6‐神聖魔法
神聖魔法——それは物理魔法とはまったく異なる、
もう一つの魔法体系である。
この世界に満ちる魔素には、正・負・中性の三種類が存在する。
自然界に漂う魔素はすべて中性であり、もっとも純粋で、もっとも安定した魔素だ。
しかし人間は、生まれつき正か負のどちらかに偏った魔素を持って生まれる。
その偏りは魔力回路の色として現れ、魔法適性を決定づける。
正の魔素を持つ者の魔力回路は黄緑色に輝き、
負の魔素を持つ者の魔力回路は青紫色に染まる。
正の魔素を持つ者は神聖魔法に向き、
負の魔素を持つ者は物理魔法に向く。
現代では正が三割、負が七割と言われている。
そして神聖魔法の本質は、“魔素の浄化”だ。
神聖魔法の術式を展開すると、
魔法を当てた場所の魔素が正へと変換され、
光の粒子となって形を持つ。
それは人によって姿が異なり、
小さな光の羽だったり、精霊のような形だったりする。
現代では、その存在を“聖霊”と呼ぶ。
聖霊は術者の意思に従い、魔に飲まれた存在を浄化し、 傷を癒す。
ただし、一度に浄化できる魔素量には上限がある。
その上限を超えると術式は消滅し、
再び魔素を浄化し直さなければならない。
そして神聖魔法には、もう一つの特性がある。
——魔力操作によって、浄化できる”限界まで”魔素を神聖魔法の術式に当てた場合。
その瞬間、術式は耐えきれず崩壊し、術式は消える。
だがそれは神聖魔法の本質ではなく、
浄化量を限界まで高めた時に起きる“副次的な現象”にすぎない。
神聖魔法はあくまで、
魔を浄化し、癒し、正の存在を生み出す魔法である。
ただし、神聖魔法の使い手が物理魔法を扱うことはできない。
正の魔素を持つ術者は、物理魔法を使おうとすると、
途中で術式が壊れてしまうためだ。
しかし——
魔力操作を極めれば話は変わる。
魔力操作とは、自分の魔力を高め、魔素を自然界の中性へと近づける技術。
正の魔素も負の魔素も練習すれば、中性へと変換することができる。
そして中性になれば、自分の魔力を正にも負にも自由に変換できる。
つまり、物理魔法と神聖魔法の両方を扱えるようになる。
だが現代では、魔力操作は“使いどころがない”と軽視され、
誰も真剣に鍛えようとしない。
そのため中性化に到達する者は一人もいない。
——ただ一人、生まれつき中性の魔素を持つ者を除いて。
レイフ・スケルド。
古代文明の最強王として生きた彼は、前世で中性化を極めていた。
そのため転生した今も、生まれた瞬間から中性の魔力回路を持っている。
物理魔法も神聖魔法も、そして次元級魔法すら扱える唯一の存在。
現代の常識では理解できない魔法が、
彼の手によって再び世界に現れようとしていた。




