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「とりあえずわかってんのは、あの二人はイカれ……おっと言い過ぎた、自分たちの優位性を疑ってないってことよね。おかしくない?」
「それはサフィアン様も思っているようだ」
「シリウスの目から見たらどう?」
「……そうだな、何故か絶対の自信を持っている。おかしな話だ」
「そうよねー」
たとえば、だ。
私がシリウスに一方的に請われて閉じ込められているというのであれば、まあ、ルーラント・クレイの言に乗っかる可能性はなくもない。
だがそれだって『お前を体のいい召使いにするために結婚までしてやるんだろ、俺優しいでしょ』ムーブにこの私がのっかんのか? って話。
これが普通に『高賃金好待遇、三色昼寝付き無理なお仕事はさせないよ!』なら迷うところである。うむ。
まあでもあくまでそれは、大前提である、私とシリウスの関係が破綻していた場合のみだ。
(関係が良好なら、絶対そっちの方が待遇いいし)
貴族になりたいわけじゃないから、跡取りじゃないシリウスの方がむしろ都合がいい。
自由があるもの。
あくまでシリウスが一緒ならっていう制約はつくけど、それでも好き勝手出歩いて買い物して、旅行とかだってできちゃうわけだしね。
夫婦生活って考えたら日中はシリウスもちゃんと仕事に行っているし、私の所在地を魔法で常々チェックはしているだろうけど……まあそのくらいなら許容範囲内だし。
「それに嫌がらせというにはカーリーン王女の嫌味くらいだし、ちょっと肩透かしって言うか……変だよね」
「ああ」
贈り物はさすがに嫌がらせにカウントしないでおこうと思っている。
こっちが望んでいないのだから嫌がらせだと思ってもどこからも咎められないとは思うけど、一応あっちからしてみたら一生懸命(?)選んだ品だろうからね!
それを嫌がらせって言うのはちょっと……人としてアレかなって……。
いやまあ喜んで受け取るわけじゃないので、私たちからしたらイヤゲモノなんだけども。
「やっぱり後ろになんかいるのかなー?」
「さあな。いずれにせよお迎えが来るまで適当に相手をしていればいいだろう」
「暗殺者が来るのかとちょっとワクワクしてたのになあ」
「なんだ、顔見知りに会いたかったのか? 残念ながら再会と同時にお別れになるが」
「物騒だね?」
「俺のセレンを狙ったんだから当然の結末だが?」
相変わらず自分の懐に入れたものとそれ以外が極端なんだよなあ……。
せめて捕まえて情報を吐かせなよ、とは一応注意はするけれども。
とはいえ私も底辺の暗殺者だった立場からしてみれば、我々の稼業は捕まったら即ジ・エンドだって覚悟の上に成り立つ商売である。
彼らが果たしてノクス公爵家相手に喧嘩を売りたいか? って話だよな~~~~!
私だったらまず断るね! 大金積まれてもね!
やっぱ人間、自分の命が一番大事だもんよ!!
「早く迎えが来てくれて、いつも通りの静かな生活に戻るといいねえ」
「そうだな」
「ところでうちで犬を飼うという話は……」
「お前の犬は俺だけで十分だろう?」
「語弊があるからやめてくんない?」
本当に!
この男は!!




