1.12 解体場にて
「「テメェやりやがったな!!!」」
モヒカンと違って床に転がっていない、残りの二人が叫んだ。
「いや先に手を出してきたのはそっちだろ」
すると、どこからか大男がやってきた。
「おい何があった。ネイ説明しろ」
「冒険者さんがコケただけですよマスター」
受付嬢が俺にだけ分かるようにウィンクする。
あの大男はギルドマスターらしい。
俺のためなのか、あるいはモヒカン男の名誉のためか、俺の所業については秘密にしておいてくれるらしい。
冒険者が子供にやられたなんて、メンツが丸潰れだもんな。
「人騒がせな奴らだな。気をつけろよ」「気をつけろよ」
ギルドマスターの発言に乗っかって、俺も注意を促した。
周囲はお前が言うなとでも言いたげな視線を浴びせてくるが、俺は間違ってないぞ。
うんうんそだそだ、うんうんそだそだ。
「解体をお願いしたいのですが」
俺はギルドが契約している解体場に向かった。
「おう、何を倒してきた?」
「えーっとワイバーン56体、飛竜47体、オークキング2体、オークジェネラル6体、オークナイト15体、オーク337体です」
解体場にいた男の顔色が変わる。
「子供だからって嘘は良くねぇぞ! 飛竜やオークを狩れる冒険者なら、契約してる商会に持っていくのが普通だろうが!」
契約してる商会って、どういうこと?
「契約って何ですか?」
「お前みたいなガキに教えてやる義理はねぇよ。悔しかったら素材を持ってくるんだな!」
「はいどうぞ」
周りにいた数人がザワつく。
「「「「「オークキングだ!」」」」」
「あのガキ、アイテムボックスを使ってなかったぞ?」
「空間魔術だよな? ガキなのに?」
ガヤがうるさいが男は無視して話を続ける。
「どうやって倒した? 傷ひとつないぞ?」
「礫を飛ばしてるんです」
銃について説明するのは面倒なので、礫を飛ばしたと言えば勝手に魔術だと勘違いしてくれるだろう。
少なくとも嘘ではない。
「そんなやり方で……一人で倒したのか?」
「そうですよ」
「一人で大山脈南側に行くのは危険……いや、オークキングを倒せるなら問題ないか」
こうして解体場でのひと悶着は終わ……らなかった。
「どこから盗んできた!?」
突如現れたギルドマスターらしき大男は俺が盗んできたと勘違いしているようで、俺を捕まえようとする。
だが俺は避ける。
「いや僕が倒しましたから」
だが7〜8回に渡って大男の手を避けるが、諦めようとしない。
面倒なので、俺は避けるのを諦めた。
「ふっ!」
大男は右手で俺の胸ぐらをつかんだ。
本来なら顎に掌底を食らわせたいところが、9歳児のこの身体では腕が大男には届きそうもない。
だが前世の社員研修で警備会社から来た講師から、ちょうどいい護身術を習ったことを思い出した。
大男の服の前腕の外側を両手で掴んだまま、自分の体をぐるぐると右回転させる。
「あがぁ! 腕が折れるぅーーーー!」
大男は叫び声を上げて俺の周りを半周し、最後には仰向けに倒れた。
俺は馬乗りになり、大男の喉仏に拳を突きつける。
「言いがかりをつけた上に、胸ぐらをつかむなんて酷いじゃないですか」
まだ手加減しているが、俺は拳で大男の喉仏を突くこともできる。
そのことを理解したのか、大男は体の力を抜いた。
「分かった……。勘弁してくれ……」
大男は両手を上げて観念した。
前世なら胸ぐらをつかむのは暴行罪なので、警察を呼んで身柄を引き渡すべきだろう。
だがこの世界の法律が権力者に有利だったりしたら困るので、揉め事を避けるため、俺は大男から降りた。




