10‐第三試合:前編
エリナの勝利で会場が沸き立つ中、
レイフは静かに控え室へ戻ってきた。
エリナは椅子に座り、まだ肩で息をしている。
「……レイフ、見てた?」
「もちろん。完璧だったよ」
エリナは照れたように笑い、
額の汗を拭った。
「次はレイフの番だね。
……気をつけて。相手、強そうだった」
「あぁ、分かってる」
レイフは軽く頷く。
(ルシアス・エルネス……
聖家系の名を持つ神聖魔法の使い手)
エリナの試合中、ずっとこちらを見ていた少年。
その視線は敵意ではなく、
ただ“観察”しているようだった。
◆ ◆ ◆
―――アナウンスが響く。
『第三試合——
王都魔導高等学院、レイフ・スケルド
対
聖シャマシュ高等学院、ルシアス・エルネス』
レイフが立ち上がる。
「……行ってらっしゃい、レイフ」
「うん。すぐ戻るよ」
レイフは控え室を出て、
静かに競技場へ向かった。
◆ ◆ ◆
競技場に足を踏み入れた瞬間、
観客席がざわめいた。
「黒髪の子だ……きれいな赤も入ってる」
「さっきの子の仲間か?」
「いや、あれ……雰囲気が違うぞ」
レイフは気にせず歩き続ける。
対面には淡い黄緑色の光をまとった少年が立っていた。
整った顔立ち、
静かな瞳、
そして揺らぎのない魔力の流れ。
ルシアス・エルネス。
彼はレイフを見ると、
ゆっくりと一礼した。
「初めまして、レイフ・スケルドさん。
あなたの試合……楽しみにしていました。」
レイフも軽く頷く。
「よろしく。
俺も君の魔力がさっきからずっと気になってた。」
ルシアスは微笑む。
「あなた……魔力の流れが、とても静かですね。
まるで自然の魔素そのもののようだ」
レイフの目がわずかに細くなる。
(……気づいてる?)
ルシアスは続けた。
「僕は神聖魔法の家系に生まれました。
だからこそ分かるんです。
あなたの魔力は……普通じゃない」
観客席がざわつく。
「どういう意味だ?」
「魔力が普通じゃないって……?」
レイフは肩をすくめた。
「普通かどうかは分からないけど……
俺は俺だよ」
ルシアスはその言葉に、
なぜか嬉しそうに微笑んだ。
「ええ。
だからこそ、全力で戦わせてください」
審判が手を上げる。
「両者、構え!」
レイフはゆっくりと手を前に出す。
ルシアスは胸の前で指を組み、光を集め始める。
観客席が静まり返る。
(さて……
現代神聖魔法の最高峰、見せてもらおう)
レイフの瞳が鋭く光る。
「——始め!」
こうして、
第三試合が幕を開けた。




