12‐決勝試合
第三試合が終わった直後、
王都武術魔道会場は騒然としていた。
「今の……何だったんだ……?」
「神聖魔法を……圧倒した……?」
「いや、あれはもう別次元だろ……」
聖シャマシュ側の生徒たちは顔を青ざめさせ、
王都魔導高等学院の生徒たちは興奮と困惑が入り混じった声を上げていた。
控え室に戻ったレイフの前に、
エリナが駆け寄ってくる。
「レイフ……すごかった……!
でも……大丈夫? 怪我は?」
「うん。平気だよ」
レイフは微笑むが、
その表情はどこか静かだった。
「次は……決勝だね」
エリナは拳を握りしめる。
「……全力で行くから。
手加減なんてしないで」
レイフは少しだけ目を細めた。
「本気を出したら……銀河どころか、宇宙が崩壊しちゃうよ」
「……っ!」
エリナは一瞬だけ息を呑むが、
すぐに顔を上げた。
「それでも……私は、あなたと戦いたい」
レイフは静かに頷いた。
「じゃあ……最大の敬意を払って、手加減するよ」
◆ ◆ ◆
アナウンスが響く。
『決勝戦——
王都魔導高等学院、エリナ・ストラング
対
王都魔導高等学院、レイフ・スケルド』
観客席が一気に沸き上がる。
「学院同士の決勝だ!」
「エリナちゃんの魔力操作はすごかったし……
もしかしたら……!」
「いや、相手はレイフだぞ……?」
エリナは深呼吸し、
競技場へ歩み出した。
対面にはレイフが立っている。
その瞳は穏やかで、
しかし底が見えない。
審判が手を上げる。
「両者、構え!」
エリナは魔力を全身に巡らせ、
一気に地を蹴った。
「はあああっ!!」
魔力を纏った拳が、
レイフへ一直線に迫る。
だが——
レイフはその拳を”手のひらで”そっと受け止めた
「……っ!?」
エリナの全力の一撃が、
まるで子どもの拳のように止められる。
レイフは静かに言った。
「エリナ。これが、俺の“最大限の手加減”」
エリナは歯を食いしばる。
「まだ……まだ終わらない!」
拳を引き、再び踏み込む——
その瞬間。
レイフの姿が消えた。
「……え?」
エリナの拳は空を切り、
勢いのまま前へ倒れ込みそうになる。
だが倒れない。
倒れる前に、背後から風が吹き抜けた。
レイフが、
”転移魔法で”エリナの背後に瞬間移動していた
「っ……!」
振り返るより早く、
レイフが軽く手を振る。
その動きはただ空気を払っただけのように見えた。
だが——
「——っ!?」
突風が爆発したように吹き荒れ、エリナの身体がふわりと浮き上がる。
観客席が悲鳴に近い声を上げる。
「風圧だけで……!?」
「エリナちゃんが……飛ばされる……!」
エリナは必死に体勢を整えようとするが風の勢いは強すぎた。
そのまま場外へと吹き飛ばされる。
地面に倒れ込む直前、
レイフが転移で追いつきそっと抱きとめた。
「大丈夫?」
エリナは顔を赤らめながらも、
小さく頷いた。
審判が手を上げる。
「エリナ・ストラング、場外!
——勝者、レイフ・スケルド!!」
会場が爆発したように沸き上がる。
「強すぎる……!」
「風圧だけで……!」
「何者なんだあの子……!」
レイフはエリナをそっと降ろし優しく言った。
「ごめん。
手加減したつもりだったんだけど……
ちょっと強く吹かせすぎたかも」
エリナは悔しそうに唇を噛み、
それでも笑った。
「……次は……絶対に負けないから」
レイフは微笑んだ。
「うん。楽しみにしてる」
こうして、
決勝戦はレイフの勝利で幕を閉じた。




