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おだまり!  作者: 倉名依都
31/33

30.公女は誰が考えても当然の結末に至る

別荘に帰ってきた公女は、転移陣の光が消えきるより早く気を失った。

だが、意外にも朝まで健やかにしっかり眠り、爽やかに朝を迎えた。ケイが朝のお世話に伺うまで大人しくベッドに横たわっていたのはさすがに生まれながらの公女ではあった。


「一の姫さま、お目覚めでございますね。

ご気分はいかがですか」

「ケイ、ありがとう。

ミリカンジャでは細やかな心遣い、大変に助けとなりました。この先も乳母娘として、長く仕えてください」

「はい、畏れ多いことにございます。一生奉公と心得ております」


ケイは、公女がついに決意を固めたことに気付き、嬉しいと思った。レン扮するジュラルディンと比べるのも失礼だが、やはり生まれながらの公女。

破天荒なレンは悪くなかった。対応は常に臨機応変が求められて面白かった。だが、常に予想の範囲内の行動をとる主の方が仕えやすいのも確かだ。

この方のもっとも近くでお仕えし、やがて皇太子のお子をお産みになって、その方が王女であられれば、母マイアがジュラルディンの乳母となったように、自分が乳母となるだろう。もっともっと研鑽を積まねばならない、と。

ケイの辿る道は、母マイアの辿った道。喜びも悲しみも主とともにある。



公女は、朝の装いを身に纏い、朝食室に入った。ジュリエッタになったレンと、サブサイダーズの4人が立ち上がって迎える。

「おはよう、みなさん。席についてください」

おお、さすがに公爵令嬢。彼女は元に戻った、つまり命令する側に、上位者に戻ったのだ。

「おはようございます、一の姫君」

それぞれに席に着く。


なごやかに朝食をとり、応接間へと席を場を移す。

「レンさま」

「大切なこと故、言葉を挟むことをお許しください、一姫さま。ジュリ、あるいはジュリエッタとお呼びになりませ」

「わかりました、従姉姫のジュリエッタ」

公女が柔らかく微笑む。

「今日より、わたくしのことは名でお呼びなさい。ジュラルディンです。非公式の場ではジュラです」

「承りました」


「お集まりの皆さま、お力添えをありがたく。この御恩は返せるものではありません。

ジュリエッタとオクタビアさまは言うまでもなく、賢者キルエットなくばミリカンジャに行くことすらできなかったのです。キャリコ、スカリー、トニオのお三方」

公女は名を口にしながらひとりひとりに視線を投げかける。

「皆さまの立派なお仕事があればこそ、安心して5日間帝国を空けることができました」

3人は、静かに頭を下げる。公女の話が終わるまで、口を開くことはできない。


「皆さまご存じの通り、わたくしは従姉とメイド長に付き添われて、ミリカンジャの女性騎士団に視察に参りました。長い旅をすることなく、転移陣で行き来できましたことは僥倖ぎょうこうでした。

視察とは半日限り、2日間を基礎訓練に、残りの2日間を野営訓練に参加させていただきました。

そこで、誠に誰の人生にも自由はないのだということを思い知って帰ってまいりました。

わたくしは、人生を選べず、伴侶も選べず、自分の意思は常にないがしろにされていると感じて生きてまいりました。

ですが、そうではなかったのです。


誰もが必死で生きております。そのことが身に沁みました。誠に恥ずかしく思います。

騎士団の女性たちは、生まれながらの運命から逃げ出して、騎士団を選択して自由に生きておいでだと思っておりました。ですが、そうではありませんでした。

運命は自ら切り開くもの。生まれながらに課せられた運命に見えようとも、その中に切り開く道はある、切り開くのは誰でもない、自分自身だと思い知りました」


「人が決意を固める瞬間というものが、わたくしにもわかったと思います。

サスキント公爵家長女ジュラルディンは、王太子の婚約者であり、1年後には皇太子妃となるという、生まれながらの運命を、受け入れるのではなく、新たに、自ら選び取ります。


皆さまの支えなしにはたどり着けなかったことを知っています。特にジュリエッタ、ありがとう。そして、サギノスレンさま、サカシタコヨリさま、コウサカマユさまを送ってくださった神に感謝いたします」


うんうん、と頷くケイを含む6名は、暖かい眼差しを公女に送っていた。


「それではこれより無礼講とします」


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