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第4話:ゲー廃としての生き方、その考え

「一日にしてこれだけ進むってちょっと調子がいいんじゃないですかね。これも才能かな!」


 レベルも10以上上がり、一番最初の街まであとちょっとといったところ。あとは山にある大穴を抜けるだけ。大穴と言っても反対側までの距離は1kmあるかないかくらいだからそこまで時間もかからないだろう。


「推奨レベル8ね。余裕で超えちゃってるからここも余裕でクリアできるっしょ」




 洞窟というものだからもうちょっと中は暗いかと思ったが、壁から生えている宝石のようなものが光り輝いてとても明るい。レースカーテンを通して部屋に入る太陽の光くらいの暗さ。これなら足元見えなくて転ぶとか言うダサいことはないだろう。もとより人にまだ会ってないけど。


「でも敵はいるんだよね~。人には会えないのにモンスターには会う、本当にオンラインゲームかこれぇ?」


 でも実際人にはまだ会ってないんだよな、単純に俺の初期リスが悪かったか? とか考えつつも目の前に現れた敵の対処に思考を回す。丸い岩石みたいなやつに顔が付いたボウリング玉みたいなやつ、攻撃受けたらかなり痛そうだ。こっちは攻撃ブッパなんでね。だがこういう敵は基本的に斬撃攻撃や刺突攻撃が通りにくい傾向にある、つまりここでは打撃攻撃のロックフィストを選択するのがベストってわけ。そしたらほら。


「ざっこ! 体は石で出来てるのに本当は脆い雑魚なんて、なんかの冗談かよ。「コロックのつぶて」だって? お前コロッケみてぇな名前してんな」


 と、少々煽りも加えながら洞窟を進んでゆく。道中で何回かコロッケ……間違えた。コロックに遭遇したが全部殴り飛ばして木っ端みじんならぬ石っ端みじんにしてやった。ミンチにすれば揚げて食えたかもしれないな、なんて。


「あれ、すいませーん」


「ん? あぁプレイヤーか」


「うぉプレイヤーだ! 俺初めてまだ数時間で、初めてプレイヤーの方に会いましたよ! 道中本当に会えなくって!」


「おぉそうか、なら会えてよかったよ。だがここの最奥には残念なことにそのプレイヤーがいっぱいいるぞ」


「え、なんかあったんですか?」


「それは自分の目で確かめてきな」


 もったいぶらず話せってそこは、そこためらう場面じゃないでしょうに。だがこういうやつは大体何言っても話してくれない、言われた通りさっさと自分の目で確かめに行くか。




「なんじゃこりゃ、まるでプレイヤーのバーゲンセールだな」


 多分ここが洞窟の最奥、本来ならその先に光にあふれる最初の街が見えるはずなんだが…見えるのは困った顔をしているプレイヤーだらけ。壁にもたれかかって考えているような人、横たわって絶望してるみたいな人、俺と同じように何が何だかわかってないような人まで。とりあえず俺はその場にいる人に話を聞くことにした。


「すいません、ここってなんでこんなにプレイヤーがいるんですか?」


「君も初心者か、僕たちも困っていてね」


 するとそのプレイヤーは洞窟の果てにある一つの暗闇を指さして続けた。


「あの穴の先にはエリアモンスターがいる。あいつを倒さないと最初の街にはたどり着くことができない」


「じゃあ早く倒したらいいんじゃないですか?」


「僕たちもそうしたいところなんだが、正直今日は諦めだ。あそこの推奨レベルは15だが、ここにいるプレイヤーのレベル平均は17。推奨レベルを超えている人が多いんだが、エリアモンスターを倒せないんだ」


「そんな強いんすか? 運営の調整ミスとかじゃなく?」


「リリース時からエリアボスには調整を入れてないらしいからな、ずっと同じ強さらしい。ここを乗り越えたプレイヤーからは魔の第一ステージとも呼ばれてると聞く」


「へぇ~ありがとうございます」


 なるほど、さっきのプレイヤーはレベリングのために洞窟内を探索してたのか。だがそう思うとゲー廃としての心が衝動を抑えれなくなる。みんなが倒せない強敵、それを俺が、推奨レベルにも達してない俺が。


「倒してみてぇ……」


 そして意識しないうちに足が勝手に暗闇へと吸い込まれていく。自覚はない、ただゲー廃としての本能なのか、自然に武器を握って手をかざす。


『推奨レベル15 エリアモンスター:延腕のネルネルラに挑みますか?』


「決まってるだろ、迷わずイエスだ」


『挑戦の意思を汲み取りました。先へお進みください』


「やってやろうじゃねぇの。多くのプレイヤーを困らせているというモンスター、その姿を俺に見せてみろ」


 暗闇をまっすぐ歩いてどんだけ強いのか、どれだけ楽しませてくれるのかと期待を高めに高めて歩く。次第に武器を握る力も強くなり、いつ出会っても戦闘に入れる態勢。だが暗闇から抜けたときに現れたのは、「延腕のネルネルラ」という二つ名がついたエリアモンスターには釣り合わない見た目、というか釣り合わないようなモンスターだった。


「なんで雑魚モンスターがここに」


『エリアモンスター:延腕のネルネルラに遭遇しました』


「え、遭遇? まさか…スライムがエリアモンスター?」


 そう、スライム。ゴブリンに並ぶ超有名で典型的な雑魚モンスター。序盤ではプレイヤーに殺されまくってレベリング要因に、少しレベルが上がった後だとうざったらしくて無視するほどの雑魚。こんなやつがここで何人ものプレイヤーを足止めしていると考えると面白くなってきた。


「というかいざ立体で目の前で現れるとなると気持ちわりぃな。なんか質感というかそのヌメヌメしてる感じが余計キモイ」


 だがこいつを倒さない以上この先には進めない。スライムがどうやって数多のプレイヤーを足止めしてるかは分からないが、警戒しつつ攻めるのみ。


「んじゃ前置きはこれくらいで。初めてのボスモンスター、お相手お願いします!」

エリアモンスター

それぞれのエリアやロケーションに用意されているボスモンスター。そいつを倒さない限り新しいエリアには進めず、冒険における一つの大きな壁になっている。その中でも第一エリアボスである延腕のネルネルラは既クリア者からは魔の第一ステージと呼ばれ、いまだに何日もそこで停滞するプレイヤーが後を絶たないという。

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