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「折角だからデートして帰ろう」
「いやあ、うん、ソウダネー……」
今はまだ可愛い大型犬、そうこれは大型犬。
扱いを間違えたら一気に引きずり倒されて巣穴直行コースだから気をつけなければ。
「ところでオウジョサマ、なんであんな嫌われてんの?」
「そりゃ穀潰しだからだろう。別に客人や、戦えない人を馬鹿にするつもりはないが……あからさまに優遇されて当然って態度だけされてれば嫌にもなる」
「ああー……」
むしろ彼女はいずれ自分がこの北部の女主人になるんだから! って普段からすごい態度で使用人にも騎士にも、なんだったら町に出て一般の人々にも言って回っていたらしい。
ある意味で鉄のメンタルだな……!
普通ある程度のところで周囲の反応に気付くでしょ。
いや、王族としてずーっと上に立って当然というメンタルだから、ちょっとした反発も『有能で美人なわたくしへの嫉妬ね』とかに変換できるのかも……?
あり得そうだ、あの人なら。
「……北部の騎士たちの仕事の邪魔にはなってないの?」
「そこは俺を犠牲にすることでなんとか」
「自分で犠牲って言う?」
「サフィアン様にも言われたからいいだろ」
「あは、酷い話」
「本当にな」
まあ本人にこれっぽっちもその気がなく、また北部の事情なんてものを欠片も考えない自称婚約者のオウジョサマ(しかも他国)が傍若無人にしていたらそりゃ気苦労も絶えないか。
これで実際カーリーン王女とシリウスが互いに仄かでもいいから恋心があって、それが忘れられない……! とかだったら途中で出会った私が捨てられたのも運命の三角関係とかそんな風に物語では描けるのだろうけど。
(実際はシリウスにその気はこれっぽっちもなくて、一方的にカーリーン王女に想いを寄せられてうざったくすら思ってるんだから笑っちゃうよね)
しかももしこれで私がシリウスの想いを受け入れていなかったら、一方通行の三角形ができあがるっていう……何それわらえなーい。こわーい。
「まあいいか。ねえ、そろそろあの人たちの迎えが来るんでしょ?」
「そのはずだ」
「……ところで今日、ルーラント卿の姿が見えなかったけど。まさかあの王女様一人で我が家に向かったとは思えない。転移陣を使う許可を与えたの?」
「まさか」
フッとシリウスが冷たい笑みを浮かべた。
私の手を取って、歩き始める。
どうやらここでは話せる内容ではないらしい。
っそりゃそうか!
「……ま、私としては元の穏やかな暮らしに戻ればなんでもいいよ。シリウスもそっちの方がいいって言ってくれるでしょ?」
「ああ、勿論だ。そろそろ家庭菜園もしたいって言ってただろう?」
「北部の庭で育つ植物ねえ」
「なんだったら結界を張るのもありだ」
「もうなんだか自然に逆らいすぎでは」
「セレンが喜ぶならそのくらい安いものだろ」
「世界の理に挑もうとするの止めてくれない?」
相変わらずこの男の愛情が大きくて重すぎる。
カーリーン王女は、こういう愛情が欲しかったのかしらねえ……。




