第3話:Q.レベル上がりますか? A.上がります
はっはっはー、もーりもりもり。お前も森にしてやるもりよ~? もーりもりもり…
「じゃねぇよ! 森でけぇよ! 全体的に木がでけぇよ! 何ですか、ご神木かなんかですかっての」
草原を歩いていき、森に辿り着いて歩き始めること数十分。長い。というよりも景色が変わらなくて面白味がない。ずっとご神木くらいでかい木がずらっと不規則に並んでいるのを見ながら、地図通りに街に向かって歩き続ける虚無な作業ゲー。これのなにが面白いのか俺には理解できない。
「あーもう! 現代のゲーマーは同じことの繰り返しができないような脳の構造になってんの! 俺も例に習って無理なの! すげぇよ放置ゲーとかクリッカーゲームを続けられる人たち、マジリスペクトだわ」
「キシャシャシャ」
「あ? 今ちょっとイラついてるから相手はあとで……」
「キシャーーー!」
「…敵だーーーー!!!」
一見事件性のある叫びにしか聞こえないこの咆哮は、俺にとって歓喜の雄たけび。単純作業の真っただ中に差し込まれる初めての接敵、砂漠のオアシス的存在。一瞬で眠りかけていた脳が活性化して目が覚め、心が高揚する。
「初めての接敵は小型の獣か! いいね~、ゴブリンだったり雑草みたいなモンスターを想像してたけどこれもこれでいいね~」
モデルからして狼系統、ニホンオオカミか。とりあえず狼なら何でもいい。まぁ50cmほどのちっこいちっこい赤ちゃんサイズだが会えただけでもうれしい、倒すのはちょっと気が引けるが。
「お前が俺の初めての犠牲だぜ。遠慮はいらねぇ、全力でかかってこい」
「キシャシャシャシャー!!!」
真正面から突進とは、さすがは初心者帯のモンスター。やることが単純で分かりやすい、これなら一発で狩れる。……あれ、スキルの使い方ってどうするの? スゥー…ちゃんと取説読んどくんだった!
「うわーーーー!!!」
ペチペチ
「……は?」
「シャーーー!」
ペチペチペチペチ
「………うむ、そういうことか」
確かに前足で殴られていて、しっかりと痛みはある。だがHPが減っていない。おそらく戦闘に慣れさせるためのチュートリアル、攻撃を受けても死なないようにダメージを0に設定しているんだろう。身構えて損したな。
「でもゆっくりとスキルの発動方法を読めるな」
━━TIPS━━
スキルを使いたいときは使いたいスキルを大きく声に出すと発動できるぞ! パッシブスキルは声に出さなくても発動するが、効果に宣言時に発動と書いてあるものに関してはしっかりと声に出さねばならない。声に出す理由? 技名は叫んだ方がかっこいいからね。みんなもスキル発動じゃぞ~!
「なるほどなるほど。え、叫ばないかんの? え、意識と連動して自動発動とかではなく? え、恥ずかしー」
でもゲームシステムに抗うことができる者はいない。プレイヤーはもちろん、開発者でさえもゲーム内のルールに逆らうことは許されないのだ。あ、開発者モードとか言う公式チートはそこらへんに投げといてね。
「ちょっとばかし恥ずかしいが試しにやってみるか。動物を殴るのはなんか気が引けるから一閃を試してみよっかな。一閃とかいう名前だしどうせ切断するみたいなスキルだろ」
何もない空間で手のひらを上にするとポリゴンが宙を舞って手に収まり、質素な石剣を生成した。武器を出したいという意思に連動して手のひらに現れたのだろう。重量も質感も現実に近い出来栄え、現実とゲーム空間の区別がつかなくなりそうだ。
「それじゃあ犠牲第一号として受けていきな狼。一閃!」
少しかわいそうだが子供狼の背中に力強く石剣を一振り。その一撃で子供狼は真っ二つになりピクセルとなり消え去った。場に残ったのは四角く切り取られた毛皮、おそらく先ほどの子供狼のものだろう。
「なんか申し訳ねぇな、あんな小さい動物を殺すなんて」
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LvUP
1→2
スキルポイントを3ポイント入手しました。
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「おぉーレベルが上がったな、そしてステータスは自分で振って鍛えていくタイプね。自分の戦い方と好みでステータスをいじれるのがいいんだよな。あとは」
地面に落ちていた毛皮を拾うと「ヤングウルフの毛皮」と表示されインベントリに格納された。ドロップアイテムも持つだけで収納できる感じらしい。これってインベントリに上限あるのか? ないんだったらしばらく狩り続けて序盤からアイテム売りまくって金稼ぎたいんだけど。だがこんな下級モンスターの素材は値段が付くどころか買い取ってくれるかも怪しい。確証がないんならやめとくべきか。あと結構断面グロかったぞ、本当にR12か?
「とりまポイントはATKブッパかな、こうしたほうがレベリングしやすいし」
そうして俺はこの森で大量のモンスターを狩った。さっき倒したヤングウルフ、牙がクリスタルな蜘蛛、針をすごい飛ばすゴミ、殺意マシマシ落ち武者などなど。この森だけでもビュッフェくらいの種類のモンスターがいた。怖いことにこれで埋まった図鑑はたったの3%。図鑑をコンプしようと思うと先が長い。
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クロノス Lv.13
職業:ブレーダー
HP:50 ATK:46
DEF:10 MAG:10
AGI:10 HAR:5
POT:30
スキル
一閃
ロックフィスト
五月雨突き
ジャストカウンター
ムーンジャンパー
武器
右手:失敗作の打刀
左手:なし
その他:なし
装備
頭:なし
胴:質素なシャツ
腰:簡素なパンツ
足:なし
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「もうちょっと他のステータスに振った方がよかったか?」
上がった12レベル分のスキルポイントをすべて攻撃に全ツッパした。正直攻撃など当たらなければどうということもないし、魔法も使う予定ないし。とりあえず序盤は火力だけでなんとかなるだろうと思っている。
「でも結局これ一本しか落ちなかったなぁ、結構レアアイテムなのかこれ?」
フォールムシャを倒したときに一つだけドロップしたアイテム「持ち手のない刀片」。刀の刃の部分が丸ごとみたいな感じのアイテムだが、名前の通り持ち手がない。攻撃力とかが書いてあるわけじゃないから武器ではなさそうなんだけど。あれかもしれない、売却用アイテムなのに何かに使えますよ的な雰囲気を醸し出してるタイプかもしれない。だとしたら俺はユニフォエール社の開発担当の人を全員殴り飛ばしに行く。もし売却用ならフレーバーテキストに「巷では高価で取引されているらしい」とか書いといてほしいわ。
これあれかな、自分の中での何話かを一つにまとめたほうがちょうどいいのか? 一話1500くらいだから4500になるの? それでちょうどいいのか?




