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第8話:最初のクエストはとても苛立つ

「やっべ遅刻! ってはぁ…俺の体はなんで一回で夏休みだってことを理解できなんだ?」


スマホの電源を入れると画面には7:42と表示されていた。アラームは7時までしか設定していなかったので意味はなかったが、就寝前エナドリ作戦のおかげで初日から良い記録で起きることができた。これくらい健康な時間で起きれれば十分。


「さて、それじゃ5時間休憩しましたし? 早速INしちゃいますかぁ!」


『The moment for a decision always arrives suddenly.』


「なんか前と言ってること違くね?」


━━TIPS━━

第一の街アンオール、レンガ造りの建物が多く並ぶ城塞都市。街中はいつも活気に満ち溢れ、人々の笑顔であふれかえっている。真ん中の城には現在第23代目女王が住んでおり、年に一度だけ城の門を開いて宴を開く。宴の開催は近い、どうぞその宴に身を任せて踊るといい。


「ひっっっっっろ! え、えぇ? 昨日来たときは気にしなかったけどさ、広すぎんだろぉぉぉぉ!」


大声で叫んだせいで多くのプレイヤーやらNPCやらが全員こちらを向いてきたので、あくまで叫んだのは私ではありませんみたいな空気感を出したらなんか耐えた。いや公共の場で大声を出すのはよくないってわかってはいるけど、俺の精神が叫ばずにはいられなかったらしい。


「ふぅ…とりあえずこの大量の素材を売って、その金で武器か買うなり作ってもらうなりするか」


タウンマップを開いて少しズームすると、いろいろな建物の上にアイコンが現れた。これは宿、これは鍛冶屋、これが集会所、これが質屋か。とりあえず質屋に行って全部換金してもらわなきゃな。ならえーっと、あっちに進んで、三つ目の曲がり角を左ね。忘れる前にさっさと向お。


「んじゃあ合計7300テラスだな。あとこのボロは買い取れねぇ」


と言われて突き返されたのは持ち手のない刀片だった。売却用アイテムではないとしたら後なんだ? レアな武器を作るのに使うとか? それともただのゴミか?


「んだぁこの刃、ボロボロの錆び錆びじゃねぇか」


「そこを何とかできたりしないですかね…」


「無理だ無理、こんなの研いでらんねぇ。いいか、俺の本業は武器を作ることだ、研ぐことじゃねぇ。次来るときはしっかりと武器の材料を持ってくるんだな」


武器を作る材料でもないと来た、やっぱりゴミなのかもしれない。でもアイテム捨てることできないしなぁ。インベントリを圧迫するゴミとか産廃以外の何物でもねぇ。


「ま、とりあえずこれだけ揃えてみたけど」


=====

装備

頭:翡翠の髪留め

胴:決怪のコート

腰:決怪のズボン

足:灯烈のブーツ


決怪セット効果

武器の鋭利度が最大の時、斬撃攻撃のダメージ5%UP

=====


「ブレイダーと相性良すぎだろこの装備、かっこいいし。しばらくはこれで固定だな」


アイテム売ったし、鍛冶屋で間に合わせの武器も買ったし、装備も買い替えた。となるとこの街であと行ってないところは…ここしかないな。


「やっぱりRPGと言ったらクエスト受注して素材集めるしかないでしょ!」


俺は集会所にやってきた。ここは数多のプレイヤーが集まってパーティーを組んだり、クエストを受注するところ。まぁソロパの俺において前者は不要なシステム、メインはクエスト。基本的に報酬金もうまいし、素材もわんさか手に入る。初心者にとっては素材大量ゲットのチャンスだし、集会所の人と中を深める機会にもなる。まさにwinwinてやつだな。


「しょっぱなからあまりにも難しいの行ってもクリアできないし、かといって簡単すぎると金がなぁ」


掲示板に張られた依頼書を悪人かのような目つきで睨み続ける。あれでもない、これでもないとなかなかいいクエがない。どうしようかと突っ立っていると横から横幅の大きい男が入ってきた。


「ほら邪魔だ。どいたどいた」


「あぁすんません」


「ったく…」


あきれた様子で男は去っていった。態度悪すぎだろあいつ、ここたくさんの人が集まってるんですけど? 少しイラつきながらも男から掲示板へと視線を戻すと新たな依頼書が増えていた。


「さっきの奴が貼ってったのか?」


依頼内容は収集クエスト、この街の東にある洞窟にあるレアな鉱石を三つ収めるというもの。他の採れた鉱石や余分に取れたレア鉱石は自分の物にしていいとのこと。報酬金はないが、これなら武器を作る素材も集まるし難易度も高くないだろう。


Quest

鉱石の採掘を受注しますか?


「Yes。ささっと採集してきてやんよ」


迷わずYesのボタンを押すと依頼書が青白い光になって、俺の体に吸収された。そして目の前にクエストを受注したという旨のメッセージが表示された。これで無事受けられたようだな。


「うっし、軽く30分くらいで帰ってくるぜ」


━30分後


「ロックフィスト!」


入手

鉄鉱石

鉄鉱石

鉄鉱石

小石


「…なんで最後の一個で全然出なくなるんだぁぁぁぁぁぁぁ!」


多分世間体的に言う物欲センサーと言われるものだろう。人間欲しいと思えば思うほどそれが手に入りにくいようにできているんじゃないかと疑いたくなるほどに出なくなるこの現象、一説では遠隔操作を食らってるという意見もある(俺調べ)。


「おいこれ遠隔だよ遠隔! 見てんだろ運営!」


プレイヤー一人一人の行動のログくらいは取っているかもしれないが、一人一人を監視するほど暇じゃないだろうし人が足りねぇよ人が。ツッコミを入れながらも鉱脈を見つけては拳で粉砕し続ける、拳で壊しているから道具が壊れる心配がないのが唯一の救いか。


「はぁ…ここら辺の鉱脈は堀つくしたし、別のところに行ってみよっかなー」




気分を変えるためにも別の洞窟に行って掘るが効果なし。このクエストを始めてからかれこれ3時間が経過した。最初は30分で終わると意気込んでいたが普通に嘘、クソクエだこんなの。


「あーーーーもう! ほんとぶっ〇してやろうかな。ロックフィスト!」


とうとう忍耐の限界が近くなってきたのか、少しイラついていつもより強く鉱脈を殴った。でも音が違った。いつもなら金属に当たったような甲高い音がするはずだが、今回は低く響くような音だった。しかも鉱脈も崩れずアイテムもドロップしない。そして急にその鉱脈の周りの地面がせり上がり始めた。鉱脈を中心として大体半径10mが持ち上がり、巨大なカニ、いやヤドカリ? とにかくでかい鋏が付いたモンスターが現れた。


「あー、そういう擬態モンスターもいる感じー?」


イライラのせいでリアクションがとても薄くなってしまった。今はでかいモンスターが出てきて驚くよりも、最後のレア鉱石が出なくてイラついている方がかなり大きい。だが一応敵は敵、何もしなきゃ当然やられるのでイライラを発散するために剣を抜く。


「もう八つ当たりだ、お前を粉々にしてストレス解消してやる」


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