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第9話:無理なもんは無理、俺の脳は雑魚CPU

「とりま切り刻めるか確かめないとな」


 逆にこちらがご自慢の鋏で切られないように気を付けながら立ち回る。下手に近づけば尖った足で串刺しに、少しでも判断が遅れれば鋏で真っ二つ。こりゃあ弁慶も全身が泣き所になりそうだな。


「俺は弁慶よりも強いけどな! ムーンジャンパー!」


 でも所詮カニはカニ。足が多い分、後ろに振り返るのも遅い。だからこうやって股下くぐって後ろに行けばいいわけよ。


「後ろががら空きですよっと。五月雨突き!」


 まずは体の硬さを確かめるために突いてみることにした。カニだからめちゃくちゃ硬いだろうし、鉱石も取り込んでるなら余計にだ。しっかり俺が戦える強さなのか見極めて、無理そうならガンダで逃げるしかない。


「あ、砕けんだね? 折れるんじゃなくて砕けんだね?」


 刃の先端が当たった瞬間に粉微塵になってしまった。こりゃ無理だ、仮にロックフィストで戦えても手が粉になっちまう。そんじゃガンダで逃げ…


「えぇ……」


 あのね、確かにその可能性はあったけど度外視してたわ。こいつは俺が衝撃を与えたから起きたんだよな? しかも一体だけとは誰も定義してない。そんじゃ周りにいくらいたって不思議じゃないな? でもさ、引くくらいいるとは思わんじゃん?


「あ」


 ━━TIPS━━

 プレイヤーは死亡すると最後に登録したチェックポイントにリスポーンする。もし死んでしまったらレベルや装備を整えてもう一度挑んでみよう、フレンドのプレイヤーに手伝ってもらうのも一つの手だ。一部の敵は特殊な特性や耐性を持ってることもあるのでよく観察してみるのもいいかもしれない。


「…死んだか」


 いやークソだなほんとに。少しくらい看板とかで注意書きしてくれてもいいじゃん、このゲームは初心者殺ししかないんかっての。


「でもぐちぐち言ってても進まねぇしなぁ…ハンマーとか買ってみるか」


 でもこの街の武器屋に鈍器は売ってなさそうだったんだよな、次の街にでも行かないと売ってないのかな…。


「でも今のゲーム内時間夜だろ? 強いモンスターいそー。あんま街の外に出たくねぇなぁ…装備見直すために店に行くかぁ…」


 宿の外に出てみるも他のプレイヤーの姿は見当たらない。やっぱ夜は強いモンスターが出るからみんなそれを狩りに行っちゃってんのかな。でもちゃんと店は24h経営なんだね。


「そこのひとー、ちょっといっすか?」


「え、はい」


 だれだこいつ、プレイヤーか? というかこのゲームにメイド服なんて衣装があるんだ…いやあるか、だってMMO系統のゲームだもん、そりゃあるか。いろいろな考えを思い浮かべながら目の前の女からの返答を待つ。あの岩石ガニどうやって倒そうかな、あの岩石ガニって本当にハンマーで砕けるのかな、あの岩石ガニって討伐報酬美味いんかな、あの岩石ガ(ry


「やっぱりそっか、その刀片持ってるってことは」


「岩石ガニ…あ、え、これ?」


「それじゃあ行くよ」


「え、行くってどこに?」


「一名様ごあんなーい」


「説明不足だってうわ眩し」


 Over Quest

 Remnants of a Legend~序章~を受注しました。


「なんそれ~~~~~!」


 急に手を繋がれて急に行くって言われて急にワープして急にクエストを受注するときたもんだ。新手の誘拐犯と疑われてもおかしくないぞ? ここがゲーム内じゃなかったら絶対捕まってるからな? 俺が寛大な心じゃなきゃ許してないかんな? というかOver Questってなに? いろいろ心の中を整理しているうちに徐々に目の前の景色がはっきりとしてくる。光が落ち着くと同時に現れたのはさっきまでいたアンオールの夜の街とは真反対の活気あふれる昼の街。でも一つ違うのは街を歩いているのは人ではないこと。


「というかどこだよここ! お前誰だよ! あいつらも誰だよ!」


「それはこの後説明すっから、今は落ち着いてついてきてくださいよお姉さん」


「いや怪しい奴について行けっかよ」


「別についてこなくてもいいですけど、帰れなくなるのはお姉さんですからね。俺は一度は忠告しましたけど、どうするるっすか?」


「スゥーーーーーーー」


 俺は無言でついていくことにした。別に死んで戻ればいいと思ったんだがさっき目撃してしまったのだ、ここに降り立った瞬間にチェックポイント更新のメッセージを! だから今死んだとて戻るのはすぐそこ、なんだこのクソ仕様、あと多分あいつNPCだな。


「連れてきたっすよお頭。ったくこいつの何がいいんだか俺には分からんすよ」


「ありがとうなアレス。そしてどうも客人殿、私がこの鍛冶の街クリエイトを統治している大頭。フローリア・レムル・ヘファイストスと申します。どうぞレムルとお呼びくださいませ」


「え、あー、はい。レムルさん・・・?」


 急すぎて状況の理解に時間を要している。俺の脳はスーパーコンピューターとかじゃないんだぞ、普通の人間と同じかそれ以下のカスCPUだぞ。舐めんなCPU風情が。


「それで、客人殿はなぜご自身がここに連れてこられたかご理解いただけてますでしょうか?」


「いえー全然?」


「おやおやそれは。アレス、説明をサボりましたね?」


「だから言ったろ? 俺は連れてくるだけ、干渉はしないって」


「それは無理な話です。この作戦を立てたのもあなたでしょう」


「っ…それは」


 なんだー身内で突きあってんのか? こいつらって仲悪いのかな、レムルさんは全然いい人そうに見えるんだけど、こっちのヤンキーメイドが態度悪すぎるんだよな。これが方向性の違いってやつか、バンドみてぇだな。


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