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剣と魔術の異世界で科学革命!  作者: 相場 方便
第1章

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20/21

1.18 グッドコップ、バッドコップ?

 せっかく狩った素材を冒険者ギルド支部長に奪われた。

 王都のギルド本部に苦情を申し立てるか、弁護士でも探すか……。


 考え込みながら王都に向かって空を飛んでいると、少女の叫び声が聞こえてきた。


「お祖父様! お祖父様!」


 少女は叫び、中年男性は老人の背中を叩いている。

 俺は上空から声をかける。


「大丈夫ですかぁー?」


 少女が答えてくれた。


「あぁ魔術師様! うなぎを喉に詰まらせてしまったのです!」


 うなぎ! 実にけしからん!


「俺もうなぎ食べたい!」


 異物が詰まったのなら、あれを使って助けられるかもしれない。

 仮に老人が助からなかったら、そのときは逃げれば良い。


 老人は苦しそうだが、自ら返答した。


「好きなだけ、食え……」


 俺は着陸して、老人に後ろから抱きついた。

 そして、拳を老人の鳩尾に突き立てる。

 所謂ハイムリック法だ。


「いきますよ! えいっ!」


「ぐぼっ!」


 さすがに一回では成功しなかった。

 確か前世のマニュアルだと、5回くらい試せと書いていた気がする。


「えいっ!」


「ぐぼっ!」


「えいっ!」


「ぐ《《ば》》っ!」


 三回目を食らわせたその時、老人の口から異物が飛び出した。


「助かった……ありがとう……」


 老人は礼を口にしたが、まだ息が切れている。


「助かりましたわぁー!」


 少女は喜びを叫んでいる。


「ありがとう、助かった!」


 老人の顔は一気に血色が戻り、俺に感謝を述べた。


 俺は老人の体を魔術で透視して、内蔵を痛めていないことを確認した。


「そなたは命の恩人じゃ!」


 老人は俺の手を取り、礼を言う。


「本当にありがとう存じます」


 少女も俺の手を取り、礼を言った。


「王都に儂の店があるから、ぜひお礼をさせておくれ!」


「いえそんな、それには及びませんから……」


 老人たちのテンションが高すぎて、俺はつい断ってしまった。


「!」


 少女は無言で、俺の腕に思いっきり抱きついてきた。


「ぜひお越しください!」


 俺が逃げようとしたのを察知してか、少女は俺を掴んで離さない。


「そなたが命の恩人であることは、大勢の者が目撃しておる。ろくなお礼もできないとなれば、儂の信用に傷が付くのぉ」


 老人が追い打ちをかけてきた。


 孫娘が得体の知れない冒険者に抱きついていることの方が、信用に傷が付くんじゃないのかよ!


「そもそも僕は余所から来た冒険者なので、王都の中に入れるかどうかすら怪しいですよ……?」


 そうだ。

 俺みたいな余所者を街に入れようと思ったら、追い返されるか高額な入街税をふんだくられるに決まってる。


「そなたの身元は儂が保証する故、心配無用じゃ。店にはうなぎのほかにも、各地から仕入れた色々な商品があるぞ。王都を見るのが初めてなら、店に来るだけでも楽しいと思うのじゃが?」


「いえ、大したことはしてませんから……」


 俺の謙遜に、お付きと思しき中年の男がキレた。


「旦那様のお命を助けるのが大したことではないと。それは旦那様が大した人間ではないとおっしゃりたいのですか?」


 この男、難癖をつけるのが上手いぞ。


「それは知りませんよ」


 めんどくさい人達だなぁ……。


「命の恩人に失礼じゃないか」


「マティアスさん、やめて」


 老人はまだゲホゲホしながら、中年の男を制止した。

 それに少女も同調する。

 もしかすると、グッドコップ、バッドコップ戦術みたいな交渉術なのかもしれない。


「旦那様をお助けできず、命の恩人にろくなお礼もできない。それでは私が奥様や若様に叱られてしまいます……」


 バッドコップ戦術に効果がないと見たのか、三人はしょんぼりした顔でこちらを見てくる。

 男の上目遣いなんて需要ねぇよ!


「あの、我が家に来てくださいませんか……?」


 少女は潤んだ目でこちらを見る。


「まぁ、そこまでおっしゃるなら……」


 俺は彼女たちについていくことにした。

 それに一応確認したものの、ハイムリック法のせいで内蔵を損傷していないとは断言できない。

 しばらくは老人の容態を診る必要があるから、仕方ない……。

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