だって見つかるはずもない
「おはよーございま-す!おーきてくださーい!」
異世界生活二日目の朝は、シアンの声から始まった。
「起きたよ。シアン。おはよ」
「じゃあ朝ごはん食べてくださーい!今日の朝ごはんは焼き立てのパンですよー!」
朝からテンション高いな…。
「だって今日はお出かけですよ?」
そう言いながら姿見の前で服を選ぶシアン。
「まあ、落とし物探しな」
「こまかいことはいいんですよ。もっと気楽に、楽しみましょう」
それも、そうだな。
朝ごはんを済ませ、洗い立ての服を着て(ナイフの刺さった穴は、きれいに縫って埋めてくれていた。)、僕らは町に出た。
「いいか。一番の目的はキーホルダーだからな」
「はい。キーホルダーですね」
落とし物探しに意気込もうとしたその時。
ぐうぅ。
「ごめんなさい。朝ご飯食べるの忘れてましたぁ」
そんなのありかよ。
「あ、あそこのお団子屋さん、美味しいんですよ!食べましょ食べましょ!」
シアンは並んだ屋台を指さして言う。
この世界にも団子があるのか。団子に限ったことではなく、だいぶ元の世界と似たところが多いというが、大きな違いがいくつかあるだけで、ほかの細かいところや一般常識は、ほとんど元の世界と一緒だから、全体的に似通った世界って感じがする。
まあまだ二日目だけど。
彼女は僕の手をひいて屋台へ向かった。
「おじさん!お団子二人分ください!」
「僕はいいって」
金持ってないし。奢られるのはちょっとあれだし。
「いいんですよ。お金は私が払うので、食べてください!」
「いや、そんなの悪いって。というか…ん˝ッ!」
団子を無理やり口に突っ込まれた。
「いいから黙って恩返しされてください!ほら、おいしいでしょう?」
喉が詰まりそうになりながら、必死に首を縦に振って返事をすると、彼女は、ニコッと楽しそうに笑った。
「お嬢ちゃん達、ラブラブだねえ。今日はデートかい?」
屋台のおっちゃんが話しかけてきた。
「初デートです!」
シアンは団子を食べながら答えた。
わざわざ突っ込まないけど、いつからデートになったんだ。
「そりゃあいい。」
「よければ、おすすめの美味しいお店とか教えてくれませんか?」
屋台のおっちゃんは少し考えて、
「そうだな。あっちの方にうまいネズミ焼き売ってるぜ。うちの団子の次におすすめだぜ!」
と応えた。
「おお!いいですね。ネズミ焼き!」
シアンは目をキラキラ輝かせて、勢いよく立ち上がる。
「行きましょう!」
「え、まだ団子食べ終わってないし」
ていうかまだ食べる気かコイツ。それよりネズミ焼きって。
ブレイクスルー。




