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主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?  作者: 玉響なつめ
第九章 だからいやだっつってんじゃん

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 偉い人同士がどう話し合ったのかなんて知らない。

 なんかしらんけどカーリーン王女が私を見るなり罵倒してきたけど知らない。


 いやー、安全に人里まで連れてきてあげたこともあるのにおかしーなー。

 途中から疲れちゃったから騎士に託しちゃったけど、それでも親切だと褒めてもらってもいいと思わなぁい?


 白々しいって?

 しらんがな!


 カーリーン王女は私じゃなくてシリウスを睨んだ方がいい。


(まあそもそも言い寄ってフラれただけじゃなくて、恋人ができた段階で望みは薄いんだから諦めなよって話なんだけど……)


 どうして私の周りはどいつもこいつもこう粘着質なのかなあ……。

 私がドライなのか? え? 私は一般的な感じだと思うんだけどね?


(……そうでもないか)


 私がドライなのはどっちかってーと性格云々以前に、生育環境にあったわ。

 暗殺者稼業の下っ端なんて一期一会が当たり前、昨日の同僚は今日にはいない……なんて日常茶飯事だったからね。ハハッ。


 そういう意味ではノクス公爵家の人たちは王都の貴族たちに比べると厳しい土地柄もあって、自分たちが前線に出るもんだから大切な仲間や家族を失う経験が身近ゆえに「これだ!」って思ったら大事にしまくるのかもしれない。


 アナベルも離れて暮らしていた割に、そういうとこがチラホラみられるしね……。

 サフィアン王子が好き好きビーム出してるからあんまり目立ってないだけで、メイドさんたちしかサフィアン王子の傍にいない時は若干シリウスと同じような目をしてるもん。


 それを考えるとやっぱ血筋なのか……?


「ところでシリウス」


「なんだ」


「今日は真面目な見送り(・・・)のはずなんだけどなんで私は肩を掴まれてんのかな」


「肩を抱いてるんだが?」


「言い方変えるだけで雰囲気変わるんだから言葉って便利!」


 掴まれてる肩がギシギシ言うてますけど!?


 結局のところ、カーリーン王女とルーラント卿は連れて帰られることになったんだよね。

 どうやらあちらの国でも期日までにシリウスを口説けなかったら連れ帰って当初の予定通り二人を結婚させるってことになってたらしい。


 でもこれって正直なところ言うとかなりな恥らしいのだ。

 カーリーン王女は自分からルーラント卿をフっておいて嫁ぐわけだから、社交界じゃ笑われること必須。

 ただ相性が合わなかったからとかじゃなくて、他の男に求婚しに行ってフラれた挙げ句だからね……。


(まあそれを言うと何度もフラれた挙げ句に諦めきれなくて海を渡ってまでフラれたという壮大な話でもあるので、その分……ね)


 可哀想だがそこは自業自得。

 でもってルーラント卿はそんなカーリーン王女を妻にするというのがまた地獄。


 元々婚約者だったとはいえ、相性がよくなかったのは周知の事実らしい。

 王族が嫁ぐのは栄誉と言えば栄誉、けど公爵家を守るのにカーリーン王女という王家の庇護は必要か? っていうとクレイ公爵家はそんなの必要としていない。


 なら必然的に、次期公爵としては役に立つ嫁……つまり私みたいな特殊能力持ちの方が望ましかったわけだよね。

 なら密やかにやれよっていう話なんだけど、なんとルーラント卿。


 頭が悪い。おっと直球すぎた。

 あまり深謀遠慮に長けたタイプではなかったことがここに来て発覚。


 カーリーン王女があんまり我が儘を言わないなら長男であるルーラント卿と婚姻して公爵夫人として体面を保てるよう王家としても全面的なバックアップをする予定だった。


 でもカーリーン王女が嫁がないなら、ルーラント卿にはまあなんか色々あれやこれやして、次男に家督を継いでもらって騎士団の方で活躍してもらう……方が本人のためにもなるし、っていうまあるく収まるよう周囲が動いていた模様。


 知らんがな。

 海を跨いだ国の、まるで関係ない人たちの事情なんて知らんがな!!


 ってなわけで長年、男児が生まれるまでの中継ぎ王太女を務めたカーリーン王女には温情があったわけだ。

 その婚約者であったルーラント卿にも。


 でもよその国でこの醜態を晒したからにはもうそんなことナシだ! ってことで国につれ帰ったら有無を言わさず一代公爵の地位を与えて王領地に住まわすんだってさ……。


 何故かそれを私は切々とルーラント卿に説明され、涙のお別れをされたもんだからこのようにシリウスの機嫌が悪い。


「私! 悪くないでしょ!?」


「そうだな」


「いだだだ全然思ってねえなコイツ恋人をなんだと思ってんだ大事にしろこらァ!」


「大事にしている。肩が砕けても俺が世話をするから安心しろ」


「肩を砕くなっつってんですけど!?」


 もうやだこのヤンデレ!

 イケメンだからって私を囲い込むのに手段を選ばなくなってくんのどうにかならないかな!?


 穏便にこいよ、穏便にぃ!!

穏便ならいいのか?っていうところがセレン。

次回、エピローグ。

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