快楽をもたらす者
帰国してから、二週間になる。 彼は、病院勤務を始めた、自転車で通勤している。 私達の暮らしは順調だ。 食事を用意し、洗濯をして、毎日徒歩でショピングセンタ―に買い物に行く。 調理を学び、料理をして彼の帰りを待つ。 完全な専業主婦。 時間があるのでフルートの練習を再開した、腕が物凄く落ちているので彼には内緒だ。 中高生の時の教則本をみれば、可愛らしい私の書き込みが懐しい。 結婚前はそれほど、興味のなかったメイクも練習している、ファションにも気を配ろうと思う、彼の為に。 何も不自由がない落ち着いた暮らし。 夜は、夫が何回も何回も求めて来る。 別に嫌ではない、私を愛しているのだと思う。 私もだんだん、彼をを求めるようになって来ている。
クリトリスは純粋に快感をもたらす事だけが役割で、他の機能は持たない。 非常に特種な器官である。 人間の出産が危険で、大変苦痛が大きいので、女性が性交を避けないようにする為の仕組みと考えられる。 進化の過程で、女性だけに与えられた、特別な喜び。 男性は、知ることが出来ない、素晴らしき喜び。 クリトリスは母性を形成する基本的な存在であろう。 美憂もべッドの中で軽く触れる癖があった。 とても、敏感繊細な器官。
クリトリスは、私を女性的快感の深淵に引きずり込んいくようだ。 卵巣から分泌されるエストロゲンは私の全身をくまなく満たし、私のすべてを完全に女性へと変えようとしている。 押し寄せる、快感の波、快楽の渦。 毎夜、毎夜、無我夢中で大好きな女性を抱く、彼が新しい世界に私を引きずり込んでいく様だ。 前の美憂がまったく知らなかった世界に、官能の世界に、私は突入させられてしまった。
式の日の夜、彼に処女をささげた私は、今の自分に驚きを禁じ得ない気持ちも微かには残るのだが、途轍もない幸せをつかんでしまった気分でもある。 まったく、知らなかった快感、めくるめく官能の世界。
外から見れば幸せな、幸せなごく普通の新婚カップルにしか見えないだろう。 事実幸せな新婚カップルそのものみたいだが。 彼が大好きになってしまった、「早く帰って、あたしを抱きしめて、熱いキスをお願い」と言うのが今の、本心でもある。 もう、元の美憂に彼を返すなど、もはや論外なのかもしれない。 もっとも、あいつは元の俺として満足した暮らしをしているらしいが。 短い間に、私は完全に塗り変えられてしまった。 あの白無垢の衣装から色打掛に変化したように。 彼のペニスとこの自分のクリトリスに。 女性としての快感を感じる機能が強制的にインストールされてしまった感じがする。 何時? あの神社での式の時か? あの花嫁姿でいたとき時か? 成田で彼に抱かれた時か?
あの清純な清純な篠原美憂は消えさり、官能の女が出現したみたいだ。 妊娠して彼の子を産む道に力ずくで引き込まれていく感じがする。 避妊しないでの彼との行為が続いている。 それで平気なのだ? そのままの、彼を自分の中に受け入れたい気持ち。 行きつく先は当然だろう。
昨日、実家を訪ねたが、もう他人の家に行くという気持ちは消え、自分の育った家と感じがする。 母に会うと、甘えた気分になる。 ブラジャーにもスカートにも違和感はない、彼が気に入る服にしなくては、下着も彼が気に入るものを着けなくちゃ、そんな気持ちが生まれた。 彼の好むサラダは? とか、ドレッシングは? 料理を学んで、大事な人に美味しいものを食べてもらいたい。 メイクも巧くならないと。 前の美憂はあまりメイクしなかったが、あたしは彼の為にメイクは欠かせないと感じる。
それにしても、夜の営みが凄い、こんなに気持ち良いとは。 彼に抱きしめられ、愛撫され、接吻され、気持ち良くなる場所を愛撫され、愛撫され。 そこまでで、十分上り詰めた快楽なのだが、さらに愛おしい繊細な彼の指が、俺の、あたしのあそこに触れ始めると、押し寄せる快感の波が、幾重にも、幾重にも押し寄せ、女であるあたしの魂の根源からの、快楽、快楽、快楽、マルチ、オーガニズムは私を命の根源に導くようである。
私は以前、妻にもこれを与えていたのだろうか? 彼女はこんなにも凄い快感を受けて取っていたのだろうか? 彼女も大変喜び、短い時間、どこかあの世にでも行ったみたいな雰囲気に成っていた。 今は、俺として生きる、あいつが彼女にこれを与えているのだろうか? それなら良いのだが。
その時スマホの呼び出し音が鳴る。 あいつだからだ。 「おー、俺だよ、元気?」 今、考えていたことを思い出し少し恥ずかしくなる。 「お久しぶり、そちらもお変わりないかしら?」 「あー俺は大丈夫だ。 それにしても、何とも言いようもない、美しい花嫁姿だったよなー! 本当に彼が羨ましい限りだ」 少し不愉快になる。 「そう、ありがとう」 「明後日、都合が附けばなんだけど、就職活動でどうしても休まざるおえない講師がいて、代講をお願いできれば、助かるんだけど?」 あまり気乗りはしない。 今はあまりあそこにはいきたくない、気分てある。 「そうね、彼は明後日夜勤だし、構わない、いいわよ、いくわ」 「アー、君が来てくれれば助かるよ、4コマ頼むよ」 「エー、分かった、お引き受けするわ」
後、二時間位で彼は帰宅すると思う。 夕食を仕上げて、きれいにメイクして、大好きな彼を待つ。 幸せな新妻そのもの。 彼が帰ると、ただちに抱擁と接吻、熱い接吻をされるだろう。 二人はやっと、離れる。 一時間位、彼の冗談を聞きながらの、楽しいお食事。 その間も手を取られ、接吻され、好きだ、きれいだと散々続く。 こちらも、キスを返したりして。 ずーと、いちゃいちゃしています。 これが習慣になったのです。 そして夜が深まると、愛し合う理想のカップルは、愛の交わりに入ります。 彼の愛撫、愛撫、乳首への愛撫で叫びそうになりますが、何とかこらえます。 彼の手は彼の好きな淡いピンクのショーツを脱がせます、彼の指は、あたしのあそこに触れ、クリトリスは充血して硬くなり、快感が快感が大きな波の様に、あたしの意識の中に押し入り、意識を超え、あたしの全存在を支配してしまうのです。 私は体を開き、彼をあたしの中に引きいれるのです。 愛液に満ちたあたしの中のたくましい彼は、緩やかな運動とともに、大いなる快感のうねりをひたすらにひたすらにあたしにもたら続けます。 意識は飛び、女の叫びは少々彼を困らせるらしい。 もうやめましょう、でも数時間後には必ずこの世界に、あたしは浸ることでしょう。
もう、元には戻れないかもしれない、女としての快楽を知ってしまった、自分。 これは元々、美憂が潜在的には持っていたもの、なのでしょう。 入れ替わりなど起こらず、本来の美憂が彼と結ばれていたとしても、この感覚は彼女が受け取ったでことでしょう。 しかし、本来関係ない私が受け取る事なってしまっている。 俺と言う、一人称が非常に不自然になって来ています。 あたしが、自然になりつつあります。 卵巣で作られるホルモンは意識も変えていくのでしょうか?
この女性特有の快感は、私を彼の妻と言う立場に縛り付けようとしている。 こんなに気持ち良いのにここから逃れられるのか、大体彼が好きになってしまっている。 彼の良い妻、彼の美しい妻に成らねば、そんな気持ちに縛らられようとしている。 避妊はしていないのだから、すでに妊娠しているかもしれない? 若い彼は、僅か三週で、私の中に、多くのそれを何回も何回も注ぎ込んだ。 最初はわずかな嫌悪を感じたが、今は大好きな彼のそれが、体内にはいるのが喜びですらある。 こんなに快感を感じるのも、北島美憂であるあたしの肉体がそれを求めているからかもしれない。 何かすぐ妊娠しそうな予感がする。 大体、予感なんて言葉は以前の自分は使わなかった。 美憂が良く使う言葉だった。
ふと、あいつの事、妻の事、子供の事が頭に、浮かんだが、遠くの別の世界の事の様に感じる。 披露宴で彼らの幸せそうな様子を見せつけられて、もう自分の帰るべき場所はないと、思い知らされた。 今、私は彼の事ばかり考える様になっている。 まあ明後日、あいつにも、塾の子供達にも会えるわけだ。 何を、着ていこうかしら? 髪はどうしてたっけ? 以前は男性的視点から見つめていた、若く魅力的な美憂を思い出す。
呼び鈴がなる、彼が帰ってきたようだ。 「やー」「お帰りなさい、わりと早かったわね」 私は彼の抱擁とキスを受けるべく体勢をとる。 両腕で私を包み込み、長い長い髪を撫ぜ「美憂きれいだね、大好きだよ」と言うなり、熱い接吻をしてくれる。 私も彼の背に手を回し、私たちの接吻は10数秒ほど続いたか。
「奥様、今夜の夕食はなんですか?」 「ビーフカレーとサーモンを使ったサラダ。 あと、フルーツが三種類あるから、好きなのを食べましょう」 「そのスカート、とても良く似合ってるね」 「そう、ありがとう、うれしいわ」




