その①
「――支倉」
「なんですか」
「なにがあった」
「え?」
話が見えない隆俊は隣でスマホを弄る竹原を見た。
「おまえ、例の子と知り合ってからなんか顔が良いぞ」
「あーたぶんそうですね。すげぇ助かってます」
「よーし。通報するか」
「そういう意味じゃないですから!」
通話ボタンをタップしようとする竹原を全力で阻止して「昔の傷が癒えました」と笑うが怪訝そうな顔をされた。
「ちょっと妹のことを話したんです」
「おまえ妹いたっけ」
「俺が中学生の時に死にました」
「そうか。悪い」
触れるべきでないと悟る竹原は話を逸らそうとするがそれを遮り昔話を始める隆俊に迷いはなかった。さくらのおかげで過去の自分と向き合えるようになったからだ。
別に隠すようなことでもない。けれど有希の願いを叶えられなかったことに対する後ろめたさが邪魔をしていた。それをさくらは払い除けてくれた。ただの居候だったあいつにこれほど感謝するとは思ってもいなかった。
「なぁ、支倉」
「なんです」
「よかったな」
「……まぁ、そうですね」
「なんかスッキリしない言い方だな」
「別になにもないですよ」
否定できないし否定するつもりもない。自分が同じような境遇にいるからさくらはあんな行動をとったのだろう。疚しい思いがなくともその事実に変わりはなく、未那と繋がっている竹原には伏せておきたいところだ。




