第10話;ただその空気感が嫌いなだけ
「ではアレスが伝えていないようなので、私から詳しくご説明いたしましょう。まず客人殿がお持ちになったその刀片の説明からさせていただきます」
礼儀がとても良い。初対面だから丁寧に話すってのは当たり前だが、他人の仕事を自分が代わりにやるのはさすがに聖人と言えるだろう。
「その刀片のことを語るには、まずそちらを作った時のことから話さなければなりません。当時、世界は9つの魑魅魍魎によって隔てられ、支配されていました。海、英雄、魔女、侍、龍、堕落、死、偽悪、そして黎明の9つです。これら魑魅魍魎がそれぞれの国を支配し、それぞれの国同士で争っていました」
(なんか多いな、俺話聞くの苦手なんだよな。魔女がなんたらみたいなとこまでは覚えてるけどその先もう覚えてねぇや、まるでダチョウみたいだな。でも俺は歩いてないのに忘れてるからダチョウ以下か)
「ですがクリエイトのみは誰の支配を受けることもなく独立していました、その理由がその刀片です。その刀片はその魑魅魍魎が存在する前から鍛えられ、使い込まれてきた古い古い物でして、その刀片が使われた剣はとても強く、この国でも屈指の強者のみが使うことを許されていたのです。その刀片は魑魅魍魎達と同じく9つ存在していまして、持つ者それぞれが一体の魑魅魍魎を退けていたのです」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください。とりあえず話は理解できたんですけど、これは強い人が使ってた武器の刃の部分なんですよね? じゃあなんでそこら辺のモンスターがこれを…」
「いい質問ですね、今からそれを話します。実は数年前にその魑魅魍魎達が一致団結してクリエイトを滅ぼしにかかってきまして、どうにかクリエイトには進行させまいとその強者たちがどうにかせき止めはしました。ですが相打ちとまでは行かず、こちらの軍勢がやられてしまったのです」
うんまぁそうだろう。そうじゃなかったらこのアイテムがそこらへんの雑魚モンスターからドロップしたりしないはず。ていうかこれ結局クエスト進行アイテムじゃねぇか、やっぱ説明がしっかりとしてないアイテムは死すべし。
「それから何百、何千という期間の間、その刀片は世界を彷徨っていました。ですが今、あなたがそのうちの一つを見つけ、ここまで持ってきてくれました。これは魑魅魍魎達を今度こそ消し去れという神からの天啓、今こそ反撃の時が来たということ。なので客人殿にはぜひ協力していただきたいのです。協力していただけるならその刀片を差し上げますし、クリエイトにある施設すべての費用をこちらで負担いたします。どうですかな?」
めんどいことを頼まれたな。なんでゲームというのは知らない街の知らない人のために知らないやつを倒せと言ってくるのか。と、いつもの俺なら謎に逆ギレして断ってただろうが、今の俺は違う。今はとても戦いに飢えている、自分の限界を超えた戦いにいどんでみたい。それに強い武器が欲しい。
「分かりました、その依頼受けましょう」
「よい返事が効けて良かったです。アレス」
「なんだよお頭」
「手配を頼みましたよ」
「はぁ…りょーかい」
「あぁそれと、客人殿の付き人も頼みました」
「はぁ!? なんで私がこいつの相手しなきゃいけないんだよ!」
「まぁまぁ落ち着きなさい。その代わりそれ以外の仕事は別の人に回しますから」
「だからって俺に押し付けてくんじゃねぇよ」
「でもいつもよりは仕事が減ると思いますよ」
「あぁもう分かった! ついてこい客人」
本当にこいつだけは態度が悪い。レムルさんはどうやってこいつを手名付けてきたのだろうか、さっき見た感じ手名付けられてなかったけど。よくここまで従わせてきたよな、やっぱ人格者なのかな。いろいろ文句と疑問を脳の中で流しそうめんしながら一個ずつ考えることにした。さっきの話で出てきた9体の魑魅魍魎とやら、どれだけ強いのかは予想がつかないが少なくとも一般ボスよりは強いという認識でいいんだろう。そしてこの刀片、これを使った武器はとても強いと言っていた。ならこれを使って武器を作ることが可能ということ。きっとクリエイトのどこかにそういうことができる施設があるだろうからあとで探しに行こ。あとは…
「ついたぞ客人」
「え? あのーここって」
「ここはお前が寝泊まりするための寝床だ。クリエイトの中心すぐそばにあるからレムルにもすぐ会いに行けるぜ」
(え、急に呼び捨て? さっきまでは「お頭」と呼んでいたからてっきりあっちが上でこの人が下かと思ってたんだけどそういうわけじゃないのか?)
「あとさっきは悪かったな、悪い態度とっちまって。俺はああいう堅苦しい空気が嫌いでよ、ついイライラしちまうんだ。別にお前とかレムルにイラついてるわけじゃないから誤解しないでほしい。とりまこれからよろしくな、客人。いや、ずっと客人呼びも失礼か、お前なんて名前だ?」
「えっと、クロノスっていいます…」
「そんじゃ気軽にクロノスって呼ばせてもらうぜ、敬語とかの堅苦しいのも嫌いだからな。お前も呼び捨てでいいぜ」
会って数分なのに呼び捨てというのはなかなか失礼だとは思うが、俺も敬語は苦手だ。入学の面接もところどころタメ語が出て焦ったこともあったなぁ。まぁそんなことは置いといて、あっちが敬語じゃなくて呼び捨てでいいってんならありがたい、俺もそっちの方が話しやすいしな。
「じゃあ俺もアレスって呼ばせてもらうぜ」
「おう、よろしくな!」
ただ堅苦しいのが嫌いなだけのめっちゃいい子だった。多分あれだ、学校ではオラオラしてるけど放課後とかに捨て猫の世話とか、困ってるおじいちゃんおばあちゃんを助けるタイプの優しいヤンキーだ。ごめん、さっきまでえぐいくらいめちゃくちゃ言ってた。




