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をぐらのさうし 巻之弐十伍  作者: 小椋夏己
2025年  9月

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負けず嫌い

 今、大阪では万博をやってますが、東京では陸上の大会をやっているようです。実際に番組は見てないんですが、情報番組やニュースで話題になっているのをちらっと見たり聞いたりはしています。


 その時に印象に残った選手がいました。印象に残ったという割には名前も全然覚えていないんですが、ハードルの選手だとだけ覚えています。

 

 今回のことを書くのに調べてみたら、


「村竹ラシッド」


 という名前の選手で、23歳とのことです。お父さんがトーゴの元陸上選手ということですので、お父さん譲りの運動能力なのかも知れません。お母さんが何かの選手だったとは見つからなかったので、特にそういうことはやってらっしゃらなかったのかな。


 私だけではなく他の人の印象にも残ったでしょうが、ものすごく悔し泣きをしてたんですよ。最近、この理由であれほど泣いてた人を見た記憶はあまりなかった気がします。


「パリオリンピックからの一年間、メダルを取るためだけにがんばっていたのに、何が間違えていたんだろう」

 

 この言葉になんだかすごく驚きました。「足りなかった」なら分かりますが「間違えていた」って、その言葉がなんだか軽くショックでした。


 できるだけのことを精一杯やりきった人にだけ言える言葉じゃないのかなと思います。もうこれ以上の努力はできない、そこまでやっている自信もあるから、それでメダルが取れなかったら間違えていると思うしかなかったんでしょう。計画を立ててもどうしてもそれに足りないことはあります。その時には「足りなかった」と出るんでしょうが、足りないことはない、やり尽くしたと思ったからこその言葉だったんだろうなあ。


 ちょっとした感動と同時に、また時代が少し変わるのかなとも思いました。


 戦後、有名なマラソン選手が「もう疲れて走れません」との遺書を残して自分の命を絶つという悲しい出来事がありました。いろいろな事情があった上のことでしょうが、それでもその中のいくばくかが「期待に応えられなかった」という背景があった気がします。東京オリンピックで銅メダルを取りながらも、次のオリンピックでは銀メダル以上をと約束した、その精神的負担はかなり大きかったんだろうなあ。


 昔はそんな感じで「国民の期待に応える」という選手が多かったようですが、いつからか「楽しかった」「楽しめました」と、こういう大きな大会でも選手に楽しんでほしいという気持ちも大きくなってきています。その中で「期待に応えられずにごめんなさい」とこれほど泣いている選手を見たのは、本当に久しぶりでした。


 本当は勝負するならこのぐらいの負けん気があった方がいいんだろうなあと思うと同時に、自分を追い詰めて競技をやるのが苦しくなるのだけはやめてほしいなと思いました。


 スポーツは楽しむものだけど、トップに近い人たちは楽しむだけではだめなんですよね。楽しんでいただけの人は、おそらくこの場所にはいないんだろうなあ。そういう才能もなければ努力する才能もないもので、多少負けても「まあまあ」で終わらせてる立場ではよく分かりませんが。

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