13‐転入
対抗戦が終わり、学院へ戻る馬車が校門をくぐった。
エリナは大きく伸びをしながら言った。
「はぁ……やっと帰ってきた……」
「お疲れさま、エリナ。よく頑張ったね」
レイフがほほ笑むと、エリナは照れたように頬をかいた。
そこへ、落ち着いた声が二人を迎えた。
「おかえりなさい、二人とも」
アリス・グランドリュ先生がいつもの優雅な立ち姿で待っていた。
「対抗戦、本当にお疲れさま。
エリナさん、あなたの成長は見事でした。
レイフさんも……ええ、あなたは相変わらず規格外ね」
「先生……見てたんですか?」
「もちろんよ。あなたたちの晴れ舞台だもの」
アリス先生は微笑み、二人を教室へ促した。
「さあ、みんな待っているわ。
今日から新しい生徒も来ているの」
「え、新入生?」
エリナが首をかしげる。
「えぇ。珍しいでしょう?
この時期に転入なんて」
◆ ◆ ◆
教室の扉を開けると、
生徒たちがざわつきながら席に戻っていく。
その中で――
窓際に、見覚えのない少女が座っていた。
長い銀色の髪。
姿勢は凛としていて、
どこか気品と孤高さを感じさせる。
アリス先生が前に立ち、静かに紹介を始めた。
「みなさん、今日からこのクラスに新しい仲間が加わります。
北側の辺境伯領――ノースフェルン家の令嬢、
“リヴィア・ノースフェルン”さんです」
教室が一気にざわつく。
「ノースフェルンって……あの北方の?」
「辺境伯家の令嬢が、なんでここに……?」
リヴィアはゆっくりと立ち上がり、 落ち着いた声で挨拶した。
「初めまして。
今日からしばらく……お世話になるわ」
アリス先生が続ける。
「リヴィアさんは、しばらく王都で学ぶことになりました。
詳しい事情は……本人の希望で伏せています。
みなさん、仲良くしてあげてくださいね」
リヴィアは軽く会釈し、席へ戻った。
◆ ◆ ◆
休み時間。
レイフは何も考えず、いつもの調子でリヴィアに声をかけた。
「リヴィアさん。
よろしくね。分からないことがあったら言って」
リヴィアは少し驚いたように目を瞬かせ、
すぐに柔らかく微笑んだ。
「あなたが……レイフ・スケルドさんね。
対抗戦、見させてもらったわ」
「そっか。ありがとう」
レイフは自然体で返す。
「転入って珍しいよね。」
リヴィアは一瞬だけ視線をそらし、 窓の外の空を見つめた。
「ええ……事情がね、あるのよ」
その声は静かで、
どこか寂しさを含んでいた。
そして、レイフの方へ向き直る。
「それと……レイフさん。
後で、少し相談したいことがあるの。
時間をもらえるかしら?」
レイフは軽く頷いた。
「うん。いいよ」
リヴィアは微笑む。
「ありがとう。
……助かるわ」
こうして、
北方からの転入生リヴィア・ノースフェルンを迎え、
学院の日常は新たな幕を開けた。




