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秘密  作者: 藤崎麗奈
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自分で書いた日記

    モスグリーンのロングスカートの中に手を入れて、ショーツを脱ぎ、用意してきた袋にしまう。 経腟、超音波エコー検査を受ける。  恥ずかしいし、少し怖くもあるけれどやるしかない。 幸い、女性医師も看護師も丁寧で優しくて、とても親切そうだ。 「この椅子に掛けてください」と看護師に言われ、覚悟して、スカートを少し上げて座る。 「椅子が倒れていき水平になると、両脚が開いていきます。 大丈夫ですから、緊張しないで、安心して力を抜いていてください」医師が明るく、明瞭な声で言う。 この人あいつの奥さんに、年格好や雰囲気が似ているなと、頭に浮ぶ。 あの人や悠人はどうしているのかな?と思う。 今はそれどころではないのだが。

    椅子が倒れていき、水平になると、今度は両脚を乗せている台がゆっくりと左右に開いていく。 イヤー、恥ずかしいよー、とても恥ずかしい、嫌だよー。 でも私の両脚は大きく開いて行く。 『美憂、君の替わりにやるんだよ、替わりにやるんだよ』と心の中で自分自身に呟く。  医師は、経腟ブローブと言うものを 私の両脚の間に入れ、「大丈夫ですからねー、リラックス、リラックス」と呟きながら、私の誰にも見せてはいけない大事な所に挿入していく。 ほとんど何も感じないが、『私の秘密の場所なのに、止めてください』と言う気持ちが自分の中から湧き出てきてしまう。

    私にも見える、モニターを観察して、「赤ちゃん、見えますよ、子宮の中にいますねー。 とても小さくて、心拍はまだ分からないですね。 そろそろ、五週位だと思います。 赤ちゃんはたぶん一人だと思います。 卵巣とかも腫れたりしてないです。 今のところ問題はないようです。 大丈夫ですか?」 「エー、大丈夫です」私はやっとの思いで小声で返答する。 「それでは、終わります。 元に戻りまあーす」 私は両足を閉じることが出来た。  「用意が出来たら、診察室にお願いします」

    ショーツを履いて服装を整え、スカートの中に自分を隠す気持。 「やれ、やれ、でも思ったより簡単に終わった。 これが今後、何回、何回もあるのだ、最後はそれどころじゃない。 本当に大変だ。 女ってとっても大変」と言う感想で「それでも良かったなー」とで言う明るい気持ちも起きて、検査室を出る。  外に出ると彼が待っていて、「ゴメン、ゴメン遅くなって、どうしても手が離せなかったんだ」 「良いのよ、無事すんだわ、赤ちゃんいたわ、そろそろ五週目だって」 満面の笑みを浮べた彼は、私の手を大事そうに握ってくる。 二人で診察室に入る。


    「おめでとうございます、子宮の中に胎嚢が確認されました」 「ありがとうございます」 「前回の生理日からみて、五週目の少し手前だと思われます。 まだ妊娠初期なので、予定日は決められませんが、仮の予定日として、10月1日にします」

 



 


    モーツアルト、フルートとハープの為の協奏曲ハ長調、ディべルティメント17番二長調、交響曲39番変ホ長調、ピアノ協奏曲26番「戴冠式」二長調。 胎教に良いという彼の提言に従いモーツアルトばかり聞いている。 このお腹ににいる、小さな子に届いているような気持がして、とてもとても爽快だ。 子供の頃からモーツアルトが好きだったけれど、ますます愛着を感じる。 料理の時はモーツアルト、メイクする時もモーツアルト、お風呂に入る時もモーツアルト。       彼が帰れば、彼が聞きたいモーツアルトを聞く。

    大好きな彼がいて、夫の子供がこのお腹にいて、彼に本当に愛され、慈愛に満ちた両親に恵まれ、私ほど幸せな女はいないと思う。  スカートの上から左手でお腹を摩る、「元気に大きくなってね」と話しかける。 

    

    「妊娠初期でも、セックスは特に問題ないと言うのが今の医学の見解だ。 勿論君が良ければだけれども」という事で、毎晩彼に抱かれている。 問題は全然ない、最高、彼は何時も優しくて、毎晩毎晩、私を頂点まで導いて行く、もう最高、とても幸せ、彼が大好き、彼も幸せにしなければと、心底思う可愛い良き妻なのです。




    中高生の時に書いていた日記を開いてみる。 文章も言葉の使い方も、年齢のわりにしっかりしていると思う。 いかにも、しっかり勉強する、真面目な女の子の書く文章と言った感じがする。 学校の事、友達の事、部活動の事、フルートの事、父母の事、社会的事件や事故の事、自分の意見や気持ち、自分の体の成長や変化。 読んでいて、思春期の女性の気持の揺らぎや成長を実感する。 当時こんなことを思い、考えていたのか、これを書いたのは誰なのか? 私なのか? この私がこの指で書いたのだろうか?

   彼の事や、あいつの事も、時々登場している。

    

     「昨日、・・・高校の北島センパイとコンサートに行きました。  男性と二人で、コンサートに行のは、初めての事なのでとても緊張しました。 でも、素晴らしい演奏にとても感動しました。 とても素晴らしかった。 ホールはとても良い響きで、フルートの音がとても素敵。 父母からは、初デートだとか言われて冷やかされました。 なかなか許可しなかった癖にいい気なものです。 でも、素晴らしいモーツアルトが聞けて、とてもとても幸せな気持ちです。 優れた演奏を聞くのは、いろんな意味でプラスになると思います」

    

   「中学を卒業して、高校に進学しました。 全員そのまま進学するので、学年が上がるだけで、大きな変化はありません。 小学4年から小学6年まで通った塾に挨拶に行きました。 『大学生に成ったら、この塾で私が教える事は出来ますか?』 『出来るよ。 篠原はそんなこと考えてるんだ、見かけによらないね。 ちゃんと大学に合格して、採用試験に合格すれば、非常勤講師に成れる、君も大学生だった先生に習っていたんだよ。 そこで今、授業をしている彼も、君を教えてた、大学生だ。 今は院生だが』 『私も、この塾で教えてみたいです』 『そんなに楽な仕事じゃないよ』 私はあの塾の雰囲気が大好きなので、時々学校の帰りにおじゃまする事があります」



    「昨日、久しぶりに祖父母の家に行きました。 私の好きな食べ物を色々用意してくれて御馳走になりました。 古い写真を沢山見せて貰いました。 一番感動したのは、オジイチャンとオバアチャンの結婚式の写真です。 昭和43年、明治神宮で神前式を上げたそうです。

    純白の着物姿の祖母は、若くて可愛くて清らかでとてもとても美しく、何ともステキです。 思わず、『あたしも、こういうお着物着て式を挙げたいなー』と大声を出してしまいました。  『今でも神社でこういう式挙げる人、沢山いるんだから、貴方も出来るのよ、そうしなさい』と祖母は言ってくれました。 純白の着物を白無垢打掛と言うそうです。 日本髪を覆う、純白の袋状のものを綿帽子と言うそうです。 私も将来結婚式を挙げるなら、白無垢打掛で綿帽子の姿で挙げたいなあー、と心底おもいました。とてもとてもステキです」 


    で、式でのあの文金高島田を結い、白無垢打掛、綿帽子になったわけだ。 ごく最近の事なのだが、もう昔の思い出みたいに成りつつある。 あれで、今の私が出来たのだ。



     「今日、保健の授業で女性の生理、妊娠、出産について習いました。 特別な内容なので、クラスの雰囲気は何時もとは大分違いました、随分と違いました。 まだ、17歳なので、遠い未来の事と感じましたが、私もあれを経験する? と、思うと、怖いという思いと、恥ずかしい気持ち、憧れが、同居している感じがします。 出産の大変な事は、ある程度は知ってはいたけれど、最初の妊娠の確認の為の検査、それ自体が中々大変だと感じました。 椅子の様な物に座り、それが段々と倒れていき、両足が開いていき、女性のあそこに棒状の物をいれられて・・・。 モニターに小さな小さな赤ちゃんが映し出されて。 自分も妊娠したらあれをすると考えると、恥ずかしくて、恥ずかしくて、真赤になって、でも我慢してやるしかないのだと思います。 私も将来は、彼氏が出来て、結婚して、妊娠して、・・・。

   今、私には彼氏と言える人はいません、友達としては医学部に通われている、北島さんがいます。 彼とは、コンサートに行ったり、図書館でいっしょに勉強したり、月に一、二回会います。 たぶん彼は、私の事が好きなのだと思います。 でも今は、友達以上の関係に成ろうとは考えてはいません。 彼は真面目な良い人ではありますが、それ以上ではありません。 そういう事より、チャンと勉強して、目標の大学に受からなければと考えています」

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