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いつか見たあの空に  作者: 織姫
第1話

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3/7

その②

 隆俊が勤務する旅行会社『マイウェイトラベル』は毎日夕方5時で営業を終える。年中無休だが完全週休二日制で客がいなければ営業時間内でも窓口を閉めてしまうほど緩く、駅前立地という他、特に売りのない零細企業だ。

(ほんと、よく潰れないよな。この会社)

 世間を騒がせた謎のウイルスが蔓延した時でさえ潰れずに耐え抜き、それどころかそんな時期に俺を入れた異端の会社だ。ちょっとやそっとのことでは倒れないのだろう。会社からの帰り道、酷く混雑しているわけでもない列車の中でそんなことを思う。

「ま、しばらくは忙しそうだし。まずはあの婆さんのプランでも考えるか」

 隆俊が受け持つクライアントの多くは長年付き合いのある個人客だ。特に高齢の客、要は時間を持て余している人間が多い。先日もある顧客から北海道に行きたいと個人旅行の申し込みがあった。

(先月は四国だったな。つか、あの婆さん毎月来てるよな)

 毎月来られるとこちらもネタが無くなるから困ると頭を抱えたくなるがこれも仕事だ。なによりこの会社が潰れないのはこういう固定客がそれなりにいるからなのだ。まぁ、地元“超密着”が経営方針なのだから仕方がないのだろう。

「それにしても北海道かぁ。冬なら提案しやすいが、夏は俺もよく知らないんだよなぁ」

 北海道は冬。そのイメージが旅行会社に入ったいまでも離れない。それでも夏の北海道の魅力を知らない訳ではない。富良野のラベンダー畑や函館の夜景。美瑛の広大な農地も圧巻だし、いっそ離島へ行くのもアリだ。問題はあの婆さんがなにを好むかだ。

「四国は結局道後温泉ってベタなオチになったが、北海道はなぁ。広すぎて絞り切れん」

 おそらく前回がド定番だったから今回は超穴場を求めるはず。となれば函館・札幌・小樽……富良野辺りも外すべきだな。こうなったら地元民しか知らなそうな秘境温泉でも紹介するか。そんなことを考えていると次第に列車が減速し、最寄り駅のいつものホームに滑り込んだ。

(今日の晩飯はなんだろうな)

 最近まではコンビニ弁当が主食だった隆俊がそんなことを考えるようになったのは彼女が家にやって来たからだ。これで少しは健康的な生活が送れる。その喜びに駅を出る隆俊の足はすこぶる軽かった。


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