11‐第三試合:後編
「――始め!」
ルシアスは両手を広げ、
淡い黄緑色の光を三方向へ同時に展開した。
「ブレスフラーレ三連!」
三つの光弾が、
まるで追尾するようにレイフへ迫る。
観客席がどよめく。
「三つ同時……!」
「さすが聖家系……!」
だがレイフは、
ただ静かに右手を上げた。
指先で、空中をゆっくりとなぞる。
その瞬間――
空気が重くなった。
魔素の流れが沈み込み、
まるで重力が増したかのように圧縮されていく。
「……っ!?」
ルシアスの目が見開かれる。
三つのブレスフラーレは術式そのものが耐えきれずに崩壊していく。
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ!
光の粒となって弾け飛んだ。
「な……全部、壊れた……!?」
観客席が騒然とする。
「術式が……消えた?」
「何をしたんだあの子……!」
レイフは歩みを止めず、
淡々と指先をルシアスへ向けた。
「ブレスシールド!」
ルシアスは慌てて防御を展開するが――
レイフが空中をひと撫でするだけでシールドの光が歪み、
中心から崩れ落ちた。
「……っ、嘘だ……!」
ルシアスは震える息を吐き、
両手を胸の前で組む。
「なら……これでどうだ!」
光が一点に凝縮される。
先ほどの三倍以上の密度。
「ブレスフラーレ、全力で行く!」
放たれた光は、
まるで槍のように鋭く、
競技場の空気を震わせた。
観客席が息を呑む。
「強い……!」
「これなら……!」
だが――
レイフは一歩も動かない。
「じゃあ……君の土俵で」
レイフの周囲に、
淡い黄緑色の光がふわりと立ち上がった。
詠唱はない。
構築の気配すらない。
ただ、魔力が形になった。
「ブレスフラーレ。」
放たれた光はルシアスのものの10倍以上の密度を持ち、
空気を裂くように一直線に走った。
二つの光がぶつかる――
その瞬間、ルシアスの光は一瞬で押し潰される。
そして衝撃波が競技場を揺らした。
「——っ!!」
ルシアスは吹き飛ばされ、
右腕が消し飛び、地面へ倒れ込む。
観客席が悲鳴に近い声を上げた。
審判が焦りながら勝敗を決める。
「ルシアス・エルネスの戦闘不能を確認。
勝者!レイフ・スケルド!!!」
「ルシアス!!」
「今の……何が……!」
レイフはゆっくりと歩み寄り、
倒れたルシアスの前で膝をついた。
「君の土俵で戦ってみたんだけど……
やりすぎたかな?」
右手をかざし、
淡い光をルシアスの腕へ流し込む。
「神級治癒魔法、リザゾーマ。」
光が包み込み、
損傷した組織が瞬時に再生していく。
観客席が静まり返る。
「……神級レベルの治癒……?」
「そんなの、使える人間……!」
ルシアスはゆっくりと目を開け、
自分の腕を見つめた。
「……治って……いる……?」
レイフは微笑んだ。
「ごめん。……少し力を使いすぎた」
ルシアスは震える声で言った。
「……あなたは……何者なんですか……?」
レイフは答えずただ立ち上がって手を差し伸べた。
「立てる?」
ルシアスはその手を取り、
静かに頷いた。
こうして、
第三試合はレイフの圧倒的勝利で幕を閉じた。




