1.19 王家御用達
老人の馬車に乗り込み、王都を目指す。
「そういえば名乗っておらなんだな。儂はアルブレヒト・リントナー。王家御用達リントナー商会の会頭じゃ」
なんと、王家からお墨付きをもらっている商人らしい。
「これは失礼しました。冒険者のルネです」
「そなたにしがみついているのは、孫のアリスじゃ」
「アリスでございます」
少女は俺にしがみついたまま、名を名乗った。
「次席総支配人のマティアスです」
中年男性、意外と偉い人らしい。
それにしても次席総支配人って、支配人が何人もいる大きな商会なのだろうか。
「アリスや。そろそろ離れた方が……」
「いい男がいたら絶対に離してはいけませんよ、とお母様に言いつけられているのです」
なんてことを言う母親なんだ!
っていうか、"離す"の意味が違うんじゃない?
「いや、離すというのはそういう意味では……」
ご老人、あたふたしている。
「そもそも僕はFランク冒険者です。いい男じゃないですから」
「飛行魔術を使っておられましたよね。それでもFランクなのですか?」
アリスは疑問を口にした。
「Eランク以上は年齢制限があったかと」
マティアスさんが補足してくれた。
「そうです。未成年はFランクより上に昇格できないらしいです」
「ちょっと待て。そなたは何歳なのじゃ?」
「9歳です」
ご老人とマティアスさん、かなり驚いている。
「私と同い年ですね」
この少女も9歳らしい。
「そうなんですね……」
9歳なら分別あるだろ。離れろよ。
「ところでルネ様のご家族はどちらに?」
少女は聞かれたくないことを聞いてきた。
「分かりません」
「「「わからない?」」」
口頭で説明するのは面倒だな。
俺はインベントリーから手紙を取り出そうと、黒い穴を出す。
「「「空間魔術!」」」
俺は村の神父にもらった手紙を取り出し、三人に見せる。
「これは……信じられぬ……」
「私と同い年の子供を追い出すなんて……」
少女は手紙を読んで完全に怯えていた。
「しかも空間魔術師だというのに……」
「ゲマイナール主義ですか……」
三人は物凄く可哀想な目で俺を見た。
「あの、ご飯は食べられてますか……?」
少女はおずおずと聞いてきた。
「大丈夫ですよ。それに関してはご心配なく」
「普段はどんな依頼をこなしているのじゃ?」
ご老人は興味津々で聞いてきた。
「いえ冒険者になったばかりなので、倒した魔獣をギルドに売っているだけです」
売ろうとしたら、ギルドに全て奪われちゃったけどね……。
「ギルドにか。どんな魔物を倒しておる?」
「ワイバーン、飛竜、オーク等ですね」
「ひぃっ!」
「アリスと同い年で、そこまでの実力が……」
「魔術師に年齢は関係ないとはいえ……」
三人は驚いている様子だ。
「ルネ《《様》》はどこかの商会とご契約はございますか?」
マティアスさん、急に商売スイッチが入ってしまった。
「ないです。そもそも冒険者になって日が浅いので」
ここで上手く受け答えできれば、俺も納入先の商会ができるかもしれない。
そうすれば、おいしい思いができるかも知れない。
だが、自分には好感を持たれる能力がないことも自覚している。
「落ち着け。ルネ殿は儂の命の恩人なのじゃ。いきなり営業するでない」
「そうよ、失礼だわ」
老人と少女が、マティアスさんを制した。
だがマティアスさんは、あくまで契約の有無を聞いただけだ。
「いえ他の商会と契約している冒険者を連れ回せば、引き抜き工作だと抗議を受ける恐れもあるでしょう。気になるのは当然ですよね」
「そうなのです!」
俺の助け舟に大喜びで、マティアスは俺の手を握る。
話し込んでいるうちに、馬車は市壁の検問にさしかかった。




