2‐入学
高等魔導学園の入学式が終わり、Aクラスの教室に入ると、
昨日の実技試験の噂がすでに広まっていた。
初級魔法を無詠唱で相殺し、中級魔法を術式ごと消したという話。
最底辺男爵家の三男という肩書きと噛み合わず、周囲の視線は好奇と疑念で揺れていた。
レイフは気にせず席に座る。そのとき、鋭い足音が近づき、金髪の少女が目の前に立った。
ストラング公爵家の令嬢、エリナ・ストラングだった。
「昨日の試験、どういうつもりなの」
開口一番、喧嘩腰だった。周囲の生徒たちが息を呑む。
「初級魔法を無詠唱で相殺、中級魔法を術式ごと消すなんて普通はできない。
それを簡単にやってのけた。何か隠してるでしょう?」
レイフは淡々と答える。
「隠しているつもりはない。最低限の動きをしただけだ。」
エリナは眉を吊り上げる。
「その態度が気に入らないのよ。男爵家の三男のくせに余裕ぶって」
周囲がざわつく。エリナは学園でも特別な存在だ。
その彼女が露骨に敵意を向けている。
「いいわ。あなたが本当に実力者なのか、私が確かめる」
「確かめる?」
「放課後、訓練場で私と戦いなさい。もちろん、逃げないわよね?」
挑発的な視線。昨日の試験を見て感じた違和感を、彼女自身の手で暴こうとしているのだろう。
レイフは静かに頷いた。
「構わない」
エリナは満足げに背を向ける。
「あなたの正体、私が暴いてあげる」
教室が一気に騒がしくなる。
「エリナ様が挑むなんて……」
「スケルド、終わったな……」
「いや、昨日のを見る限り……」
レイフは窓の外を見ながら、小さく息を吐いた。五千年後の世界は、初日から騒がしい。




