4‐物理魔法
この世界における魔法は、古代文明の遺産でありながら、現代では大きく退化している。
魔法の仕組み自体は変わっていないはずだが、
扱える範囲も精度も古代とは比べものにならないほど低下しているのだ。
まず、現代の魔導師にはSからGまでの階級が存在する。
これは魔法の強さではなく、魔導師としての総合的な実力を示す指標だ。
現代では「帝級魔法」を扱える者が最上位のS級とされており、国家戦力として扱われる。
しかし、帝級を扱える者は極めて少なく、多くの魔導師は上級魔法が限界である。
一方で、魔法そのものには別のランクが存在する。
初級、中級、上級、帝級、神級、そして次元級。
現代で一般的に使われるのは上級までであり、帝級は一部の天才のみ。
神級に至っては、現代の誰一人として発動に成功した者はいない。
現代には神級魔法の存在が記された古典があるだけで、
現代を生きている人間は見たことがない。
そして次元級——これは現代では存在すら知られていない。
世界の理を超え、魔法という概念そのものを揺るがす領域。
理解できる者がいないため、研究すらされていない。
扱えるのは、古代文明の最強王として生きたレイフただ一人だ。
また、魔法には種類があり、火・水・氷・風・土・日・光・闇属性魔法、
それにどの属性にも分類されない、無属性魔法がある。
これは誰でも簡単に扱うことができる。
その中でも日・光・闇属性魔法は魔力消費が激しく、使い手が少ない。
そしてこれらの魔法は物理魔法と分類される。
根本、魔法の発動方法にも大きな違いがある。
初級魔法は名前を唱えるだけで発動できるが、中級からは詠唱が必要となる。
だが詠唱は術式を安定させるための補助。
そして詠唱が長いほど魔法は強力になる。
現代の魔導師は術式の理解が浅いため、詠唱に頼らざるを得ない。
しかし、古代文明では違った。術式そのものを“イメージ”として完全に理解し、
頭の中で構築することで、詠唱なしで魔法を発動できた。
無詠唱は古代では当たり前であり、複雑な術式を瞬時に組み上げることができたのだ。
現代の魔導師が知らないだけで、魔法は本来、思考だけで展開できる。
それに、同時発動にも大きな差がある。
現代では3つが限界とされているが、古代では100を超える魔法を同時に扱うことも可能だった。
古代文明の人々は術式の理解度、魔力量が桁違いであるため、
複数の魔法を同時に維持することができたのだ。
だが魔力に関しては遺伝するのは10%程。残りは訓練次第で増やすことができる。
その訓練とは魔力操作、魔力制御である。
魔力操作は体内の魔力を体外に出したり体外の魔素を自由に操ることであり、
現代では使いどころがないとされ、だんだんできる人が少なくなっている。
そして魔力制御は自分の魔力を抑え込んだり魔力の出どころを一点に集中させることや、
自分の魔力を薄く広く流し込んで魔力探知という魔法を使うことである。
だが魔力制御は難しいためできる人が少ないのだ。
魔法は退化したのではない。正確には古代文明の知識が失われ、
現代人が魔法の本質を理解できなくなっただけである。
詠唱に頼り、術式を外側からなぞるだけの“簡易魔法”が主流となった結果、
魔法そのものが弱体化したように見えているにすぎない。
そして今、古代文明の最強王レイフが転生したことで、
失われた魔法体系が再び世界に現れようとしている。
現代の常識では理解できない魔法が、彼の手によって再び形を取り始めていた。




