プロローグ 2
「ここはどこだ?」
目が覚めると、俺は真っ白な世界にいた。
俺は思わず腹に手を当てる。
さっき老人に刺されたはずなのに、今は何の変哲もない。
「こんにちは」
顔を上げると、和服のようなものを着た神々しい女性が……宙に浮いている。
名乗られなくても理解した。
人間じゃない。
神とか天使とか、そういった超越的な存在だ。
「……俺は、死んだのですか?」
「そうです」
長らく会っていなかった父親がカネの無心に来て、断ったら逆上して殺されてしまったのか……。
「事実関係としてはその通りです。ですが邪神にとって貴方は邪魔だったので、追放されたのです」
神様というのは心の声まで聞こえるらしい。
どうして俺が邪神の邪魔なのか謎だが、今はそれどころじゃない。
「……あの、俺はどうなるんですか?」
「あなたをこのまま地上に戻すと、今度は邪神に魂ごと消されるでしょう。ですから異世界に転生してもらいます」
異世界転生かぁ。
株式市場でもヒット作に関わった企業の株価を押し上げているため、仕事に必須の知識のひとつになって久しい。
俺も投資家として、主要な作品は読むようにしていた。
「異世界転生モノをご存知なんですね。あれは私の弟の地上神が流行らせているんですよ。大神開発援助で記憶を残したまま地上人に転生してもらうために、説明しやすいようにブームを起こしているんです」
異世界転生ブームは神々に仕組まれていたらしい。
ODAというくらいだから、神々が支援しなければならない異世界が相当数あるということなのだろう。
「どうもーアウラでーす☆」
今度は一枚布の長いドレスを着た女神がやってきた。
「ちょうどよかったわ。こちらは貴方に転生してもらう世界の神であるアウラさんです」
「はじめましてアウラ様。加藤瑠音です」
「ルネさんですねー。よろしくでーす。私の世界は、ある意味テンプレの、世に言う”剣と魔術のファンタジー世界”でーす」
神様なのに正直にテンプレって言っちゃうのは安直だと思う。
とはいえ魔術があるというのは夢がある。
魔術が使えたらなぁと思ったことは一度や二度ではない。
「前の神が運用成績が悪くてクビになって、引き継いだばかりなんです。なのでまだ詳しくないのですが、文明レベルは低いし少子化で困ってるんですよー」
「大変なんですね」
運用成績が悪いとクビになるのか。
なかなか厳しい世界なんだな……。
「そうなんですよー。この天界でのことは覚えてないと思いますけどー、文明をガンガン発展させてー、人口をドンドン増やしてくださいねー。じゃあよろしくお願いしまーす!」
「ちょっと待って! くぁwせdrftgyふじこlp」
俺の手足がどんどん透けていく。
転生するなら魔術を使えるようにとか、親ガチャに外れるのは嫌だとか、要求する暇がなかった。
俺の言う事なんか聞いちゃいねえ。
もう不安しかないわ……。




