第二十三話 自覚
家につくと案の定びしょ濡れで、ルゥトの持っていた本も読めるかどうか怪しい状態となってしまった。
浴槽に湯を張り、タオルを二枚取り出し体を拭いていく。
思っていたより体が冷えてしまいブルリと体が震えるが、耐えられないこともないとルゥトを先に風呂に入れ、後でゆっくり湯に浸かる。
風呂から上がり、紅茶を飲みながら本を読んでいると膝の上にドカリと頭を乗せる。
すると少しばかり不服そうに
「一年位旅のようなものをしたからかしら、お兄さん昔に比べて体、固くなった?」
そう言われ、カップを口につけたまま首を傾げる。あんまり意識したことはなかったが、もしかしたら筋肉がついたのだろうか。
そう思いながらルゥトの頭に手を置くと、クフクフと楽しそうな笑い声が聞こえ、思わず男も笑いながら下を見る。
(あれ)
これはいけない。
本能的に、そう思った。
頭から手を話し、わざとらしく視線を外してどうしたものかと考える。
幸い、ルゥトは何も気づいておらず楽しそうに今日あったことを話しているがそれどころでは全く持ってない。
どうしたものか。本当に、この一言が脳内をぐるぐる。グルグル。駆け回る。
「…ルゥトはいま何歳だっけ?」
「んもう! 十一歳!」
ぷんっ! と怒る仕草にさえもグッとくるものがある。いかん、これは末期症状だ。いやもともと末期ではあったのだが、こっちに関しては完全に想定外の予定外だ。
そして年齢差を考える。自分は今十七歳…位。だったはず。多分。恐らく。要は六歳差だ。
だがしかし、しかしだ。他人から見たら兄妹関係。血の繋がりはないが体裁というものがある。
そして何より里にいた頃、嫌な思いをたくさんしてきた筈だ、人間不信な一面もある中、こういった想いを抱えてしまったりするのは罪悪感があるし、本人も不快に思うはずだろう。
冷静になれと、自分に言い聞かせる。
ルゥトはあれやこれやと楽しそうに色々なことを話しているが、すべて右から左。なんの話をしているのかさえわからない状態だ。
「でね、エニシダくんが…。」
嫌いなやつを頭の中に思い浮かべながら、その隣で楽しそうに笑っているルゥトをそっと置いてみる。歳の差もそうなく、可愛らしく仲睦まじいお似合いの二人だ。
だがエニシダを自分に置き換えてみる。
ルゥトは自分の名前すら知らず、どういった人間であるかも知らない。そんなやつが、隣にいてもいいのかと考えはじめてしまい頭を振る。
そんなにネガティブになるものではないと。
そこから先のことはちゃんと覚えていないが数日後、本格的に頭を抱えてしまい男は本格的に今後に向けて色々間違いを踏み出す羽目になる。




