミーニに耳打ちする。
「・・・わかりました!」
「それじゃ、行くねえ!」
シュリはセイムへ念話を送りながらグリムへ向かって駆ける。
「猫だってブレス吐こうと思えば吐けるんだよねえ!フォグ・フォックス・シッカー!」
シュリの口から大量の霧が吐き出される。その霧は辺り一帯に立ち込め、視界を奪うと共に
吐き出される炎をも遮った。
「助かったよ、シュリちゃん!でも、そこはフォックスなんだね」
「まあねえ、元々セイムちゃんの技だしねえ。それよりも、セイムちゃん、ミーニちゃん!」
「タイム・カット!」
セイムが前進すると同時に施す。それにより、セイムは一瞬で巨体の腹下へと潜り込む事に
成功する。
「!」
グリムも直ぐに魔力を感知し、セイムの位置を把握し、瞬時に飛び退く。しかし、セイムは
既に帯で作りだした巨大な手で胴体を掴んでいた。そしてその帯の手を炸裂させる。
「烈破・狐拳!」
腹部に帯の炸裂をまともに受け、吹き飛ばされるグリム。しかし、その巨体を軽々翻し、一
回転して着地した。
「烈破・剣脚!」
その瞬間にはセイムの脚に巻き付け生成された帯の剣が迫っていた。帯の剣はそのままグリ
ムの頬を捉えるも、
「やっぱり、効いてない・・・!」
通用している感じがしない。
「まだまだね・・・全然足りないわよ!!」
グリムが剣を咥え、振り回す。
「わあああっ!ぐぅ!破ぁ!!」
セイムは咄嗟に剣を炸裂させ、脚から剣を切り離す。
それにより発生した煙で姿が見えなくなった瞬間だった。セイムの両腕両脚に何かが巻き付
く。そして物凄い力で引き寄せられて行く。そのまま煙を抜けると、そこには大口を開けた巨
大な狐の姿があった。
「た、食べられるぅ!?」
そうわ分かっていても、幾ら推進力を逆方向に生み出しても全く抗う事ができない。
「ひ、ひいいいいいいいい!!」
セイムはそのまま巨大な口の奥底へと消えて行った。




